

返済不要の給付金「高校生等奨学給付金制度」とは?
高校無償化などの教育費支援制度があるとはいえ、子どもが高校に進学すると教材や制服、部活動などお金がかかることが多々あります。
親にとっては家計の負担が大きく、公的援助に頼りたくなりますね。
すべての家庭が受けられるわけではないですが、自治体から返済不要の支援金が支給される「高校生等奨学給付金制度」があります。
「高校生等奨学給付金制度」の受給条件や給付額などについて見ていきましょう。
高校生等奨学給付金制度とは?
高校生等奨学給付金制度とは、教科書費や教材費など高等学校等の授業料以外の教育費を支援するために、返済不要な給付金を支給する制度です。
これは、全ての意志ある生徒が安心して教育を受けられるよう、教育の機会均等に寄与することを目的としたもので、国公私立を問わず、高等学校等に在学する子どもがいる低所得(非課税・生活保護)世帯が対象です。
ここで言う「高等学校等」とは、次に該当する学校です。
・高等学校(全日制、定時制、通信制、専攻科のうち大学への編入基準を満たす課程)
・中等教育学校後期課程
・高等専門学校(第1学年~第3学年)
・専修学校高等課程
・一部の専修学校一般課程
・各種学校(外国人学校のうち、高等学校の課程に類する課程を置くもの)
また、「授業料以外の教育費」とは次のようなものとされています。
・教科書費
・教材費
・学用品費
・通学用品費
・教科外活動費
・生徒会費
・PTA会費
・入学学用品費
・修学旅行費など
高校生に対する教育費の支援制度には「高等学校等就学支援金」という制度もあります。
「就学支援金」は授業料を補助する制度で、高校無償化制度とも呼ばれているものです。保護者や生徒が直接お金を受け取ることはありませんが、一定の所得要件等を満たしていれば、高校等の授業料相当額が直接学校に支給されます。
それに対して「奨学給付金」は、現金が保護者の銀行口座に振り込まれます。
後述する所得要件等を満たす必要はありますが、対象となる場合には、保護者が居住する各都道府県が管轄となり、申請受付け、給付ともに行います。ちなみに管轄の都道府県外にある高校等に子どもが通っていても構いません。
高校生等奨学給付金の対象世帯
高校生等奨学給付金の対象となるためには、「高等学校等就学支援金」の受給資格を満たしているほか、毎年基準日を7月1日とし、基準日現在の所得状況が次のいずれかに該当していなければなりません。
・生活保護(生業扶助)受給世帯
・保護者等(親権者)全員の当年度(※)の「都道府県民税所得割」および「市区町村民税所得割」が非課税(0円)である世帯
(※)2020年7月1日が基準日である場合、2020年度
2020年度は、新型コロナウイルス感染症に係る影響を踏まえ、保護者の家計が急変し、家計急変後の収入見込額が住民税非課税相当となる世帯も対象になります。
住民税非課税相当になる年収は家族構成等により異なりますが、目安は次の表の通りです。
世帯人数 2人 3人 4人 5人 年収見込 自営業 125万円以下 137万円以下 172万円以下 207万円未満 給与所得者 約204万円未満 約221万円未満 約271万円未満 約321万円未満 出典:神奈川県「神奈川県高校生等奨学給付金(家計急変世帯対象給付・国公立)」を参考に筆者作表
申請する前に、必ず実際の金額を居住する都道府県役場に確認してください。
高校生等奨学給付金の支給額
支給される奨学給付金の額は、世帯の所得状況や家族構成、および在学する高校等種別によって異なります。
世帯状況 給付額(年額) 国公立 私立 生活保護受給世帯 全日制等・通信制 3万2,300円 5万2,600円 非課税世帯 全日制等(第1子) 8万4,000円 10万3,500円 全日制等(第2子以降)
※15歳以上23歳未満の兄弟姉妹がいる場合12万9,700円 13万8,000円 通信制・専攻科 3万6,500円 3万8,100円 出典:文部科学省「高校生等奨学給付金リーフレット」を元に筆者作表
非課税世帯に限られますが、2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響によるオンライン学習にかかる通信費相当額として、上表中の額に1万円が加算されます。
高校生等奨学給付金の申請と注意点
奨学給付金は保護者が居住する各都道府県に申請しますが、実際の手続きは子どもが通う高校等がその都道府県内にあるかどうかで異なります。
保護者が居住する(申請先の)「都道府県内」にある高校等に在学する場合
在学する学校を通して申請します。学校から配布される申請書類に必要な書類を添えて学校へ提出します。
申請期間は都道府県や学校によって異なりますが、基本的には毎年7月に申請開始され、10~12月頃までが申請期間とされています。7月頃に学校からの案内がない場合には学校または自治体に問い合わせてみましょう。
保護者が居住する(申請先の)「都道府県外」にある高校等に在学する場合
保護者の居住地の自治体の担当窓口で直接申請手続きを行います。
ほとんどの自治体では、申請書類を自治体ホームページでダウンロードできるようになっています。必要書類を揃えて、郵送または窓口に直接持参します。
なお、高校等に通う子どもが複数いる場合には、対象となる生徒ごとに申請することが必要です。
今回紹介した「奨学給付金」は返済不要の給付金ですが、他にも多くの自治体では「貸与型奨学金(教育資金の貸付制度)」も実施しています。貸与型奨学金の場合、返済が必要ですが、子どもの教育機会を経済的な事情で損なわないよう、必要に応じて利用を検討してもいいでしょう。
※本ページに記載されている情報は2020年7月20日時点のものです
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執筆者プロフィール 續 恵美子(女性のためのお金の総合クリニック認定ライター。ファイナンシャルプランナー〈CFP(R)〉)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
エフピーウーマン(https://www.fpwoman.co.jp/)