

児童扶養手当法をわかりやすく解説!条件や支給額など申請方法を紹介
子どもを育てていくのはお金がかかるものですが、ひとり親世帯では就労に制限がかかる場合も少なくなく、経済的に大きな負担となっている家庭が多いようです。そこで少しでも頼りにしたいのが「児童扶養手当」です。児童扶養手当はひとり親世帯を対象にした手当ですが、児童手当と名前が似ているため混同している人もいるかもしれません。
そこで今回は、児童扶養手当について、受給するための条件や金額、申請方法などについてわかりやすく説明していきます。
児童扶養手当法とは?
児童扶養手当法とは、ひとり親世帯で暮らす子どもの生活安定と自立促進につながるよう、国が経済的支援として、その子どもを対象に支給する「児童扶養手当」の支給基準や支給額、支給方法などについて定めた法律のことです。この法律に基づき支給される手当が「児童扶養手当」です。
15歳まで(正確には15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもがいる人は「児童手当」を受給していると思います。
名前は似ていますが、児童手当は所得などの条件を満たせばひとり親でなくても支給されるもので、児童扶養手当とは別のものです。ひとりで子どもを養育している人、あるいは離婚を検討している人などは「児童扶養手当」の支給基準などについてきちんと確認しておきましょう。
ひとり親世帯は年々増加傾向にあり、児童扶養手当法はこれまでに何度も改正されています。支給対象も広がっている傾向にありますから最新情報をチェックする習慣をつけたいものです。
児童扶養手当は、ひとり親として18歳まで(正確には18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもを養育していれば、支給対象となる可能性があります。一定以上の障害がある子どもの場合は20歳未満です。
ひとり親となる事情は、死別、離婚、未婚などさまざまありますが、子どもが次のいずれかに該当していることが必要です。
1 父母の離婚後、父または母と生計を同じくしていない 2 父または母が死亡した 3 父または母に重度の障害(国民年金の障害等級1級程度)がある 4 父または母の生死が明らかでない 5 父または母から引き続き1年以上遺棄されている 6 父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた 7 父または母が法令により引き続き1年以上拘禁されている 8 母が婚姻によらないで(未婚で)出産した ただし、これらに該当している場合でも、例えば父、母または養育者が事実婚(内縁関係など)の状態にある場合や、子どもが児童福祉施設などに入所したり、里親に委託されているなどの場合は支給されません。
児童扶養手当の受給条件
児童扶養手当は、子どもを扶養している「母子家庭の母」、「父子家庭の父」あるいは「母または父に代わってその子どもを養育している人」に支給されるものです。
ただし受給条件があり、児童扶養手当を申請する年の「前年」(1月~9月に申請する場合は「前々年」)の所得が下表の限度額を超えないこととされています。
所得制限は、(A)受給資格者(父または母、養育者)だけでなく、(B)生計が同じ扶養義務者(父母、祖父母、子および兄弟姉妹)の所得額も支給可否を判断する条件となります。ひとり親として子どもを育てているのは自身であったとしても、例えば実家に戻る場合などは注意が必要です。
扶養義務者がいる場合で、その人の所得が表中(B)の額を超えていれば、本人の所得が表中(A)未満であっても手当を受けられなくなります。
税法上の扶養親族等の人数 (A)受給資格者(父または母、養育者) (B)扶養義務者・孤児等の
養育者の限度額全額支給の
所得制限限度額一部支給の
所得制限限度額0人 49万円 192万円 236万円 1人 87万円 230万円 274万円 2人 125万円 268万円 312万円 3人 163万円 306万円 350万円 ※以後は、扶養親族人数が1人増すごとに、限度額に38万円を加算していきます。
出典:横浜市ホームページ「児童扶養手当」を参考に筆者作表
なお、ここでいう所得とは、給料やパート、アルバイト等による収入だけでなく、養育費を受け取っている場合には、その金額の8割相当を加算しなければなりません。
これらの合計額から必要経費(給与所得控除など)および社会保険料(一律8万円)、その他医療費控除、寡婦控除など該当する所得控除があれば差し引いて計算します。
詳しい所得の計算は、居住する自治体の担当窓口で確認するようにしてください。
児童扶養手当の支給額と給付期間
受給要件を満たせば、受給資格者本人の所得額および支給対象となる子どもの数によって、手当月額が決められます。
2020年4月以降の手当月額
対象となる子どもの数 全額支給 一部支給 1人 4万3,160円 1万180円~4万3,150円 2人目 1万190円 5,100円~1万180円 3人目以上(1人につき) 6,110円 3,060円~6,100円 出典:横浜市ホームページ「児童扶養手当」を参考に筆者作表
後述しますが、児童扶養手当の請求は毎年更新することになっており、毎年の所得に応じて支給額も変わります。一旦決められた手当額をずっと受けられるわけではないことも知っておきましょう。
また、ここで紹介した全額支給の金額および、一部支給の額は、物価変動などの要因により定期的に見直されます。詳しくは、居住する自治体の担当窓口で確認するようにしてください。
・手当はいつからもらえる?
認定請求書を提出した日の翌月分から手当が支給されます。
支給日は決まっており、年6回、奇数月の11日に2ヵ月分ずつ銀行口座に振り込まれます(11日が土・日・祝日の場合は前営業日)。
もしも認定請求書の提出が遅れた場合でも、さかのぼって支給されることはありません。離婚や死別など、ひとり親になるとさまざまな手続きで多忙になりますが、できるだけ早く手続きするようにしましょう。
児童扶養手当の申請方法と注意点
児童扶養手当の申請手続きは、請求者が居住する市区町村役場の担当窓口で行います。
申請に必要な書類は各自治体のホームページでも確認できますが、請求者の状況等によって別途書類が必要になる場合があります。必ず事前に問い合わせ、確認しておきましょう。
基本的には次の書類が必要です。
・請求者および子どもの戸籍謄本
・請求者名義の預金口座番号
・請求者の印鑑
・年金手帳
・請求者のマイナンバーカード(または通知カードおよび運転免許証等の写真付き身分証明書)
・子どもおよび生計を同じくする扶養義務者のマイナンバーがわかるもの
・翌年からは更新が必要
児童扶養手当の受給に際して、毎年8月中に資格の更新をしなければなりません。これは、毎年8月頃に自治体から送られてくる更新用の書類(現況届)を提出することで行います。
なお、現況届は、役場の窓口で担当者が受給者本人に状況を確認しながら手続きすることとなっています。郵送等では受け付けてもらえず、必ず受給者本人が窓口に出向かなくてはなりません。
現況届の提出をせずにいると、以降の手当が支給されなくなってしまいます。ひとり親である状況が変わっていなければ忘れずに手続きしましょう。
昨今の新型コロナ渦では、自治体によっては特別の取り扱いを行っているところもあるようです。必ず事前に確認するようにしてください。
前述したように、児童扶養手当は前年(前々年)の所得で支給可否や金額が決められます。
例えば離婚や死別でひとり親になったばかりの時には所得制限を超えていて、手当を受給できない可能性も考えられます。
しかし、その場合でも認定請求の手続きをすることは可能です。翌年以降の現況確認時に所得が下がっていれば手当をもらえるようになるかもしれません。
ひとり親にとって、児童扶養手当は子どもを養育していくための大切な手当です。所得要件など少しややこしい部分もありますが、しっかり確認しながら子どもと自身のためにきちんと手続きを行いましょう。
※本ページに記載されている情報は2020年7月17日時点のものです
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執筆者プロフィール 續 恵美子(女性のためのお金の総合クリニック認定ライター。ファイナンシャルプランナー〈CFP(R)〉)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
エフピーウーマン(https://www.fpwoman.co.jp/)