

【FP解説】育児休業給付金とは?パートやアルバイトの支給条件や計算方法
育児休業期間は仕事のことを心配せずにゆっくり子どもと向き合える期間ですから、許される限り目一杯に休業を取りたい気持ちになりますね。しかし育児休業中は給料が支払われない場合がほとんどで、のんびり休業を取ることに不安を感じるママも多いようです。そこで、育児休業中の方を収入面でサポートしてくれる育児休業給付金について知っておきましょう。
執筆:續 恵美子(ファイナンシャルプランナー)育児休業給付金とは?
育児休業給付金とは、育児休業中に給与が一定以上支払われなくなった時の経済支援として、ハローワークから支給されるお金です。育児休業を取得する人ならパパでもママでも支給を受けることができますが、雇用保険に加入しているなど、いくつかの条件を満たすことが必要です。
育児休業給付金の支給条件は?
●育児休業取得者に共通する条件
育児休業給付をもらうためには、次の4つの要件に当てはまらなければなりません。
1.雇用保険に加入し、保険料を支払っていること
2.育児休業に入る前の2年間に11日以上働いた月が12カ月以上あること
3.育児休業中の給与が通常の80%未満であること
4.育児休業後、退職予定がないこと
●契約社員やパート社員など、有期雇用契約で働く人
パートやアルバイトなどの人は、上の4つの要件に加えて次の2つの要件にも当てはまることが必要です。
1.育児休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続していること
2.子どもが1歳6カ月(事情により育児休業を延長する場合は2歳まで)の間に労働契約が満了することが明らかでないこと
どちらの場合にも共通しますが、そもそも育児休業給付は、育児休業終了後の職場復帰を前提とした給付金であることを忘れずに。育児休業の当初からすでに退職を予定していたり、契約が終了することがわかっている場合には支給対象となりません。
支給される育児休業給付金の計算方法
育児休業給付金の金額は、育児休業に入ってからの期間によって変わります。
・最初の6カ月間は休業開始時賃金の67%
・休業を開始してから6カ月経つと休業開始時賃金の50%
実際の計算に当たっては、育児休業に入る前6カ月間の給料を180で割り、それに30をかけて月額賃金を算出するという計算ステップを踏みますが、毎月の給与額の変動が激しい人でない場合には、ざっくりと給料月額で見積もっておくといいでしょう。
たとえば、育児休業前の月額給料が20万円の場合、育児休業給付金の金額は次のように見積もることができます。
最初の6カ月 20万円×67%=13万4,000円(1カ月当たり) 6カ月経過後 20万円×50%=10万円(1カ月当たり) なお、育児休業給付金を計算するための賃金月額には上限(45万4,200円)と下限(7万5,000円)が設けられています。元々の給料が多い人の場合、育児休業給付金が実際の給料の67%よりも少なくなる可能性があることは知っておいてください。
育児休業中に給料が支払われる場合は?
勤務先や労働者によっては育児休業中にも就労し、給料が支払われる場合があります。その場合でも、その就労が臨時的、一時的であって、就労後も育児休業をすることが明らかであれば、職場復帰とはせずに、他の支給要件を満たせば支給対象となります。
ただし、次の2点に注意しましょう。
・1支給単位期間(2カ月単位)において、通常の80%以上の給料が支払われている場合は、育児休業給付の額は0円となります。
・1支給単位期間(2カ月単位)において、通常の給料額の80%に満たない場合でも、収入額に応じて、支給額が減額される場合があります。
育児休業給付金はすぐにはもらえない
育児休業中の収入源として大切な育児休業給付金ですが、休業に入れば自動的に支給されるものではありません。原則として会社経由で支給申請をした後、支給決定を受けてから1週間程度で本人口座に振り込まれる仕組みです。給料日のように毎月○日と特定の振り込み日が決まっているわけではありません。
なお、初回の支給申請は休業開始日の初日から起算して4カ月を経過する日の属する月末までと決められています。たとえば、育児休業開始日が7月10日の場合、4カ月を経過する日は11月9日です。つまり初回の支給申請は11月30日までにすることとなっています。
ちなみにパパは子どもの出生日からすぐに育児休業を取ることができますが、ママの場合は出産後から原則8週間は産後休業に入り、育児休業を開始できるのは出産日から起算して58日目になってしまいます。その分、初回の支給申請時期も遅くなることになります。
育児休業に入ってからの数カ月間は無収入という状況になる可能性がありますから、最初に振り込みされるまでの期間の家計のやりくりを事前に考えておきましょう。
育児休業給付金の支給は2カ月ごと
初回の支給申請が終わった後は、2カ月ごとに、ハローワークが指定する申請期間中に会社経由で支給申請をすることになります。つまり、口座に振り込まれるのも2カ月ごとに2カ月分をまとめて行われることになります。給料振り込みの間隔よりも長いですから、上手にやりくりしていくことが大切です。
なお、支給申請は休業者本人が希望する場合、1カ月ごとに行うことも可能です。詳しくは勤務先の総務担当者などに確認、相談してみましょう。
収支バランスの変化に備えて節約を
ここまで見てきたように、そもそも育児休業給付金は給料の半分~7割弱の金額です。休業して家にいる期間中は通勤にかかる支出などはなくなりますが、子どもが生まれてからは、オムツ、お尻ふき、ミルクなど、それまでになかった「子どもに関する支出」が発生するようになります。収支バランスの変化が起こりうることを考えて、収入減となる分を貯金などで確保しておくなどの対策を取っておきましょう。
また、「子どもに関する支出」は育児期間中だけでなく、ずっと必要となるお金です。育児と仕事の両立にくじけそうになることもありますが、パートナー同士協力し合って世帯全体での収入アップを目指しましょう。生まれたての子どもと一緒の時間を過ごすうちに、一旦仕事を辞めて子育てに専念したくなるママは少なくないですが、育児休業を上手に利用しながら職場復帰するほうが収入面では好ましいものです。また、保育所探しにおいても職場復帰という前提があるほうが入所しやすい傾向にあるようです。育児休業を上手に利用し、経済的にも精神的にも安心の育児ライフを過ごしてくださいね。
※ 本ページに記載されている情報は2020年2月28日時点のものです
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執筆者プロフィール 續 恵美子(女性のためのお金の総合クリニック認定ライター。ファイナンシャルプランナー〈CFP(R)〉)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
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