【産婦人科医監修】帝王切開の痛みや傷跡。術後の回復、退院後の経過、ケアまで
【産婦人科医監修】帝王切開の痛みや傷跡。術後の回復、退院後の経過、ケアまで
公開日 2021/04/20
更新日 2021/04/20

【産婦人科医監修】帝王切開の痛みや傷跡。術後の回復、退院後の経過、ケアまで

帝王切開での出産で気になる痛みや傷跡について解説します。帝王切開での出産は年々増加傾向にあり、厚生労働省の「平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によると、一般病院では約4人に1人(25.8%)が帝王切開で出産しています1)
最初から帝王切開を予定する場合もありますが、緊急で帝王切開が選択されることもあります。
帝王切開になったときにはどのような手術が行われるのか、傷跡や術後の経過、退院後のケア、帝王切開のメリット・デメリットについて知っておきましょう。

監修:小川クリニック院長 小川隆吉先生
執筆:友永由紀(ライター)

帝王切開とは?

  • 帝王切開とは、妊娠中の経過に問題がある場合や分娩時に何らかの異変が起きたときに行われるもので、麻酔をした後に下腹部、子宮を切開して赤ちゃんを取り出し、子宮、下腹部を縫合する手術です。

  • 帝王切開には「予定帝王切開」と「緊急帝王切開」の2つがあります。

  • 帝王切開の種類

    帝王切開の種類種類を選ぶ際の判断基準や理由など
    予定帝王切開産道が狭い、骨盤位(逆子)、合併症がある、多胎妊娠、感染症、前置胎盤、児頭骨盤不均衡(骨盤よりも胎児の頭が大きい)
    緊急帝王切開胎児の心拍数低下、常位胎盤早期剥離(胎児が出るよりも先に胎盤が剥がれる)、破水して時間が経っている、細菌感染の危険がある

    ※これらの理由で必ず帝王切開になるとは限りません。医師の判断によります。

    ※筆者作表

帝王切開でのお腹の切り方と傷跡

  • 帝王切開の手術は、大きく分けて下腹部縦切開と下腹部横切開の2通りの皮膚の切開方法があります。胎児や母体の状況などを踏まえて、医師がどちらを採用するかを判断します。

  • 緊急の場合以外は、傷跡が残りにくい下腹部横切開が行われることが多いです。

  • 下腹部縦切開

    下腹部縦切開
    下腹部縦切開イメージ図
    下腹部縦切開
    下腹部縦切開イメージ図

    おへその下から恥骨のやや上あたりまでを縦に切る

  • 下腹部横切開

    下腹部横切開
    下腹部横切開イメージ図
    下腹部横切開
    下腹部横切開イメージ図

    おへそと恥骨の間を横に10~12cm切る

帝王切開の麻酔と痛み

  • 帝王切開をする際には麻酔が行われます。通常は脊髄くも膜下麻酔か硬膜外麻酔で、お腹の皮膚や子宮とその周囲の内臓から伝わる痛みを遮断します。そのため、意識ははっきりしており、赤ちゃんの産声を聞くことができます。

  • 手術後は、麻酔が切れる数時間後から痛みがありますが、傷の治りとともに数日で軽快します。経膣分娩よりも入院期間は数日長くなりますが、翌日から食事や歩行が可能です(経過による)。

  • 最近は皮膚を溶ける糸で縫合するため、抜糸は不要です。

帝王切開の流れと手術後の生活

  • 病院によって異なりますが、帝王切開は手術から7~8日で退院となります。

  • ●手術当日

    朝、点滴開始

    手術室に入る

    麻酔をかける

    脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、全身麻酔

    手術、娩出

    手術開始から娩出まで約5分

    縫合

    溶ける縫合糸や手術用ステープラーで傷口をふさぐ

    退室

    母子ともに問題がなければすぐに赤ちゃんを抱くことも可能

  • ●手術後1日目

    ベッドの上で身体を動かす。可能なら歩行開始、お粥食

    ●手術後2日目

    点滴

    ●手術後3日目

    シャワー浴、普通食

    ●手術後4日目

    体調に合わせて身体を動かす。赤ちゃんの世話、授乳など

    ●手術後5日目

    シャワー浴、傷の具合、子宮の収縮の検査など

    ●手術後6日目

    退院診療

    ●手術後7~8日目

    退院

帝王切開後の経過ごとの傷跡ケア

  • 帝王切開の傷跡は、手術直後は赤く腫れて痛みがあるものの、数日で腫れは引き、半年から1年くらいで少しずつ目立たなくなります。

  • 傷跡が薄くなる過程で皮膚がかゆくなることがあります。しかし、掻いてしまうと傷口に細菌が感染したり、赤く盛り上がったりしてしまい、治りが遅くなるので注意しましょう。

  • 体質的に傷が目立ちやすい人も、シリコン製のジェルシートを貼ることで傷跡を目立たなくすることができます。

  • 帝王切開の傷跡の経過

  • 傷跡の経過時期症状ポイント
    炎症期術後4~5日痛みが強く赤く腫れる傷を乾燥させない
    増殖期術後約2週間皮膚の赤味や軽い痛み、かゆみがある傷の異常なふくらみ、かゆみ、赤み、痛みが出てきたら、受診
    成熟期術後3週間~1年肌の色に近くなる紫外線を避け、保湿する

    ※筆者作表

帝王切開のメリット

  • お腹を切る手術なので、怖いと感じてしまう人もいる帝王切開ですが、メリットもあります。

  • 陣痛の痛みがない

    陣痛の痛みで体力を使い果たし、出産後に疲れきってしまう人も少なくありません。帝王切開であれば、体力が温存できるため、産後間もなく赤ちゃんの世話ができます。

  • 予定日に出産できる

    あらかじめ手術日が決まり、予定日に出産ができます。家族や自分のスケジュールを合わせられる利点があります。

  • 公的医療保険が使える

    自然分娩の場合、公的な健康保険は使えません。一方、帝王切開は公的な健康保険が使え、契約によっては生命保険の手術給付や入院費用の保障も受けられます。

  • 会陰切開をしなくてもいい

    経膣分娩で行われることが多い会陰切開を回避できます。

  • 経膣分娩で起こりうるさまざまなリスクを回避できる

    経膣分娩では、細菌感染、胎児死亡などのリスクがあります。帝王切開では、経膣分娩と比較した場合に、これらのリスクが起こりにくいと考えられます。

帝王切開のデメリットとリスク

  • 帝王切開のデメリットとしては、次のようなことがあげられます。

  • 術後の痛み

    子宮収縮による、後陣痛の痛みと傷による痛みがあります。

  • お腹に傷が残る

    傷跡がどのくらい残るかは個人差がありますが、体質によっては跡が目立つ人もいます。

  • 肺血栓塞栓症のリスク

    長時間ベッドに寝ているため、肺の血管が詰まる肺血栓塞栓症を起こすリスクがあります。手術翌日に歩いたり、弾性ストッキングを履いたり、ベッド上で脚を動かして予防します。

帝王切開のメリット・デメリット比較表

  • メリット陣痛の痛みがない陣痛の痛みによる体力の消耗が少なく、出産後の体力が温存できる。産後間もなく、赤ちゃんの世話などができる
    予定日に出産できる手術の予定が組め、予定日に出産できる。家族や自分のスケジュールを合わせられる
    医療保険が適用される自然分娩と異なり、公的な健康保険が使える。生命保険の手術や入院費用の保障対象になる
    経膣分娩で起こりうるリスクに備えられる経膣分娩で起こりうる細菌感染、胎児死亡などのリスクが起こりにくい
    デメリット術後の痛み子宮収縮による後陣痛の痛みと傷の痛みがある
    お腹に傷が残る傷がどのくらい残るかは個人差があるが、体質により目立つ場合もある
    肺血栓塞栓症のリスク長時間ベッドに寝ているため、肺の血管が詰まる肺血栓塞栓症を起こすリスクがある。手術翌日に歩いたり、弾性ストッキングを履いたり、ベッド上で脚を動かして予防する
    手術費用が高額になる入院費、手術費用などが必要になる

    ※筆者作表

  • 帝王切開のメリット・デメリットを一覧で紹介しました。急な帝王切開に備え、妊娠を考え始めたら早めにメリット・デメリットについて理解しておくといいでしょう。

  • ※本ページに記載されている情報は2021年3月31日時点のものです。

  • 小川隆吉先生(小川クリニック 院長)

    執筆者プロフィール 小川隆吉先生(小川クリニック 院長)
    医学博士、日本産婦人科学会専門医。1975年日本医科大学を卒業後、医局を経て1995年4月まで都立築地産院産婦人科医長として勤務。元日本医科大学産婦人科講師、日本産科麻酔科学会会員、日本胎児心臓病学会員、日本不妊学会会員。『HAPPY妊娠・出産ガイドBOOK』(ベネッセコーポレーション)の総監修を務めるほか、著書に『いちばんためになる はじめての妊娠・出産』(成美堂出版)などがある。
    https://www.ogawaclinic.or.jp

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