

【現役ママ医師監修】赤ちゃんの寝返りはいつから?練習方法のコツや注意点
寝返りは、お座りやハイハイにつながる重要な運動発達の一つです。
寝返りが上手にできるようになると赤ちゃんの行動範囲が広がり、心身ともにさらなる発達へと向かっていきます。
しかし、寝返りができるようになる時期は個人差が大きいもの。
周りの子より遅れていると心配になる保護者も多いでしょう。
ここでは、赤ちゃんがなかなか寝返りをしないときに考えられる原因と、家庭でできるサポート方法について解説していきます。
赤ちゃんの寝返りはいつから?
厚生労働省の「乳幼児身体発育調査(平成22年)」1)によれば、寝返りは生後3~4か月ごろからできるようになる赤ちゃんが増え始め、生後4~5か月には半数近くがマスター。そして、生後7~8か月にはほぼすべての赤ちゃんができるようになるとのことです。
一方で、寝返りの1つ前の段階である「首の座り」は生後3~4か月に約6割の子が獲得し、生後4~5か月にはほとんどの赤ちゃんが獲得しています。寝返りができるようになる時期は「首の座り」に比べてばらけており、より個人差が大きいことが特徴です。
早くできるようになればうれしいことですが、他の子より遅いと心配になってしまうのが親心。しかし、首がしっかりと座り、手足を活発に動かしているようであれば、寝返りが遅れていても大きな問題となるケースはほとんどありません。
この時期の赤ちゃんは、新生児期に比べて体重や身長の伸び自体は落ち着いてきますが、運動能力や情緒が発達するスピードには目を見張るものがあります。しかし、発達した運動機能が、すぐに寝返りやお座りなど成長過程の目安とされる動作の獲得に直結するわけではありません。
寝返り前にお座りをマスターする子もいれば、寝返りを始めた時期が遅くてもすぐにハイハイへ移行する子もいます。寝返りが遅いからといって、過度に心配する必要はないのです。赤ちゃんのペースに合わせて成長を見守ってあげましょう。
寝返りの練習を見守りサポートするコツ
寝返りは、体幹や手足の筋肉と神経が発達すれば自然とできるようになるものです。しかし、クルッと身体をひねるコツが分からず、なかなか成功しない赤ちゃんもいます。
赤ちゃんが寝返りしそうなしぐさを見せたら、様子を見守りながらそっとサポートしてあげるといいでしょう。
赤ちゃんが寝返りを始めるサインとは?
赤ちゃんの寝返りは、大人が考える以上に身体の様々な筋肉と神経を使わなければ成功しません。そのため、ある程度身体をうまく使いこなせるようになることが必須です。
次のようなしぐさが見られたら、そろそろ赤ちゃんが寝返りを始めようとしているサインだと考えましょう。
・仰向けに寝ながら、足をつかんでゆらゆらしている
・仰向けに寝ながら、手足を活発に動かしている
・横にあるものに手を伸ばしながら、腰を左右にひねっている
・横を向くと背中や腰が浮くようになる。
どんなサポートをしてあげればいい?
寝返りは、適当な動きを繰り返して偶然成功するというものではありません。「脚を交差させて腰をひねり、勢いを付けて上半身をくるりと回転させる」という一つひとつの動作を順序立てて実行することで成し遂げられます。
この一連の流れの中で赤ちゃんにとって最大の関門となるのは、「上半身をくるりと回転させる」動作です。脚を交差させたり、腰をひねったりする動作は自然とできるようになることがほとんどですが、あと一歩のところで上半身がうまく回らずに寝返りできないという赤ちゃんは少なくないのです。
寝返りの失敗を繰り返すことで、体幹の筋肉や神経はどんどん鍛えられていきます。その結果、自然に寝返りできるようになる子が大半です。
ですから、大人が介入することなく赤ちゃんの頑張りに任せるというのも一つの考え方。しかし、脚を交差させて腰をひねることができるようになった赤ちゃんなら、上半身をくるりと回転させるコツさえつかめば、あっという間に寝返りできるようになる可能性が高いです。
その「あと一歩」を後押ししたいということであれば、交差した脚とひねった腰をそっと押さえた状態で背中を回してあげましょう。寝返りのコツを体得して、そのままスムーズに寝返りできるようになるかもしれません。
「いないいないばあ」など赤ちゃんが喜ぶ遊びやおもちゃを取り入れながら、楽しく寝返りをサポートしてあげるといいですね。
寝返りをしやすい環境を整える
赤ちゃんの成長スピードは十人十色で、寝返りを始める時期についても例外ではありません。「首が座ったら次は寝返り!」とばかりに毎日練習を繰り返す家庭もあるようですが、赤ちゃん自身のタイミングを無視した練習はお勧めできません。
寝返りをする意思がないのに無理に回転させたりうつ伏せにしたりすると、赤ちゃんは恐怖感を覚えて「寝返り嫌い」になってしまうこともあるからです。基本的に、赤ちゃん自身が寝返りの獲得に向けて準備を始めるまでは、無理に寝返りの練習をさせる必要はありません。
ただし、赤ちゃんがなかなか寝返りを始めない原因は、タイミングによるものばかりではありません。次のような赤ちゃんを取り巻く環境が原因で、寝返りを始められなくなっていることもあるのです。
赤ちゃんがなかなか寝返りを始めないことに悩んだら、まずは寝返りに適した環境であるか確認してみましょう。
・狭いベビーベッドなどにいて身体を動かすスペースがない
・衣類のサイズが合わず、思ったように身体を動かすことができない
・床や寝具が柔らかすぎて身体が沈みがちになっている
寝返りがはじまったら注意すること
寝返りができるようになると、赤ちゃんの行動範囲が広がり、今まで視界に入ってこなかったものを見ることができるようにもなります。そのため、赤ちゃんの運動能力や好奇心がますます発達していきます。
その反面、誤飲、転落、外傷など、赤ちゃんの事故が起こりやすくなるのもこの時期です。
腰や上半身を大きくひねって寝返りの練習をするようになれば、すぐにでも寝返りできるようになる可能性があるので、それに応じた安全確保が必要になってきます。「口に入るものを近くに置かない」「硬い家具の角にガードを付ける」「コンセントカバーを付ける」など、赤ちゃんを守るための安全対策を施してください。
また、この時期はベビーベッドなどからの転落には特に注意が必要です。赤ちゃんをベビーベッドに寝かせるときは必ず柵を上げ、ソファーや椅子などに寝かせるときは目を離さないようにしましょう。
寝返りを始める時期は赤ちゃんのペースにあわせる
寝返りを始める時期は、赤ちゃんの運動発達過程の中でも特に個人差が大きいといえます。そのペースは赤ちゃんそれぞれですから、本人が「寝返りしたい!」と思うタイミングを大切にしてほしいと思います。
3か月健診や予防接種の際に発育の異常を指摘されることなく順調に成長していれば、寝返りが遅かったとしても発達に問題があることはまず考えられません。赤ちゃんのペースを見守り、時にはそっとサポートしてあげながら寝返りが成功する日を楽しみに待ちましょう。
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執筆者プロフィール 成田亜希子
2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。