

【FP解説】学費の安い大学へ通いたい!大学を選ぶポイントと無償化の新制度
4年間の大学生活での学費は高額になるため、ご家庭の経済状況によっては厳しい出費となってしまいます。でも「大学で学びたい!」そんな想いがあるのなら、学費の安い大学を探してみましょう。比較的学費が高いといわれる私立大学や看護大学でも、広い視野で探せば、安いところはみつかります。それに、経済的に厳しいご家庭が利用できるうれしい支援制度も始まります。ここでは、学費の安い大学を選ぶポイントと、学費を支援する新制度についてご紹介します。
執筆:前佛朋子(ファイナンシャルプランナー)学費の安い大学を選ぶときのポイント
大学の学費はどれくらいかかるのでしょうか?国立大学・公立大学・私立大学の学費を見てみましょう。
国公私立大学の入学金と授業料(2018年度) 入学金 授業料 4年間の授業料 入学金+4年間の授業料の合計 国立大学 282,000円 535,800円 2,143,200円 2,425,200円 公立大学 393,618円 538,633円 2,154,532円 2,548,150円 私立大学 249,985円 904,146円 3,616,584円 3,866,569円 出典:文部科学省 平成30年度私立大学等入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果
国公私立大学の授業料等の推移
上記の表から、国公立大学と私立大学の学費は大きく差があることがわかりますね。入学金と4年間の授業料の合計で見てみると、国公立と私立では約140万円もの差があります。より学費が安い大学へ行きたいのであれば、国立大学か公立大学を選ぶのがよいでしょう。特に学費の高い医療系は、ご家庭の経済状況によっては行きたくても行けないと思われがちです。しかし、医学部や看護学部でも国立大学を選べば学費を抑えられます。
とはいえ、日本の大学は約8割が私立大学です。選択肢を広げるために、私立大学も進学候補に選びたい場合もあるでしょう。ではここで、私立大学での学部別学費(初年度納付金)を確認してみましょう。
学部別私立大学の初年度学生納付金の平均額(単位:円) 授業料 入学料 施設設備費 合計 文科系 文・教育 794,063 229,762 161,039 1,184,864 神・仏教 730,658 216,270 158,598 1,105,526 社会福祉 748,868 211,407 177,973 1,138,248 法・商・経 782,656 231,632 142,457 1,156,745 理科系 理・工 1,076,373 242,365 162,527 1,481,265 薬 1,428,539 339,127 308,949 2,076,616 農・獣医 964,389 246,247 207,723 1,418,359 医歯系 医 2,666,458 1,340,552 1,063,310 5,070,319 歯 3,225,206 598,303 558,798 4,382,307 その他 家政 811,588 247,072 197,161 1,255,821 芸術 1,125,580 252,996 272,162 1,650,739 体育 814,517 250,854 220,590 1,285,961 保健 988,179 268,336 238,367 1,494,882 ※医学部看護学科は「医」区分に含まず,「保健」区分に含める。
出典:平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について
上記の表によると、文科系は学費が安いことがわかります。理科系の学部は施設設備や実験などの実習が多いため、その分学費が高くなるのです。実際の学費を比較したい場合は、Web上で検索できます。「学費検索」で検索し、大学受験ポータルサイトにて学費の安い順でチェックしてみましょう。
2020年から大学の学費支援制度が始まる!
大学では、国公立大学のように学費が安くても、4年分の学費は高額です。そのため、低所得世帯では学費の捻出が厳しく、ときに進学を諦めなければいけないこともありました。しかし、学びの機会は誰にでも平等であるべきです。そこで国は、経済状況に関係なく学びたい大学などへ進学できるように、経済的負担を軽減する制度を実施することにしました。それが低所得世帯を対象にした「高等教育の修学支援新制度」です。この制度は2020年4月より実施されます。対象となる高等教育とは、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校のこと。つまり、誰もが学費を気にすることなく、大学などへ進学できるようになるのです。
どのような人が修学支援を受けられるの?
高等教育の修学支援新制度で実施されるのは、次の2つです。
・授業料等の減免
・給付型奨学金の支給
この制度を受けられるのは、対象となる大学などへ進学予定の高校3年生と、すでに対象の大学・短大・高等専門学校・専門学校に在学中の学生です。また、この制度には世帯年収の要件があります。
対象となる世帯は以下の通りです。
・住民税非課税世帯
・住民税非課税世帯に準ずる世帯
住民税非課税世帯に準ずる世帯とは、18歳と15歳の子どもがいる4人家族の場合で、年収が約380万円以下の世帯となります。目安の年収は、支援を受ける学生の年齢や家族構成により異なります。
支援の対象世帯になるかどうかは、
にて確認できます。
支援の内容を教えて!
では、高等教育の修学支援新制度ではどのような支援が受けられるのか見ていきましょう。
◇授業料等の減免
各大学が設定している授業料と入学金が、一定の上限額まで減免されます。授業料等減免の上限額は以下の通りです。
授業料等減免の上限額(年額)※住民税非課税世帯の学生の場合 国公立大学 私立大学 入学金 授業料 入学金 授業料 大学 約28万円 約54万円 約26万円 約70万円 短大 約17万円 約39万円 約25万円 約62万円 高等専門学校 約8万円 約23万円 約13万円 約70万円 専門学校 約7万円 約17万円 約16万円 約59万円 ※昼間制の場合
出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
上記は住民税非課税世帯の場合の減免額です。住民税非課税世帯に準ずる世帯の場合は、住民税非課税世帯の学生の2/3又は1/3の支援額となります。
もし国公立大学へ進学すれば、実質大学の学費が無償になります。私立大学へ進学する場合でも学費の支援は大きく助かります。つまり、経済的理由で進学をあきらめることがないようになりそうです。
◇給付型奨学金の支給
給付型奨学金は、学生が学業に専念できるよう、学生生活を送るのに必要な学生生活費を賄うためのもので、日本学生支援機構から支給されます。
給付される額は以下の通りです。
給付型奨学金の給付額(年額)(住民税非課税世帯) 国公立 大学・短期大学・専門学校 自宅生 約35万円 自宅外生 約80万円 国公立 高等専門学校 自宅生 約21万円 自宅外生 約41万円 私立 大学・短期大学・専門学校 自宅生 約46万円 自宅外生 約91万円 私立 高等専門学校 自宅生 約32万円 自宅外生 約52万円 ※昼間制・夜間制
出典:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
上記は住民税非課税世帯の場合の給付額です。住民税非課税世帯に準ずる世帯の場合は、住民税非課税世帯の学生の2/3又は1/3の支援額となります。
学生生活では食事代や教科書代、文具代、備品代などの出費も欠かせません。その費用が助成されるのは助かります。
高等教育の修学支援新制度を利用する際、注意しなければいけないことがあります。それは、支援を受けるには勉学にも一定の要件が設けられることです。修得すべき単位を取得できない、欠席が多いなど学習する意欲が著しく低いと認められたときは支援を打ち切られ、場合によっては給付されたお金を返還しなければいけなくなります。真面目に学ぶ学生のための支援であることを忘れないようにしましょう。
高等教育の修学支援新制度を利用したいときは、在学生の場合、授業料等減免は学校で必要書類をもらい、学校へ申し込みます。給付型奨学金は、必要書類を学校でもらい、日本学生支援機構へ申し込みます。高校3年生が制度を利用する場合は、高校で必要書類をもらい、インターネットから日本学生支援機構へ申し込みます。その後、日本学生支援機構から高校を通じて、予約採用の採用候補者決定通知が届きます。大学へ入学したら日本学生支援機構へ進学届を提出、授業料等減免と給付型奨学金の手続きを、大学を通して行います。
大学の学費を準備する方法
高等教育の修学支援新制度が始まることにより、経済状況に関係なく、誰もが平等に大学で学ぶ機会を得られるようになります。ただ気になるのは、修学支援新制度の年収要件に当てはまらない場合です。年収が多くても、教育費の貯蓄が十分ではないケースもあるでしょう。その場合はどうすればいいのでしょうか?考えられる方法をご紹介しましょう。
日本学生支援機構の貸与型奨学金を利用する
日本学生支援機構では、経済的な理由で学費を準備できない学生に対し、奨学金を貸与しています。そして現在、学生の2.6人に1人がこの貸与型奨学金を得て学んでいる状況です。貸与型奨学金は学生本人が借りるものですが、昨今奨学金を返済できない人が増えていることが問題になっています。返済が困難になった場合は、返済額の減額や返済期間の先送りもできます。しかし、返済の延滞は防ぎたいもの。貸与型奨学金を借りるときは月々の返済額をシミュレーションしてから、無理のない範囲で借りることをおすすめします。
さまざまな奨学金制度をチェックする
奨学金制度は日本学生支援機構のものだけではありません。自治体が実施するもの、大学が独自に実施するもの、民間企業が実施するものなど種類はさまざまです。特に大学が実施するものは返済の必要がない給付型のものが多いのでチェックしてみましょう。各奨学金制度はWebサイトで「奨学金 種類」などで検索してみるといいでしょう。
国の教育ローンを利用する
貸与型奨学金は学生本人が借りて返済しますが、日本政策金融公庫が貸し出す国の教育ローンは保護者が借りて返済するものです。最高350万円まで利用でき、金利は固定金利で1.66%(2020年2月現在)、最長15年の長期返済が可能です。固定金利なので返済計画を立てやすいのが特徴です。借り入れの際、世帯年収の上限はありますが、子ども1人なら年収790万円、子ども2人なら年収890万円と利用可能な家庭は多く、活用しやすいでしょう。
家計をやりくりして準備するコツ
奨学金や国の教育ローンなどを利用するとしても、できれば返済額は少ない方が家計のやりくりが楽になります。そのためには、教育費の貯蓄は準備しておきたいものです。子どもが中学生までなら児童手当を受給できるので、それを貯めておくことができます。とはいえ、家計の中からも教育費を工面できるようにしておきたいものです。少しでも教育費としての貯金ができるよう支出を見直し、無駄な出費はなくしていきましょう。教育費としていくら必要か、それを何年で貯めていかなければいけないのかを確認して、月々の貯金額を具体的に出しておくと、貯金がしやすくなります。
経済的に苦しいご家庭にとって、学費の違いは重要な検討ポイントのひとつと言えます。大学の学費は国公立が圧倒的に安いことがわかりましたね。また、私立大学でも文科系は学費が比較的安いため、大学受験ポータルサイトで学費検索をして確認してみてください。また、年収の要件はあるものの、2020年4月から始まる高等教育の修学支援新制度は要チェックです。生活費に使える給付もあるので、利用可能であれば活用しましょう。ほかにも奨学金制度や国の教育ローンなど教育費を賄うための方法はいくつもあります。家計の状況と照らし合わせながら、利用を検討してみてください。
※本ページに記載されている情報は2020年3月12日時点のものです
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執筆者プロフィール 前佛朋子(ファイナンシャルプランナー)
10年超ライターとして活躍。節約に関する執筆を行うなか、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。お金と暮らしの整え方を伝授して不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。