

【FP解説】私立大学学部別の学費はどのくらい?生活費や仕送りの費用も重要
子どもが生まれたらいずれ必ず必要となるのが教育資金です。
子どもが生まれたばかりで、将来どのような大学を選ぶのか想像ができないという人もいるでしょう。
でも、もし子どもの希望する大学が私立大学だったら?
もし子どもの希望する大学が自宅から通えない大学だったら?
学費の安い学部や学費免除の最新情報を知って、早めに準備をしていきましょう。
私立大学の授業料と入学金にかかる学費
国公立の大学に比べて授業料が高いイメージがある私立大学。
国立大学や公立大学がどの学部でも授業料が同じなのに対して、私立大学は学校や学部によって授業料はまちまちです。
大学名で選ぶ?
「ここの大学に行けるなら、学部はどの学部でもいい」という場合は、行きたい大学の中から、授業料の安い学部を選ぶというのも一つの方法です。
文部科学省が発表している『私立大学等の平成29年度入学者に係る学生納付金等調査』によると、私立大学の入学料の平均額は25万2,030円、1年間にかかる授業料の平均額は90万0,093円、施設設備費の平均額は18万1,294円です。初年度必要になる合計金額の平均は133万3,418円となっています。
志望する大学の中にどのような学部があるのか、また学部ごとの授業料はいくらなのか、早めにリサーチしておくといいですね。
学部で選ぶ?
大学名には特にこだわらないけれど、学部にこだわりたい場合もありますね。志望する学部の授業料がいくらくらいなのか気になるところでしょう。
そこで、学部ごとに授業料を調べてみました。
- 私立大学部系統別初年度納入金平均額(円)学部系統入学金授業料
文学部 231,110 780,117 外国語学部 231,340 764,427 人文・教養・人間科学部 230,776 789,133 教育・教員養成系学部 236,176 786,266 法学部 222,033 755,230 経済・経営・商学部 226,217 761,186 社会・社会福祉学部 232,962 779,143 国際関係学部 226,839 808,856 理学部 235,625 1,003,524 工学部 238,973 1,039.019 農・獣医畜産・水産学部 247,671 953,096 医学部 1,329,032 2,691,774 歯学部 600,000 3,207,647 薬学部 327,286 1,405,803 看護・医療・栄養学部 264,340 970,441 家政・生活科学部 240,034 791,631 体育・健康科学部 243,015 815,264 芸術学部 237,147 1,003,358 出典:旺文社 教育情報センター調べ『2019年度学費平均額』より筆者抜粋
この表を見てみると、やはり医学部、歯学部、薬学部や芸術系の学部は授業料が高くなっていることがわかります。
授業料が高い学部を志望するのであれば、教育資金の準備に向けての対策を早いうちからする必要があるでしょう。
学費以外に知っておきたい生活費や仕送りのお金
私立大学の授業料だけでも高いのに、もし自宅から通えない大学を志望した場合は仕送りも考えておかなければなりません。
自宅外通学、生活にいくらかかる?
日本学生支援機構が発表している『平成28年度学生生活調査』によると、私立大学に通う学生の中で、自宅外通学をしている学生は35.3%という結果がでています。私立大学に通う学生の3割以上の学生が、下宿や学生寮など自宅を離れて生活していることになりますね。
仕送り、みんないくらしているの?
下の表は全国大学生活協同組合連合会『第54回学生生活実態調査』による、2018年の下宿生の1カ月の生活費です。
- 1カ月の収入(円)2018年前年増減
仕送り 71,500 -1,480 奨学金 20,530 +340 アルバイト 31,670 +2,900 定職 470 +340 その他 3,110 +1,290 収入合計 127,280 +3,390 - 1ヵ月の支出(円)2018年前年増減
食費 26,230 +1,040 住居費 52,560 -260 交通費 4,230 +900 教養娯楽費 11,520 +1,690 書籍費 1,710 +200 勉学費 1,830 +450 日常費 7,260 +1,190 電話代 3,710 -90 その他 3,310 +300 貯金・繰越 13,740 -80 支出合計 126,100 5,350 出典:全国大学生活協同組合連合会『第54回学生生活実態調査(2018年)』より筆者抜粋
この調査を見てみると、1カ月平均約7万円程度仕送りをしていることがわかります。
私立大学で下宿となると、親の負担はやはり大きくなってしまいそうです。
学生の支出の中で一番大きい費用はやはり住居費で、1カ月平均5万円を超える負担になっています。自宅外通学をする場合、学生寮は利用できるのかなど、早めにリサーチしておくのもいいでしょう。
私立大学の学費を払うために利用したい奨学金制度
教育資金は、子どもが生まれた時からコツコツ貯めていきたいですね。子どもが生まれてから中学を卒業するまで支給される児童手当を全額貯めると、約200万円貯めることができます。でも、これだけで私立大学の4年間の学費や下宿の費用を賄うことは厳しいのが現状です。
「我が家は私立大学はお金の面で厳しいな」と思う人もいるかもしれませんが、奨学金制度を利用することも考えておくといいでしょう。
日本学生支援機構の奨学金
奨学金といえば、一番に検討されるのが日本学生支援機構の奨学金制度ではないでしょうか。
奨学金には、世帯収入の基準を満たす必要がある給付型と、誰でも利用できる貸与型があります。
貸与型には利息が付かない第一種と、利息が付く第二種があります。利息が付くタイプの奨学金も在学中は無利息です。利息は年3%を上限とすることが決められていて、2019年11月の貸与利率は年0.143%です。
奨学金は、子どもが借りて、卒業してから子ども自身で返却していくことになるので、親子でしっかり話し合って利用したいですね。
高等教育無償化制度とは
2020年4月より、住民税非課税世帯を対象に「高等教育の就学支援新制度」が始まります。私立大学の場合、入学金が約26万円、1年間の授業料が約70万円減免されます。
また、給付型奨学金の支給も拡充されます。
私立大学の場合、自宅生は約46万円、自宅外生は約91万円が支給されます。
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生に対しても、年収の目安が約300万円までの世帯の学生に対して住民税非課税世帯の学生の3分の2、年収の目安が約380万円までの世帯の学生に対して住民税非課税世帯の学生の3分の1の支援が行われます。
学校独自の奨学金を目指す
独自で奨学金制度を導入している大学があります。
奨学金制度を利用できる条件や奨学金の金額は大学によって様々なので、利用を考えている人は志望校に確認しておくといいでしょう。
教育資金の税制優遇も上手に活用
ここまでは奨学金制度についてみてきました。
次に、視点を変えて祖父母にサポートをお願いするという方法もあります。
もともと祖父母が孫の教育費を、その都度払う場合は贈与税がかかりません。でも、将来の教育費としてまとめてお金を渡すと贈与税の対象になってしまいます。でも、国が用意している特例制度を利用すると贈与税がかからずにお金をもらうことができるのです。
「教育資金の一括贈与の非課税の特例」とは
親や祖父母が、30歳未満の子どもや孫の学校教育のためのお金を一括で贈与しても、1,500万円までは贈与税がかかりません。
この制度は2021年3月までの期限付きの制度なので、もし将来の教育費をお願いしたいと考えている人は、早めに祖父母に相談してみるのも一つの方法です。
この制度を利用するには、信託銀行を通じて行います。また利用するにあたり、いろいろな条件があるので、注意が必要です。
私立大学は学費が高いから、と選択肢から外すのではなく、事前にリサーチをすることで、「我が家の場合」の費用を知ることができます。
いろいろな制度を上手に利用しながら、子どもの夢を応援してあげたいですね。
※ 本ページに記載されている情報は2020年3月3日時点のものです
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執筆者プロフィール 安部 智香(ファイナンシャルプランナー)
女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター
安部智香ファイナンシャルプランニングオフィス代表、
ファイナンシャル・プランニング技能士2級、AFP(日本FP協会認定)、一種外務員資格
短大卒業後、証券会社に勤務。在職中は資産運用のアドバイスを担当。結婚退職後は「もっとお金のこと、家計のこと、資産運用のことを伝えたい」という思いで個人事務所を立ち上げ、個別相談、執筆業務、マネーセミナー講師として活動中。著書は『幸せなお金持ちになるマネーレッスン♪』 (パブラボ)
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