

【FP監修】小学校の学費はどのくらい?公立と私立の違いは?
子どもの成長は親にとって喜びです。しかし、教育にかかるお金を考えると不安を持つ人も多いかもしれません。小学校に進学すると学費はどのくらいかかるのでしょうか?公立小学校あるいは私立小学校に進学した際の学費の違いも確認しておきたいところです。
執筆:三原由紀(ファイナンシャルプランナー)公立小学校と私立小学校の学費はどのくらい違う?
公立小学校と私立小学校に進学した場合に、かかる費用は学費だけではありません。習い事など学校外でかかる費用も含めたトータルのお金を確認しておく必要があります。
学習費総額では私立小学校は公立小学校の5倍!
公立小学校と私立小学校でかかる総費用について、文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について」を参考に見てみましょう。
公立小学校の学習費総額は年間32万1,281円です。
【内訳】
学校教育費 6万3,102円 学校給食費 4万3,728円 学校外活動費 21万4,451円 総額 32万1,281円 私立小学校の学習費総額は年間159万8,691円です。
【内訳】
学校教育費 90万4,164円 学校給食費 4万7,638円 学校外活動費 64万6,889円 総額 159万8,691円
総額で私立小学校の方が費用は高いことは一目瞭然ですが、学校給食費は公立小学校とあまり大差がありません。比べてみると、私立の授業料など学校教育費は公立の約14倍、習い事など学校外活動費は公立の3倍となっています。学習費総額に占める割合を見ると、公立小学校では学校外活動費が全体の約66%を占めています。一方で私立小学校は学校教育費が全体の約57%を占めています。
これは、公立小学校では授業料が無料なので学校教育費が総額に占める割合が低くなり、その分習い事などの学校外活動費が相対的に大きくなっていると考えられます。また、私立小学校では授業料が高額なため、総額に占める割合が高いと言えるのではないでしょうか。
いずれにしても、公立小学校でかかるお金は月額2万6,773円ですから、あまり不安に思う必要はないと言えるでしょう。
学年が上がると教育費は増える
学年別にかかる学習費総額も見ておきましょう。
学年別教育費(年間平均)
公立小学校 私立小学校 1年生 35万860円 189万2,002円 2年生 26万3,310円 136万6,148円 3年生 29万2,950円 141万5,920円 4年生 30万9,617円 149万7,087円 5年生 33万9,132円 163万684円 6年生 37万940円 179万314円 合計 192万6,809円 959万2,145円 出典:文部科学省 平成30年度(2018年度)子供の学習費調査を元に筆者作表
公立小学校と私立小学校では、入学時にお金がかかる1年生を除くと2年生以上は学年が上がるにつれて教育費も増えています。
6年間の総額は、公立小学校で約192万円、私立小学校で約960万円です。公立小学校に比べ私立小学校に進学する場合には、まとまったお金が必要になることがわかります。参考までに、私立小学校に進学する子どもの人数は、国公立の小学校に進学する人数の約1.2%です(※)。大多数は公立小学校に進学しており、私立小学校への進学は極めて少数派と言えます。
※文部科学省・令和元年度学校基本調査(確定値)の公表について
P.1表1 初等中等教育機関,専修学校・各種学校の学校数,在学者数,教員数より 計算して算出
学校教育費の内訳 公立小学校は学用品の支出が大きい
学校教育費の内訳を見てみましょう。
学校教育費の内訳(年間平均)
内訳 公立小学校 私立小学校 授業料 — 48万5,337円 修学旅行・遠足・見学費 6,951円 4万4,816円 学級・児童会・生徒会費 7,578円 1万6,493円 PTA会費 3,058円 1万1,485円 その他の学校納付金 1,585円 18万8,525円 寄附金 14円 1万4,922円 教科書費・教科書以外の図書費 2,546円 6,880円 学用品・実験実習材料費 1万7,127円 2万5,175円 教科外活動費 2,041円 1万507円 通学費 1,391円 3万9,283円 制服 2,554円 3万1,991円 通学用品費 1万4,087円 1万9,475円 その他 4,170円 9,275円 合計 6万3,102円 90万4,164円 出典:文部科学省 平成30年度(2018年度)子供の学習費調査を元に筆者作表
公立小学校は授業料が無料ですが、授業料以外にも様々な費用がかかることが分かります。中でも学用品・実験実習材料費や通学用品にかかる費用は全体のほぼ半分以上を占めています。
入学前には、ランドセルなど揃える必要があるものが諸々あります。以下を参考にして「チェックリスト」を作っておくと良いでしょう。
ランドセル(カバーなど備品)
学習机
防災頭巾・防犯グッズ
文房具類・お名前シール
通学用の服・制服・体操服
通学靴・上履き・体育館シューズ
学校引き出し
手提げ袋類
給食関係の小物類
知っておきたい!学習費総額の66%を占める学校外活動費とは?
学校外活動費は、学習塾費用などの補助学習費やスポーツやピアノなど文科系の習い事にかかる費用です。共働き世帯であれば学童保育などの費用もあるでしょう。
学年別の費用を見てみましょう。
学年別学校外活動費
補助学習費(年間)
自宅学習や学習塾・家庭教師などの費用文化系・スポーツなどの習い事の費用(年間) 公立小学校 私立小学校 公立小学校 私立小学校 1年生 6万456円 21万9,904円 13万3,546円 35万3,094円 2年生 5万1,966円 18万7,142円 13万1,200円 34万3,544円 3年生 6万333円 23万2,493円 13万9,518円 33万5,106円 4年生 7万4,109円 34万2,574円 14万5,630円 28万5,471円 5年生 10万8,779円 48万1,057円 13万68円 24万6,660円 6年生 13万212円 63万7,328円 11万2,222円 22万3,543円 合計 48万5,855円 210万498円 79万2,184円 178万7,418円 出典:文部科学省 平成30年度(2018年度)子供の学習費調査を元に筆者作表
公立小学校・私立小学校ともに学年が上がるにつれて学習塾などの補助学習費が増えています。高学年になると中学受験に向けて支出が増える家庭もあるでしょう。文部科学省が行なった令和元年度(2019年度)の調査によると全国の中学生生徒の総数は321万8,137人。そのうち私立中学の生徒数は23万9,106人ですから全体の約7.4%が私立中学に通っていることになります。
2018年度の調査では2018年度の調査では、上位から順に東京都で24.8%、高知県で18.0%、京都府13.2%、奈良県で12.4%、神奈川県で11.4%といったように私立中学への通学率は地域で高低差があります。中学受験を考えている場合、毎月の塾代以外に夏休み・冬休みなどの講習代、入試費用、入学金、制服代などの費用を見込んでおく必要があります。いくらかかるのか?を調べておくことと合わせて、いくらかけるのか?についても家庭内で話し合っておくことも大切です。
また、スポーツなど習い事の費用は公立小学校では4年生をピークに減り6年生になると最も少なくなります。ただし、6年生は補助学習費を含めると年間24.2万円ですから、6学年の中で最大の金額です。
学校外活動費については、人口規模が大きくなるほど支出が多い傾向があります。例えば人口5万人未満の市区町村では年間15.8万円ですが、大阪市・横浜市・千葉市などの指定都市や東京23区などの特別区では年間28.3万円になります。その差は約1.8倍と、人口の多い都市部ではお金をかける傾向があることも付け加えておきます。
要チェック!小学生がいる世帯への公的支援制度
国や自治体では、子育て世帯へ公的支援を行なっています。これらの支援はすべて自分で申請をしないと受け取ることはできません。小学生の子どもがいる世帯が利用できる制度を見てみましょう。
「児童手当」で月額1万円の支給
児童手当は、中学生以下の子どもを持つ世帯に支給されます。子どもの年齢や人数、扶養している親の年収によって支給額が異なります。支給額の目安を見てみましょう。
一人当たり月額:1万円(第3子以降は1万5,000円)
※所得制限限度額以上の場合、月額一律5,000円
所得制限限度額は扶養親族の人数によって異なります。詳細については居住地の役所にある児童手当取り扱い窓口で確認をしてみましょう。
また、母子家庭・父子家庭のひとり親世帯や親が特定の障害状態にある子どものために「児童扶養手当」の支給があります。支給額は手当を請求する人の所得に基づいて決まり、所得制限もありますので詳細は居住地の役所にある担当窓口で確認をしましょう。
子ども医療費助成で医療費負担ゼロも
各自治体では、子育て世帯の経済的負担を減らすため医療費の援助を行っています。全ての都道府県と市区町村に医療費助成制度はありますが、自治体によって自己負担や所得制限の有無など助成内容は異なります。例えば、東京都港区は、中学3年生(15歳に達する日以後の最初の3月31日)までの子どもが、医療機関等で健康保険による診療・調剤を受けた時に、医療費の自己負担分を助成しています。自分の居住地の制度を確認しておきましょう。
※ 本ページに記載されている情報は2020年2月25日時点のものです
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執筆者プロフィール 三原由紀(ファイナンシャル・プランナー、公的保険アドバイザー、相続診断士)
大学卒業後、食品会社・外資系メーカーに勤務。子どもの小学校入学を機に保険代理店でパートを開始、FP資格を取得。「無知はリスク(知らない=損をしていることもわからない)」を実感、自らの家計を再生する。主婦目線でのコラム執筆に定評あり。行政でのセミナー講師から会社員世帯への家計相談、障害者の家族をサポートする相続相談まで、保険や金融商品を売らない独立系FPとして活動中。「FP相談ねっと」認定FP。