

赤ちゃんの「おすわり」いつから?子育て中の女性医師が答えます
「うちの子、まだおすわりしない…大丈夫?」赤ちゃんが順調に発達しているかどうか、特に初めての育児ではご両親も心配になるものです。生まれたばかりの赤ちゃんは、わずかな期間でも心身ともに驚くべき発達を遂げますが、個人差が大きいことは常に頭に入れておきたいもの。正常な発達の目安とされるペースからわが子が遅れていたとしても、病気や障害が原因とは限らず、必ずしも心配する必要はありません。
ここでは、発達過程のポイントとなる「おすわり」に焦点を合わせ、ペースが遅い場合の考え方を解説するとともに、練習方法などもご紹介していきます。
おすわりはいつごろできるようになる?
生まれたばかりの赤ちゃんは全身の筋力が弱く、首も腰も座っていません。もちろん、寝たきりの状態で寝返りを打つこともできません。抱っこするにしても、首をしっかりと支えてあげる必要があります。こうしたかよわき存在の赤ちゃんですが、一般的におすわりができるようになるのはいつごろなのでしょうか。
おすわりの時期は生後7~8か月が目安
赤ちゃんは驚異的なスピードで発達していきます。まず、生まれてから2~3か月の間に首や背中の筋肉が発達して首が座るようになります。次に、背中や腰の筋力がついて寝返りができるようになり、さらにお尻や太ももの筋肉が発達するとおすわりできるようになるのです。一般的に、寝返りができるのは生後5~6か月ごろ、おすわりができるのは7~8か月ごろとされています。
おすわりは発達過程における重要ポイント
生まれてからの運動機能の発達の中でも、おすわりは重要なポイントの一つです。なぜなら、おすわりからハイハイへ移行し、つかまり立ちから伝い歩き……と、赤ちゃんが自立歩行するようになるための発達過程の第一歩となるからです。
また、赤ちゃん自身もおすわりによって視野が変わることで、それまでとは違った世界が見えてきます。様々な物事に興味を持ち、遠くにあるおもちゃを取ろうと一生懸命手を伸ばしてはコロンと転がってしまう……。そうした動作を繰り返していく中で体幹や腕、脚の筋力が発達していくのです。ベビーベッドに寝たままだったころと比べたら、ご両親は赤ちゃんから目が離せなくなりますが、赤ちゃんの安全と発達のためと思って乗り越えましょう。
生後8か月までにおすわりができなかったら?
乳幼児健診などでもおすわりは発達を評価するための一つの指標とされています。目安とされる生後7~8か月を過ぎてもおすわりができない場合、親としてはどう考えればよいのでしょうか。
多すぎる情報に惑わされないで
近年は、スマートフォンやタブレットなどで気軽に多くの情報を得ることができます。初めて育児をするご両親も一度は育児サイトをのぞいたことがあるでしょう。しかし、あまりにも情報が氾濫していて、「○か月までにおすわりができなければ△△という病気だ」「□□の障害があるとおすわりが遅れる」などと大げさに書かれたものを目にして不安になってしまうこともあります。こうした情報は「可能性はあるけれど極めてまれなケース」を取り上げ、針小棒大に書かれていることがほとんどだと筆者は感じています。
赤ちゃんの発達には個人差がある
2人以上を育てたことがあるご両親なら誰もが納得してもらえると思いますが、赤ちゃんには生まれたときから個性があります。ただ眠っているように見える新生児でも、それぞれ異なる性格や行動がみられるのです。発達のスピードに関しても例外ではありません。したがって、「おすわりは生後7~8か月」というのは単なる目安にすぎず、それ以前にできるようになる子どももいれば、それを過ぎてもできない子どももいます。
育児をしていく中で、このような目安からわが子の発達がズレることはよくある話です。何らかの病気や障害が背景にあることも考えられますが、ほとんどは赤ちゃんごとの個性の表れです。発達が目安よりも遅れていると心配になるご両親が多いと思いますが、健診などで異常を指摘されない限り、慌てる必要はありません。
筆者の子どもも、なかなか寝返りを打たなかったので悩まされましたが、いつか気づいたらできるようになっていました。その後もまったく問題なく成長しています。発達の仕方は赤ちゃんの個性と考えて、それぞれの赤ちゃんのペースに合わせて焦らずに見守ってあげましょう。
おすわりの練習をやってみよう!
とはいえ、「ちょこんとかわいくおすわりする姿を早く見たい!」と思っているご両親も多いはず。先に述べたように、おすわりは腰とお尻、太ももの筋肉が発達するとできるようになります。おすわりに必要な筋力をつけるためにも、赤ちゃんとのスキンシップを兼ねてちょっとしたトレーニングをしてみましょう。「おすわりの練習は背骨に悪いのでは?」と心配する方もいますが、正しく行えば悪い影響はないので安心してください。
まずは両手をついておすわりを!
バランス良くおすわりをするポイントは、お尻や太ももが床と接する面積を大きくすることです。まずは、赤ちゃんが両脚を開いた状態で座れるように腰とお尻をしっかりと支え、両脚の間に両手をつかせてあげましょう。グラグラして不安定なようであれば、パパやママが赤ちゃんの後ろにくっつくように座り、両膝で赤ちゃんのお尻を挟むようにするとおすわりの姿勢を安定してキープできます。
目の前におもちゃを置いてみよう!
パパやママが支えてあげた状態でおすわりの姿勢をキープできるようになったら、赤ちゃんの目の前におもちゃを置いてみましょう。両手を使っておもちゃで遊ぶことで、手を使わずにおすわりをする練習ができます。同時に体幹や腕、脚の筋力も鍛えられるため一石二鳥です。
おすわりができない時期に適した椅子は?
次に、一人でおすわりができない時期に座らせておくために、どのような椅子を選べばよいのかご紹介します。椅子を使って少しの間でも一人で座っていられる時間があれば、ちょっとした家事やママがトイレに行くときなどに助かりますね。
乳児用補助椅子
腰や太ももをしっかり固定した状態で座わらせることができる乳児用の補助椅子です。首が座って、ある程度背中や腰の筋肉が発達していれば、一人でおすわりできない赤ちゃんも座らせることができます。様々な商品が販売されているので、色やデザイン、質感などを吟味して赤ちゃんが喜びそうなものを選びましょう。
バウンサー
新生児のころから使えるバウンサーは、おすわりができない赤ちゃんを座らせておくのにも便利です。赤ちゃんの動きに合わせてゆらゆら揺れるものであれば、その揺れを楽しんでご機嫌で一人遊びすることもあります。
ベビーラック
バウンサーと同じく新生児のころから使えるベビーラックは、高さや角度などを調整することができ、机を取り付ければ離乳食をあげるときにも使うことができます。電動のゆりかご機能がついている商品もあるので、赤ちゃんの寝かしつけにも重宝するでしょう。
おすわりの遅れ…こんなときは要注意!
赤ちゃんの発達には個人差があるので、一般的な目安とされる7~8か月を過ぎておすわりができなかったとしても、ほとんどの赤ちゃんはいずれできるようになります。しかし、神経や筋肉などの病気や障害が原因で発達の遅れが生じているケースがあることも事実です。おすわりの遅れがみられ、さらに次のような項目に当てはまる場合は、できるだけ早く医師や保健師などに相談してください。
・腰やお尻を支えてもおすわりの姿勢ができない。
・筋力が弱く、腕や脚などもだらっとしている。
・新生児仮死など出産時にトラブルがあった。
・首の座りや寝返りなどの発達も著しく遅れている。
おすわりができるかどうかは、赤ちゃんの運動機能発達の重要な指標になります。発達には個人差があり、一般的な目安より遅れていたとしても、ほとんどは問題なく成長していきます。ただし、中には病気や障害が原因になっていることもあるので、気になる場合は健診などの機会に医師や保健師などに相談してみましょう。また、赤ちゃんがスムーズにおすわりできるようになるよう、赤ちゃんの遊び方や身体の支え方を工夫することも大切です。
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監修者プロフィール 成田亜希子
2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。