【子育て中の医師監修】イヤイヤ期がない!発達に問題はあるの?
【子育て中の医師監修】イヤイヤ期がない!発達に問題はあるの?

2019/08/30

【子育て中の医師監修】イヤイヤ期がない!発達に問題はあるの?

イヤイヤ期を迎えた子どもは、何をするにも「イヤ!」を連発して癇癪(かんしゃく)を起こし、ご両親を疲弊させます。しかし、イヤイヤ期の訪れ方には特徴や個人差があり、「それらしいことがまったくない」「軽い」というケースもあります。それはそれで心配になってしまいますね。ここでは、イヤイヤ期が訪れない場合の原因と対処法について解説します。

執筆・監修 成田亜希子(内科医)

イヤイヤ期は「自分」を確立する準備の時期

  • イヤイヤ期は正式には「第一反抗期」と呼ばれています。様々な物事に対して自己主張が生じ、思い通りにならないと「イヤ!」と泣き叫んだり、物を投げたり、ママをたたいたりして感情を爆発させる時期を指します。

  • 際限なく続くように思えるイヤイヤの嵐は、ご両親のこころにゆっくりと、しかし確実にダメージを与えていきます。筆者も自分の子どもがイヤイヤ期真っただ中だったときは、毎日疲れ果てて常にダルさを感じていました。外出先でイヤイヤされることを恐れるあまり家の中にこもりがちになり、よりいっそうストレスがたまっていくという悪循環でした。

  • しかし、子どもにとってイヤイヤ期は「自分」という存在を確立するための大切な発達過程です。この時期にイヤイヤという不完全なかたちであっても自分なりの意思を示すことで、将来的に物事の是非を判断したり、進むべき道を切り拓いたりする能力の土台を築くことができるのです。毎日イヤイヤに付き合わされるご両親にしてみれば、正直うんざりしてしまうこともあるでしょう。とはいえ、イヤイヤ期は永遠に続くわけではありません。わが子が成長するための一時の試練と考えて乗り越えていきましょう。

イヤイヤ期は「教科書通り」に訪れるとは限らない

  • 一般的な育児書や育児情報サイトなどでは、イヤイヤ期は2~3歳ごろに訪れると書かれていることが多いと思います。しかし、実際には個人差が大きいことが分かっています。

  • 広告代理店の博報堂が0~5歳児のパパ・ママ9250人を対象に行った「イヤイヤ出現率調査」1)(2018年)によれば、イヤイヤ出現率が最も高い(77.3%)のは2歳0か月~5か月という結果でした。この月齢がピークではありますが、早くて0~5か月の乳児の段階からイヤイヤが認められ、4歳以降も3~4人に1人はイヤイヤ期にあるようです。中には2歳を迎える前にイヤイヤ期が終わる子どもや、4歳になって初めてイヤイヤ期になる子どももいることでしょう。子どもの発達は一様でなく、イヤイヤ期が現れるタイミングは個性の一つとも考えられるのです。

イヤイヤ期が訪れない……その原因は?

  • 中にはイヤイヤ期らしきものが一向に訪れないというケースもあります。「イヤイヤ期は正常な発達過程をたどっているサイン」などと言われながら、わが子にそれらしき様子がみられないとなったら、ご両親はきっと不安に思ってしまうはずです。では、イヤイヤ期が訪れない原因としては、どのようなことが考えられるのでしょうか。

  • 単にタイミングがズレているだけ

    一般的にはイヤイヤ期は2~3歳ごろに訪れるとされていますが、前出の調査結果からも分かるように、それ以外のタイミングで訪れることも少なくありません。したがって、「単なる赤ちゃんの機嫌の悪さと思っていたものが実はイヤイヤ期だった」「イヤイヤ期がないと思っていたら4歳になってから訪れた」といったケースもあるわけです。

  • ご両親の対処が上手だった

    イヤイヤ期を迎えていたとしても、ご両親が子どもに対してストレスを感じていなければ、イヤイヤ期と気づかないまま経過するということもあります。特に上の子どもがいるママは癇癪を起こす子どもへの対処がうまくなっており、本格的なイヤイヤが起こる前に鎮静化させていることがあります。前出の調査では、年の離れたきょうだいがいる場合、3人目以降の子どもである場合は、イヤイヤ期によるご両親のストレスは軽減されることが分かっています。

  • 子どもの性格上、イライラしにくい

    イヤイヤ期の現れ方には、その子どもが生まれ持った性格が大きく関係しています。赤ちゃんのころからぐずりや夜泣きがひどかった子どもは、不快や怒りなどネガティブな感情を表に出しやすい性質で、それがイヤイヤの現れ方にも影響する傾向があります。一方で、いわゆる「育てやすい子ども」はストレスを感じにくい性質で、イヤイヤの程度も軽い傾向にあります。

  • もしかしたら、愛着不足?

    ハンガリーの児童心理学者マーガレット・マーラーによれば、生後6か月から2歳ごろまでの間に、子どもは自分を守ってくれるパパやママなど周囲の人に「愛着」を形成します。イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィによれば、この「愛着」とは信頼と愛情によって子どもが特定の人との間に築く絆のことを指します。

  • しかし、乳児期に十分なスキンシップや語りかけなどを行わなかった場合は、愛着の形成が不十分になります。その結果、イヤイヤ期相当の年齢になって自己主張が生じたとしても、パパやママへの信頼が薄いために、自分の思いを表現できなくなってしまうことがあるのです。イヤイヤをすることは、子どもにとって体力を消費する大仕事。その努力を払ってまで自己主張をするのは、「パパやママなら自分の思いを理解してくれる」という信頼があってこそなのです。

  • 発達障害が原因であることも……

    イヤイヤ期が訪れない場合、わが子の発達状況が心配になるご両親も多いでしょう。しかし、イヤイヤ期を経なかったとしても、ほとんどの子どもは何の問題もなく成長していきます。ただし、一部の子どもでは自閉症スペクトラム障害をはじめとした発達障害が原因でイヤイヤ期が訪れないこともあります。言葉が遅れている、目を合わせない、人見知りをしない、集団生活が苦手など、日常生活の中で著しく気になる点がみられるときは、一度専門の医療機関で相談してみてください。

イヤイヤ期が訪れない場合、どう対処すればいい?

  • イヤイヤ期が訪れない子どもに対しては、どのように接してあげればよいのでしょうか。おススメの方法をご紹介します。

  • 子どもと一緒に過ごす時間を増やす

    先に述べたように、子どもがイヤイヤをするのはご両親を信頼している証拠でもあります。昨今は夫婦共働き世帯が多いですが、できるだけ長く子どもと過ごす時間を作るように心がけてください。育児中にスマートフォンやタブレットに夢中になっていませんか? 子どもと過ごしている間は子どものことに集中して、心と心で向き合うようにしましょう。

  • 子どもの欲求を察知し、言葉にしてみる

    ご両親にとって意識的であれ無意識的であれ、子どもが何らかの我慢を強いられており、発達を押さえ込まれてしまっているケースも考えられます。イヤイヤ期相当の時期にしっかりと自我が芽生えないと、将来的に自己決定が苦手になってしまうかもしれません。そうならないためにも、子どもの欲求を敏感に察知して、「今は積み木遊びがしたいんだよね?」というように語りかけてあげてください。それを積み重ねることで、次第に親子の信頼関係が築かれていくはずです。

  • イヤイヤ期には、ご両親も子ども自身も疲弊してしまうものです。何をしても「イヤ!」の連続で、日常生活を送ることが難しくなるケースまであります。イヤイヤ期がないならないで心配になりますが、過度に心配しなくても大丈夫な場合と、何らかの対処をすべき場合のどちらであるかを判断しつつ、子どもにいっぱいの愛情を注いであげてください。

  • 成田亜希子

    監修者プロフィール 成田亜希子
    2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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