【産婦人科医監修】産後うつの症状と対処法は?自分だけじゃない!出産後の育児不安
【産婦人科医監修】産後うつの症状と対処法は?自分だけじゃない!出産後の育児不安
公開日 2018/11/30
更新日 2021/04/26

【産婦人科医監修】産後うつの症状と対処法は?自分だけじゃない!出産後の育児不安

出産後には、「気分がすぐれない」「眠れない」「身体が重くて起き上がれない」などの症状が出ることがあります。赤ちゃんが可愛いと思えず、育児を不安に感じることもあるでしょう。自分だけがおかしいのか、この状態がいつまで続くのかと心配になるかも知れませんが、出産後、子育てや生活の変化のなかでよくみられる状態です。しかし、なかには産後うつ病を発症し、治療が必要なケースもあります。
産後うつとは何か、なりやすい人の傾向や原因、予防法や対処法を知り、いまの自分の状態が「時間の経過とともに改善するのか」、「病院を受診したほうがよいのか」をチェックしましょう。

監修:小川クリニック院長 小川隆吉先生
執筆:友永由紀(ライター)

産後うつとは?

  • 産後うつとは、産後に理由もなく哀しさや惨めさなどの感情が生じ、物事に対する興味がなくなってくるものです。その症状は、数週間から数か月以上続きます。

  • このため日常生活や育児に支障を来してしまいます。

産後うつにみられる症状

  • 個人差はありますが、主な症状に以下のようなものがあります。

    ・気分がずっと沈み込む

    ・ときどき泣いてしまう

    ・日常生活の活動に興味が持てない

    ・「自分が悪い」と感じる

    ・以前に比べて、動作や話し方が遅い

    ・毎日のように疲労感が続き、気力がわかない

    ・自分を価値のない人間(母親失格)と思う

    ・家事や育児に集中できない

    ・物忘れが多い

    ・赤ちゃんのことが過剰に心配でたまらない

    ・赤ちゃんのことに無関心になる

    ・物事(家事や料理)にうまく対処することができない

    ・悲観的にしか物事を考えられない

    ・この世から消えてしまいたいと考えるときがある(自殺企図)

    文献1)『これからはじめる周産期メンタルヘルス』(宗田聡著/南山堂)より引用

  • 産後うつの症状の一例

    たとえば、赤ちゃんが泣いていてもあやそうという気持ちが起きず、ぼーっとしてしまったり、「母親失格だ」と自分を責めてしまったり、食欲がなくなったり、逆に食べ過ぎてしまうなど、日常生活や自分と赤ちゃんの健康にまで影響が及んでしまう状態になります。

  • これらの症状は個人差が大きく、人によって感じ方も違います。また、産後の女性すべてに起こるものでもありません。

  • 産後うつとマタニティブルーとの違いは?

    産後3~10日くらいに悲しさや惨めさなどの感情やわけもなく涙が出てくることがあります。これは「マタニティブルー」とよばれるものです。

  • 出産に伴う卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌バランスの変化や出産の疲れ、睡眠不足などが原因で起こるものです。30~50%くらいの人が経験するもので、めずらしいことではありません。

  • こうした感情はたいてい2週間以内に治まるため、あまり心配することはありません。

産後うつはいつ頃起こる?

  • マタニティブルーの症状が2週間以上も改善されなかったり、症状が強く出たりすると産後うつが疑われます。時間が経ってから表れることもあるので、産後3か月くらいまでは用心が必要です。

  • いつまでも気分が晴れない、自分を責めて死にたくなる、眠れない、食欲の異常、疲労感などが改善されない場合は、早めに精神科・心療内科、かかりつけの産婦人科を受診してください。

考えられる産後うつの原因

  • 産後うつの原因ははっきりと解明されていませんが、いくつかの要因が複合して起こると考えられています。

  • 以下は一例で、要因には個人差があります。

  • 産後のホルモンバランスの乱れ

    分娩によってホルモン濃度(エストロゲン、プロゲステロン、甲状腺ホルモンなど)が急激に低下し、ホルモンバランスが乱れます。

  • 育児のストレス

    産後は、2時間おきの授乳による睡眠不足、慣れない世話、自分の時間がもてないなど、いつも気が張っている状態にあります。

  • 子どもの健康上の問題への不安

    子どもに先天的な疾患がないかなどの心配、成長度合いや心身の健康に問題がないかなどの不安を感じやすい時期にあります。

  • うつ病などの心の病気の既往歴がある

    過去にうつ病などの心の病気があった人が、出産を機にうつ病を発症するケースもあります。

  • パートナーとの問題によるストレス

    妊娠中、出産後の経済的な問題やパートナーの不在、夫婦関係の問題などが原因になることもあります。

産後うつの治療方法

  • 産後うつは「うつ病」ですので、治療法は通常のうつ病と同じです。ただし、産後うつは重症化すると、赤ちゃんに危害を与える可能性もあることから、周囲の人の注意深い見守りが必要になります。

  • 「産後うつかな……」と思ったら、早めの受診が大切です。心療内科や精神科への受診がためらわれる場合は、出産時の産婦人科医に相談して、専門医を紹介してもらってもよいでしょう。

  • 精神療法と薬物療法で治療

    否定的、悲観的な気持ちになってしまう要因や思考回路を正しい状態に戻すような精神療法(認知行動療法など)と、抗うつ薬や向精神薬などの服用を同時に行います。

  • 授乳に影響のない薬剤を処方されることがほとんどですが、母乳育児を続けるかは通院している産科の主治医と相談してください。

産後うつになりやすい人に傾向はある?

  • 誰でもマタニティブルーや産後うつになる可能性はありますが、なりやすいタイプとしては以下のような特徴が知られています。

  • ・妊娠中にささいなことで落ち込んだり、理由もないのに悲しくなったりしたことがある

    ・「育児はこうしないとならない」と決めており、実行しようとしている

    ・育児のことや日常のことなどの愚痴や相談をする相手が夫以外にいない

    ・几帳面な性格で、だらしない生活やいい加減な家事に対して嫌悪感がある

    ・普段からストレス解消が上手ではない

    ・細かいことが気になってしまう。自分にも他人にも厳しい完璧主義

  • 何にでも一生懸命でしっかり者と言われている人、すぐに思い詰めてしまう人が発症するケースが多いといえます。「いまは育児が最優先。できないこともある」と気楽に構えることが大切です。

「産後うつかもしれない」と思ったときの対処法

  • 産後うつに限らず、産後の母親の精神状態は不安定なものです。「ちょっと気分が落ち込んでいるな」「疲れているな」と感じたら早めに解消するように心がけましょう。

  • 育児の不安・疑問を書き出そう

    育児で不安なことがあったら、一人で考えずに書き出してみましょう。医師に相談する際にも役立ちます。

  • つらい、大変、疲れた! と助けを求める

    夫や家族の手を借りることを遠慮しないで、して欲しいことや聞いてほしいことを伝えます。「察してくれない」と怒るより、「○○をして」と声に出すようにしましょう。

  • 一人の時間をつくる

    たまには赤ちゃんを預けて、一人でショッピングや映画などの息抜きをして気分をリフレッシュします。

  • 家事や育児を外注する

    赤ちゃんと2人きりで部屋にこもっていると、不安になったり落ち込んだりしてしまいがちです。家事代行やベビーシッターといったプロに代行してもらうことで、育児に余裕が生まれます。

  • 他の母親と共通の悩みなどを話す

    赤ちゃんをもつ母親は同じような悩みを抱えています。公園や子育て支援施設に行ったり、SNSで情報を共有したりして、多くの人の話を聞いてみましょう。

不安があれば自分で判断せずに専門家に相談を

  • 産後に感情が不安定になるのはよくあることです。必要以上に不安になったり、怯えたりする必要はありません。「いまだけのこと」「できなくて当たり前」と割り切る気持ちが大切です。

  • ただし、あまりにも長い期間、ネガティブな感情が強く出てしまっている場合は、一人で悩まずに周囲の人に相談して、早めに専門家を受診してください。

  • また、周囲の人は母親を心身両面から支えるようにします。早く帰宅して育児を手伝ったり、家事全般を引き受けたり、休みの日に数時間預かったり、愚痴を聞いてあげたりすることで、母親にも少しずつ気分に余裕ができ、笑顔が戻ります。

  • ただし、気分が落ち込んでいるときに「頑張って」「みんなできているのだから(だれでもやってきたこと)」といった言葉を不用意にかけないように気をつけてください。

  • ※本ページに記載されている情報は2021年3月31日時点のものです

  • 小川隆吉先生(小川クリニック 院長)

    監修者プロフィール 小川隆吉先生(小川クリニック 院長)
    医学博士、日本産婦人科学会専門医。1975年日本医科大学を卒業後、医局を経て1995年4月まで都立築地産院産婦人科医長として勤務。元日本医科大学産婦人科講師、日本産科麻酔科学会会員、日本胎児心臓病学会員、日本不妊学会会員。『HAPPY妊娠・出産ガイドBOOK』(ベネッセコーポレーション)の総監修を務めるほか、著書に『いちばんためになる はじめての妊娠・出産』(成美堂出版)などがある。
    https://www.ogawaclinic.or.jp

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