出産手当金・出産育児一時金は扶養内でももらえる?働き方別に解説
出産手当金・出産育児一時金は扶養内でももらえる?働き方別に解説
公開日 2019/08/28
更新日 2021/03/29

出産手当金・出産育児一時金は扶養内でももらえる?働き方別に解説

妊娠、出産、育児は幸せに満ちたライフイベントですが、経済的には大きな支出をともないます。この支出によって家計が大きなダメージを受けることなく、子どもを産み育てることができるよう公的な「給付金」が支給されます。今回は、出産によって受け取ることができる給付金について、「扶養」との関係も含めてわかりやすく解説します。

執筆: 國場 弥生(ファイナンシャル・プランナー)

出産でもらえる給付金の種類

  • 出産したときにもらえる給付金には「出産手当金」と「出産育児一時金」があります。それぞれみていきましょう。

  • 出産手当金

    「出産手当金」は、出産のために仕事を休み、その期間の給料がもらえない場合に支給される手当です。

  • 出産のために働くことができず、収入がストップしてしまう期間中も生活に困ることがないように生活費の一部を補てんする、という意味合いがあります。そのため、一定の条件を満たして働いている人だけが対象となります。

  • 1日あたりの出産手当金は、(1日あたりの)賃金の3分の2程度で、対象となる期間に何日仕事を休んだかによって、受け取ることができる総額が決まります。

  • 出産育児一時金

    病院や助産院での出産が一般的ですが、基本的には病気やけがの時のように健康保険を使うことができません。その費用負担を軽くするための給付金として「出産育児一時金」があります。

  • 健康保険に加入している本人が出産した場合も、加入者が扶養している家族が出産した場合も受け取ることができます。

  • 金額は、子ども一人につき42万円(※)です。

    ※産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は40.4万円

  • 「直接支払制度」を利用すれば病院へ直接支払われるので、一時的に自分で立替払いをする必要がありません。また、出産費用が出産育児一時金よりも少ない場合には、その差額を受け取ることができます。

  • 出産費用がないと焦らないで!出産育児一時金などの制度を紹介

出産育児一時金と出産手当金の違い

  • 出産育児一時金は、分娩費用など出産に関わる経済的な負担を軽くすることを目的としていて、出産手当金は、出産前後の期間働くことができないので収入が減って生活に困ることがないように補助するという意味合いがあります。

  • 出産育児一時金と出産手当金は名称が似ていることもあり混同しやすいので、一覧で確認しましょう。

    <出産育児一時金と出産手当金の主な違い>

    制度名出産育児一時金出産手当金
    受け取る人出産した本人又は家族が申請すれば受け取ることができる企業などで働いており、勤務先の健康保険等に入っている出産した本人が申請すれば受け取ることができる
    受け取る金額子ども一人につき42万円1日あたり賃金の2/3程度
    申請先・直接支払制度を利用する場合
    医療機関の窓口
    ・直接支払制度を利用しない場合
    (1)自身の勤務先または自身が加入している健康保険等の窓口
    (2)家族の被扶養者となっている場合は、家族の勤務先または家族が加入している健康保険等の窓口
    自身の勤務先または自身が加入している健康保険等の窓口
    申請期限出産日の翌日から2年出産のために会社を休んだ日の翌日から2年

    まず、受け取る人の条件に違いがあります。

  • 出産育児一時金は、原則として誰でも申請すれば受け取ることができますが、一方の出産手当金は、企業などで働いており、勤務先の健康保険等に入っている本人が出産した場合のみ受け取ることができます。主な条件は下記の2つです。

  • <出産手当金を受け取るための条件>

    ・出産する女性自身が企業などで働いていて、勤務先の健康保険等に入っている(正社員に限らずパートや派遣社員も含む)

    ・出産のために仕事を休んでいて、その間給料が支払われていない。または支払われている額が出産手当金の額を上回らない

  • 前述の通り、受け取ることができる金額にも違いがあります。

  • 出産育児一時金は、子ども一人につき42万円(※1)と決まっているのでシンプルですが、出産手当金は(1日あたりの)賃金の3分の2程度(※2)で、出産日(予定日の後に生まれた場合は出産予定日)を基準として、それ以前の42日(※3)~出産翌日以降56日目までの対象期間のうちに何日仕事を休んだかによって、受け取ることができる総額が変わるという複雑なしくみになっています。

  • 次に、申請先・申請期限の違いも確認しておきましょう。

  • 出産育児一時金は、直接支払制度を利用する際は出産する医療機関で手続きをします。利用しない場合は、本人の勤務先か加入している健康保険等の窓口、家族の被扶養者(※4)となっているなら家族の勤務先か加入している健康保険等の窓口で手続きをします。

  • 出産手当金は、自分の勤務先または自分が加入している健康保険等の窓口で手続きを行います。

  • 申請期限は、出産育児一時金は、出産日の翌日から2年、出産手当金は、対象期間のうち出産のために仕事を休んだ日の翌日から2年となっています。

  • いずれの場合も申請期限は長いものの、申請が遅くなるとその分給付金を受け取るのも遅くなってしまうので、可能な範囲で早めに申請することをおすすめします。

  • ※1産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は40.4万円

    ※2正確には下記の式で計算をしますが、ここではイメージしやすくするために簡略化しています

    支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

    なお、標準報酬月額とは、毎月の給料や交通費、残業代などの報酬を区切りのよい幅で区分したもので、給料から差引かれる保険料や出産手当金などの給付の基準です

    ※3ふたご以上の場合は98日

    ※4健康保険等に加入している人の配偶者や子、孫、兄弟姉妹で扶養されている人

  • 国民健康保険で出産手当金は支給される?出産育児一時金との違いを解説

働き方別に「もらえる給付金」を解説!

  • ここからは、働き方別に整理してみましょう。

  • 専業主婦が出産する場合

    出産育児一時金出産手当金
    専業主婦×

  • 専業主婦の場合は、出産育児一時金は受け取ることができますが、出産手当金は受け取ることができません。

  • パート・アルバイトで働く女性が出産する場合

    出産育児一時金出産手当金
    パート・アルバイト
    (自分の勤務先を通じて健康保険に加入していない)
    (自分の勤務先を通じて健康保険等に加入している)



    ×

    出産育児一時金は、パート・アルバイトとして働く女性も対象です。しかし、出産手当金については、勤め先を通じて健康保険に加入している(お給料から保険料を引かれている)人だけが対象です。

  • 会社員や公務員等の妻でパートやアルバイトとして働いている場合、年間の収入が130万円以下などの条件に当てはまると「被扶養者」として認定され、夫の勤務先を通じて健康保険に加入することができます。

  • 被扶養者の条件を満たすように勤務時間や収入を調整しながら働くことを「扶養の範囲で働く」などと表現することもあります。この場合、保険料を負担する必要がない点はメリットですが、自分自身が加入しているわけではないので、出産手当金を受け取ることはできません。

  • ちなみに、同じく会社員や公務員等の妻でパートやアルバイトとして働いている場合でも、勤務時間が長く収入が高くなると自分の勤務先の健康保険に加入する必要があり、この場合は出産手当金を受け取ることができます。

  • 勤務先の健康保険に加入する必要が生じるのは、週に30時間以上働いている、従業員が501人以上の企業に勤めていて収入が106万円以上ある、などの条件に当てはまる働き方をしているときです。

    扶養の範囲で働く?「150万円の壁」って?知っておきたい配偶者控除

  • 派遣社員として働く女性が出産する場合

    出産育児一時金出産手当金
    派遣社員

  • 出産育児一時金は、派遣社員として働く女性も対象です。

  • 派遣社員として働く女性の多くは、派遣元か派遣先を通じて健康保険に加入している(給料から保険料を引かれている)ので、出産手当金を受け取れるケースが多いでしょう。

  • はっきりしない場合は、派遣元にたずねるか、保険証の表面に自分の派遣元や派遣先の名称や所属する健康保険組合の名称などが記載されているかどうか、確認してみましょう。

  • 正社員として働く女性が出産する場合

    出産育児一時金出産手当金
    会社員
    (正社員)

  • 正社員として働く女性の場合、出産育児一時金も出産手当金も両方受け取ることができます。

  • 出産手当金の金額の例を紹介しておきましょう。ひと月の賃金が約30万円で、1日あたりの出産手当金が6,500円とします。それを出産前42日と出産後56日合わせて、98日間受け取る場合の総額はおよそ64万円という計算になります。

  • 自身のケースで概算金額を知りたい場合には、厚生労働省の委託を受けて運営されているWebサイト「女性にやさしい職場づくりナビ」にシミュレーションツールが用意されていますので、計算してみましょう。

  • フリーランスや自営業で働く女性が出産する場合

    出産育児一時金出産手当金
    フリーランス
    ・自営業
    ×

  • 出産育児一時金は、フリーランスや自営業で働く女性も対象です。

  • 一方、フリーランスや自営業の人が加入する健康保険(国民健康保険)には出産手当金が無いため(※)、受け取ることができません。

  • ※同種の事業や業務の従事者で組織された「国民健康保険組合」の場合は、組合ごとに異なります

  • 出産を機に退職した場合は?

    なお、これまで会社員や派遣社員、パート・アルバイトとして働いていたけれど、出産を機に退職して育児に専念するといったケースは、下記の条件に当てはまれば出産手当金を受け取ることができます。

  • <退職後も出産手当金を受け取ることができる条件>

    ・退職するまでに被保険者期間、つまり勤務先の健康保険に加入していた期間が1年以上ある

    ・退職するまでに出産手当金を受け取り始めているか、受け取る条件を満たしており退職日に出勤していない

  • はっきりわからない場合は、退職前に加入している健康保険の窓口に問い合わせてみましょう。

  • 出産後には、長い子育て期間が待っています。経済的な面では、進路にもよりますが教育費を含めた子育てにかかる費用は決して小さくありません。出産時から、給付金など公的な支援をしっかり活用し、長期的な資金計画を立てられるとよいですね。

  • 子どもが産まれたらやらなきゃいけない!お金の手続きリスト

  • ※本ページに記載されている情報は2021年2月28日時点のものです

    ※ページ内の表はすべて筆者作成

  • 國場 弥生(ファイナンシャル・プランナー)

    執筆者プロフィール 國場 弥生(ファイナンシャル・プランナー)
    (株)プラチナ・コンシェルジュ取締役。証券会社勤務後にFPとして独立し、個人相談や雑誌・Web執筆を行っている。All Aboutマネーガイドも務めており、著書に「誰も教えてくれない一生お金に困らないための本 」(エクスナレッジムック)などがある。

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