

【小児科医に聴く】「育児ノイローゼ」対処法。薬はあるの?チェックリストも
「なんとなく、ずっと体調がすぐれない」。例えば熱はないのに頭が重い、寝込むほどではないけれど疲れが取れない……など。もしかすると、育児ノイローゼの症状かもしれません。
ここでは、育児ノイローゼの主な症状、子どもの年齢別に考えられる対処法、事前にできる予防法などをご紹介します。
「最近おかしいな」と思ったら、まずは最初のチェックリストで確認をしてみてください。
執筆:高橋 知寿(ライター)
育児ノイローゼの症状…「今すぐできる育児ノイローゼ度チェック」
当てはまると思うものに〇をつけてください。
1 最近、頭痛が頻繁に起こる
2 生理前ではないのにイライラが続く
3 ついつい食べすぎてしまう
4 あまり食欲がわかない
5 疲れているのになかなか眠れない、朝なかなか起きられない
6 今まで好きだった趣味などが億劫になってきた
7 つい感情的に子どもを叱ってしまうことが増えた
8 「子どもを産まなければ良かった」と思うことが多い
9 ちょっとしたことで涙が出てきてしまう
上記のチェック項目で1~6の項目にのみ1~2個など数個チェックがついた人は、日頃の育児の疲れなどが少したまっているのかもしれません。育児ノイローゼの心配はそこまでありませんので、しばらく様子を見ていいでしょう。
ただし1~6で複数チェックが付いた場合や7~9にチェックがついた人は、育児ノイローゼの兆候があります。家族、地域の保健センターなどに、できるだけ早めに今の症状について相談する・子どもと離れる時間をつくりしっかり休息するなど、対策をしてください。
子どもの年齢別・育児ノイローゼを引き起こしやすい要因
どんなシチュエーションが重なると育児ノイローゼになりやすいのでしょうか。子どもの年齢別に、具体例を紹介します。
0~1歳ごろ
「母乳が出ない」、「母乳が足りているか不安……」など、おっぱいについての悩みが重なると引き起こされがちです。
また「離乳食の進め方に不安」「子どもがなかなか食べない」など、食事に関する悩みも。
夜泣きが続き、思うように睡眠が取れないことから、心身ともに疲弊し育児ノイローゼになってしまうこともあります。
2歳ごろ
2歳になると自我が芽生え、ちょっとしたことにも「イヤ」と反応する、いわゆる「イヤイヤ期」が始まる子が多いといわれています。
正常な発達過程のひとつですが、以前はスムーズに終わっていた着替えや食事に手間取り、それがママのイライラにつながって育児に自信を無くしてしまうケースもあるようです。
イヤイヤ期の子どもと向き合う大変さを話したり、分かち合える人がいないことで、だんだんとストレスが溜まり、ノイローゼになってしまうことも。
また、0~1歳に比べて少なくはなりますが、2歳になっても夜泣きがおさまらない子もいます。その場合はママ自身の寝不足に加え「どうして2歳になっても夜泣きをするのか」「愛情不足だから夜泣きをするのか」など、我が子の発達への不安から精神的に不安定になることもあるようです。
3歳ごろ
この時期に下の子が産まれ、兄弟ができるママも多くいます。下の子のお世話に加え、上の子の赤ちゃん返りにも対応しなければならず、休む暇がなく疲れ切ってしまうママも。
さらに3歳は、幼稚園入園に向けてトイレトレーニングの仕上げを行う時期でもあります。「他の子はすでにオムツが外れているのにうちの子だけうまくいかない」、「幼稚園入園までにオムツがはずれなかったらどうしよう……」という焦りが原因となるケースも多く見受けられます。
以上のように、子育てを通して身体的に疲れていたり、やるべきことが多くて緊張し続けていたり、育児に自信が持てず「間違っていないかな」と、強い不安を感じながら生活をしたり…としていると、育児ノイローゼになってしまう可能性があります。
また、パートナーとの関係も重要。「頼りたいのに仕事が忙しくて頼れない」、「他の家のパパがイクメンだと羨ましく感じる」、「育児にかかわらず夫婦・パートナー間で意見の食い違いが多い」など関係性が芳しくないと、それが原因となって育児ノイローゼになることも少なくありません。
育児ノイローゼになりやすいタイプはあるの?
几帳面で細かい、他人のやり方が気になる、誰かを頼るのが苦手な「完璧主義」の方は、育児ノイローゼになりやすい傾向があります。
また、育児書や、病院で習ったとおりにできない…など、「真面目すぎる」方も注意が必要です。
もちろん、性格だけでなく、環境にも「なりやすさ」はあります。
育児の悩みや辛さを共有できる人がまわりにいない、育児について不安・わからないことを聞ける人がいない、などの場合も、育児ノイローゼのリスクが高まりますので、気を付けましょう。
「育児ノイローゼかな」と思ったら、どこへ行けばよいか
まずは地域の保健センターや子育て支援センターで、現在の症状や辛さなどを話してみましょう。
地域や、症状の重さによっても違いは出ますが、一般的にはお住まいの地域の保健師さんが、定期的に家庭訪問をしてくれるはずです。
育児の大変さを吐露できる・ゆっくりと話を聞いてもらえるだけで、症状が改善することもあります。
ただ、ママの様子や子育て環境などを確認し、保健師さんが「今のサポートだけでは改善が難しい」と判断した場合、心療内科や精神科の受診を薦められることもあります。投薬やカウンセリングで良くなる場合もありますので、すみやかに受診をしましょう。
また、「子どもが健康でいるには、ママが安定していることが大切」という考えのもと、一部の小児科でもママの悩みについて相談に乗ってくれます。
育児ノイローゼの診断基準は? 薬が処方されることはある?
仮に病院を受診した場合、「育児のノイローゼ」という診断名はないため、「うつ病」「心身症」という診断になるケースが多いかもしれません。
ただしママの症状や状況、医療機関によって診断基準が異なるので、一概には言えません。
ただ、医師が「薬が必要」と判断した場合、精神安定剤や睡眠導入剤、抗うつ剤などが処方される場合もあります。授乳中の場合は、そのように医師に伝え、指示を仰いでください。
今日からできる育児ノイローゼの予防法
誰にでも可能性のある育児ノイローゼですが、事前に対策を講じておくことで、深刻化を防げる場合も。今日からできる予防法を紹介します。
まずはパートナーとの関係をスムーズに
調子が悪い時に、そのことを伝え、協力してもらえる相手がいることは大変心強いもの。特に夫(パートナー)との関係がスムーズだと、育児ノイローゼ防止につながります。夫婦関係をスムーズな状態に保つには、日ごろからこまめに二人で話し合う、きちんと言葉にして相手に伝える習慣をつけておくことがポイントです。
子どもが生まれると、夫婦二人の時間を確保することも、じっくり腰を据えて会話することも、かなり難しくなってしまいますが、まずは一日の出来事を共有する時間を持つなど、小さなことから始めてみてください。
自分なりの気分転換の方法を見つけておく
「子どもが昼寝している間に、大好きなスイーツを食べる」、「夜の寝かしつけが終わったら、大好きなドラマを観る」なども立派な気分転換です。自分のための小さなごほうびを色々用意したいですね。
また、ひとりで外出する時間を確保するのも大事です。子どもが大切だからこそ、時に子どもから離れて、自分の気持ちや好みを最優先し、リラックスして過ごすことも必要です。夫(パートナー)や家族に子どもを見ていてもらう、それが難しければ地域の一時保育などを利用して、ひとりの時間を確保しましょう。
悩みや不安を分かち合える人を見つける
子育ての悩みや辛さ、モヤモヤは、人に話すだけでもかなりスッキリします。
同じくらいの歳の子どもを持つママでもいいし、子育て経験のある先輩や、自分自信の兄弟姉妹でもいいと思います。子育てについて、気軽におしゃべりできる相手を見つけておくと良いでしょう。
他の子やママと比べない
初めての子育てだとどうしても他の子と我が子を比べ、「成長が遅い」、「同じくらいの月齢なのにうちは○○ができない……」と、悩み、そこから心が不安定になってしまうママも少なくありません。
乳幼児期の発達は個人差が大きく、早いからOK、遅いからNGということはありません。
他の子どもと比べるのではなく、昨日の我が子、3カ月前の我が子と比べてどう変わったかということを見るようにしましょう。
こまめにかかりつけの小児科医に相談をしておく
子どもの成長や発達で気になること・判断に迷うことがあったら、かかりつけの小児科医に相談を。かかりつけ医なら、いつもの子どもの様子から考えて、深刻な症状・発達上の問題なのか、そうでないかを見極められます。ママの中にある不安を早めに見つけ、取り去ることが、育児ノイローゼを遠ざけることにつながります。
小さなことでもなるべくこまめに、かかりつけ医に相談・情報共有をしておきましょう。
誰にでも可能性のある「育児ノイローゼ」。おかしいな、と思ったら早めに対処をしましょう。我慢をせずに、保健師やかかりつけの小児科医師など、専門家に相談をすることが大切です。子どもの健やかな育ちのためにも、親が心穏やかに過ごせるよう、安心できる環境で適度にリラックスして子育てをしていきたいですね。
※本ページに記載されている情報は2020年1月時点のものです
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監修者プロフィール クローバーこどもクリニック 院長 眞々田 容子先生
小児科医。2001年に信州大学医学部卒業後、同大学付属病院小児科、市立甲府病院、帝京大学医学部附属溝口病院小児科、賛育会病院小児科・新生児科医長を経て2015年にクローバーこどもクリニック院長に就任。
ママドクターとして、子どもの健康はもちろん、ママの育児の悩みにも寄り添い、アドバイスを行っている。