女医が解説「妊娠から出産まで」知っておきたい体の変化や手続きは?
女医が解説「妊娠から出産まで」知っておきたい体の変化や手続きは?
公開日 2018/04/27
更新日 2019/10/08

女医が解説「妊娠から出産まで」知っておきたい体の変化や手続きは?

妊娠中はホルモンバランスや体型の急激な変化により様々な不調が起こりやすくなります。生活も大きく変わり、出産や育児の不安のため心の不調に陥るママも少なくありません。また、無事に赤ちゃんとの対面を果たす前に、やっておかなければならない手続きもたくさんあり、おちおち休んでもいられません。

ここでは、妊娠から出産までにママの身体に生じる変化や、妊娠中にやっておくべき手続きについて解説します。

執筆・監修 成田亜希子(内科医)

妊娠初期(~妊娠15週)

  • 妊娠が分かってから安定期に入るまでの妊娠初期は、外見的な変化は少ないものの、急激なホルモンバランスの変化により体調を崩しやすい時期です。身体の中ではどのような変化が生じているのでしょうか?

  • 着床が成立!ホルモンバランスは急激に変化――妊娠3~5週ごろ

    受精卵が無事に着床を果たすのは妊娠3~4週ごろ。最終生理開始日を「妊娠0週0日」とするので、着床は次の生理予定日よりちょっと前に起こります。人によっては着床の際に生じる出血(着床出血)がみられることもあります。ちょうど生理予定日ごろにみられるので、普段から経血量が少ない人は「生理が来た」と勘違いしがちです。

  • 着床が成立すると、女性ホルモンのバランスが急激に変化します。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類ありますが、妊娠を維持するために両方の分泌量が急激に増加します。また、受精卵が子宮内膜に根付くための絨毛が急激に増殖し、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)と呼ばれる妊娠に特有のホルモンを分泌するように。そして妊娠5週を過ぎると生理の遅れを自覚して妊娠検査薬を使用し、妊娠しているか、していないかが判明することになるでしょう。

  • 妊娠検査薬は、尿中に含まれるhCGの有無を検知するものです。hCGは着床後に分泌が開始されるホルモンなので、「hCG陽性=妊娠の可能性が高い」と判断するわけです。hCGは着床直後ではごく微量しか分泌されませんが、徐々に分泌量が増えていくのが特徴。検査薬が検知できる量のhCGが分泌されるのは妊娠5週目、つまり生理予定日1週間後ごろです。妊娠4週から使用できる早期妊娠検査薬も販売されていますが、購入できるのは限られた薬局のみです。通常の検査薬を使う場合は、必ず使用時期を守って「フライング検査」をしないようにしましょう。

  • 赤ちゃんの心拍確認!つわりも出現?――妊娠6~15週ごろ

    妊娠検査薬が陽性になったら、妊娠している可能性が高いと考えられます。できるだけ早く産婦人科で正常妊娠か否かを診察してもらいましょう。個人差はありますが、エコー検査で胎嚢(赤ちゃんを包む袋)を確認できるのが妊娠5週ごろ、赤ちゃんの心拍を確認できるのが妊娠6週ごろとされています。

  • 無事に赤ちゃんの心拍が確認できたら、母子手帳を自治体指定の場所で発行してもらうよう担当医から指示があります。出産予定日が決まるのもこのころ。しかし、喜びも束の間で、どうしようもない吐き気や眠気などに襲われることも……。いわゆる、つわりです。その症状や発症時期は異なりますが、妊婦さんの5~8割でみられるとされています。

  • 母子手帳はどうやってもらう?

    母子手帳は、お住まいの自治体から発行されます。自治体により交付場所が異なるので、事前に調べておきましょう。また、交付には産婦人科から発行される「妊娠届出書」が必要です。妊娠届出書が発行される時期は医療機関により異なり、早ければ心拍確認後の妊娠6週ごろですが、多くは妊娠8~10週ごろとなります。母子手帳は妊娠中のママの状態や生まれた後の赤ちゃんの状態、予防接種歴などを記録する大切なものなので、忘れずに交付を受けましょう。

  • また、母子手帳と同時に14枚の「妊婦委託健康診査受診票」も交付されます。これは妊婦健診費用の助成を受けるために必要な補助券です。妊婦健診のたびに医療機関へ提出する必要があるので、健診時は忘れず持参しましょう。紛失したら再発行できない場合もあるので、出産を終えるまでしっかり保管しておいてください。

  • そして、仕事をしているママは、このくらいのタイミングで妊娠していることを職場へ報告しておくことをお勧めします。産休や育休時の業務の調整や人員補充なども必要になるので、できるだけ早めに伝えておいたほうがよいでしょう。

  • つわりはいつまで続く?

    多くの妊婦さんが悩まされる、つわり。吐き気、嘔吐、めまい、眠気、立ちくらみ、空腹感、微熱など症状は多岐にわたります。つわりの原因は、先にも述べたホルモンバランスの急激な変化だと考えられています。症状には個人差があり、中には水分すら摂ることができず重度の脱水症状を引き起こすケースも……。しかし、つわりが妊娠中ずっと続くのはまれで、多くは妊娠12週前後で自然に改善するとされています。つわりは病気でないとはいえ、症状が強く飲食がままならないときは、できるだけ早く産婦人科に相談してください。

  • 流産や奇形を防ぐには?

    妊娠初期は、最も流産しやすい時期です。流産は全妊娠の15%前後で生じ、その8割以上が妊娠12週未満だとされています。ただし、この時期の流産の原因は赤ちゃんの染色体異常がほとんど。「流産を避けるために安静にしなければ!」と思うママもいるでしょうが、この時期の流産の多くはママの生活とは関連しないので、神経質にならずゆったりした気持ちで過ごしましょう。

  • また、この時期は赤ちゃんの臓器や神経が作られる大切な時期でもあります。特に妊娠4~7週は「絶対敏感期」です。安易な薬剤やアルコールの摂取が、赤ちゃんの奇形などを引き起こすこともあるので注意しましょう。

妊娠中期(妊娠16~27週)

  • しっかりした胎盤ができあがる妊娠16週ごろから安定期に突入します。流産する可能性はさらに低くなり、ほとんどのママがつわりからも解放されるでしょう。体調の良い日が続き、アクティブにマタニティ生活を謳歌できる日々となります。赤ちゃんがどんどん成長してお腹も大きくなっていき、周囲の目からも妊婦さんと分かるようになります。ママは胎動を感じ、お腹の中で赤ちゃんを育んでいる喜びを感じやすくなります。ただし、次のようなポイントには注意が必要です。

  • 急激な体重増加に要注意

    つわりが治まって、急激に食欲が増してくることも少なくありません。妊娠中の急激な体重増加は妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクになるばかりでなく、産道に余計な脂肪が付いて難産の原因になることもあります。また、貧血なども起こりやすくなるため、適正カロリーを守った栄養バランスの良い食事を心がけましょう。体重管理や出産に向けた体力づくりとして、適度な運動もお勧めです。

  • 産休・育休に向けた引き継ぎの準備を

    体調が安定しているこの時期は、赤ちゃんを迎える準備を整えるのに最も適しています。妊娠中はいつ、どのようなトラブルが起こるか分かりません。後回しにせず、できるだけ早めに諸々の準備に取りかかりましょう。また、仕事をしている人は産休・育休に向けて業務の整理をしていく時期でもあります。産休・育休は女性の権利ですが、後を引き継ぐ人が困らないよう最大限の配慮をすることが復職後の人間関係を円滑にするポイントです。

妊娠後期(妊娠28週~)

  • 長かったマタニティ生活も、もうすぐ終わりを迎えようとする妊娠後期。お腹はますます大きくなり腹囲は90cm前後に。赤ちゃんは3000g前後にまで成長していきます。お腹が大きくなることで腰痛や骨盤痛などを引き起こしやすくなり、大きくなった子宮が周辺臓器を圧迫して、胃もたれ、便秘、頻尿などの症状に悩まされることも……。また、出産や育児への不安も大きくなる時期で、ママは気分が不安定になりがちです。

  • 産前休業には職場への申し出が必要

    労働基準法の規定により、働いている妊婦さんは妊娠34週(双子の場合は妊娠26週)から産前休業を取得できます。ただし、妊婦さん本人が勤務先に申し出る必要があります。母子手帳のコピーなど必要な提出書類は勤務先により異なるので、前もって準備しておきましょう。

  • 臨月を迎える前に入院の準備を整えよう

    「入院準備は臨月に入ってから」と思っている妊婦さんも多いようですが、妊娠後期になると切迫早産の発症率が高くなります。いつ入院することになってもよいように、入院に必要な荷物を早めにまとめておきましょう。切迫早産のケースでは、長い入院期間を経てそのまま出産となることも少なくありません。お産に必要な準備も整えておくとよいですね。

  • 里帰りは遅くとも妊娠32~34週ごろまでに

    里帰り出産をするママは、遅くとも妊娠32~34週ごろには里帰り先に移動しましょう。万が一、里帰り前に切迫早産の徴候がみられた場合は、里帰りできなくなることもあります。指示を無視して長距離移動すると、途中で産気づいてしまうことも……。妊婦健診を受けていた医師の診察を受け、何もトラブルがないことを確認した上で里帰りするようにしてください。また、妊婦委託健康診査受診票は自治体が変わると使用できなくなります。里帰り先で使うことはできませんが、後日に里帰り先で受けた妊婦健診の費用を助成してもらえることもあります。手続き方法などは事前に各自治体に確認しておきましょう。

  • お腹の張りや痛みが生じたら間隔時間を測ろう

    妊娠36週ごろからは、不規則な子宮収縮である「前駆陣痛」が生じるようになります。お産の始まりともいえる本格的な陣痛とは異なり、定期的に襲ってくる痛みや張りではありません。初めて出産するママは前駆陣痛を本陣痛と勘違いして慌てることもありますが、お腹の張りや痛みを感じたときはその間隔時間を測ってください。10~15分の間隔で定期的に痛みや張りが生じるようになれば、いよいよお産の始まりです。速やかに産婦人科に連絡してください。

  • 成田亜希子

    監修者プロフィール 成田亜希子
    2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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