【医師監修】妊娠中に風邪をひいたら?かかりやすい病気とは?
【医師監修】妊娠中に風邪をひいたら?かかりやすい病気とは?
公開日 2017/07/26
更新日 2019/09/25

【医師監修】妊娠中に風邪をひいたら?かかりやすい病気とは?

妊娠中は免疫力が低下するため、風邪をはじめとする感染症にかかりやすくなります。「単なる風邪」と甘く見ていると重症化することもあるため、早めの対処と普段からの予防を徹底することが大切です。ここでは、妊娠中に風邪をひいたときの対処法や予防法、妊娠前にしておくべき対策について詳しく解説します。

執筆・監修 成田亜希子(内科医)

妊娠中はなぜ風邪をひきやすくなるの?

  • 身体の中に入り込んだウイルスや細菌などの「異物」を攻撃して健康な状態を維持する「免疫力」。妊娠中は急激なホルモンバランスや体型の変化などに伴って様々な不調が起こりやすくなりますが、この免疫力が低下するのも特徴の一つです。

  • 妊娠中に免疫力が低下する理由は諸説ありますが、体内で育まれる赤ちゃんを「異物」として攻撃しないように免疫力が抑えられていると考えられています。また、妊娠中はつわりによる栄養不足や睡眠不足、ストレスなど免疫力に悪影響を与えるような生活になりやすいのも大きな原因です。こうして免疫力が下がると、普段なら攻撃されて排除されていたウイルスや細菌が体内で悪さをするようになるため、風邪をひきやすくなるのです。

妊娠中に風邪をひくとどうなる?赤ちゃんへの影響は?

  • 妊娠中に風邪をひいたからといって、即座に赤ちゃんに悪い影響を与えるわけではありません。風疹など特定の感染症は病原体が胎盤を通して赤ちゃんに感染し、流早産しやすくなったり、深刻な障害を残したりすることがあります。しかし、通常の風邪であれば病原体が赤ちゃんに感染することはないので、基本的には問題ないとされています。しかし、次のような症状がある場合は注意が必要です。

  • 38℃以上の高熱

    高熱が続くと妊婦さんの心拍数が上昇するため、赤ちゃんの心拍数も高い状態が続いたり、羊水が温まることで赤ちゃんの体温調節がうまくできなくなってしまう可能性があります。また、妊娠初期では流産や神経発達障害を、妊娠後期では切迫早産を引き起こすリスクが高くなるとのデータもあります。

  • 長引く咳

    妊娠中は免疫力が低下するばかりでなく、抵抗力も弱まりがちになるため、一度風邪をひいてしまうと重症化して気管支炎や肺炎を発症することがあります。このような状態になると頑固な咳が長引くこともしばしばで、咳をした際にかかる腹圧によってお腹が張りやすく、流早産のリスクを高める可能性が考えられます。

妊娠中に風邪をひいたときの対処法は?

  • では、妊娠中に風邪をひいたときにはどのような対処をすればよいのでしょうか?

  • まずは病院へ

    妊娠中は風邪をひきやすいだけでなく、風邪が悪化しやすいのも特徴です。重症化を防ぐためにも微熱(37℃台)、喉の痛み、鼻水、鼻づまり、咳など軽めの風邪症状のみがみられた場合でも、放置せずかかりつけの産婦人科に相談するようにしましょう。

  • また、妊娠前は軽い風邪ぐらいなら市販薬で様子を見ていたという人も、妊娠中はむやみに市販薬を飲むのは控えましょう。特に妊娠初期は赤ちゃんの身体ができあがっていく大切な時期です。薬には赤ちゃんの発育を妨げ、奇形や障害を引き起こしてしまうものもあるので、軽い症状であっても産婦人科で妊婦さんでも安心して服用できる薬を処方してもらうべきなのです。受診の際は、産婦人科には妊婦さんが大勢通院しているので、事前に電話で連絡しておく、マスクを着用していくなどの配慮もあるとよいですね。

  • 栄養を摂って身体を休めよう

    風邪をひいたときは、病院で治療を受けるのももちろん大切ですが、早く回復するようにたっぷりの栄養と休息を取ることが大切です。働いていたり、上のお子さんがいたりする妊婦さんの中には、ゆっくり休む時間が確保できない人もいるかもしれませんが、重症化するとお腹の赤ちゃんにも思わぬ影響を与えてしまうことがあります。家族と協力し合って身体を休める時間を作りましょう。

  • また、風邪の回復には身体を作るたんぱく質やビタミン類などをバランス良く摂ることも大切です。つわり中の妊婦さんも、できるだけバランスの良い食事を心がけるようにしましょう。

  • 水分補給をしっかりと

    妊娠中は、血液量が増えるため普段より多くの水分が必要です。風邪をひいて熱があるときなどは普段以上に脱水になりやすくなるため、こまめな水分補給をしましょう。妊娠中に水分不足に陥ってしまうと、めまいや立ちくらみ、頭痛など様々な症状を引き起こしやすくなります。風邪以外の症状でも苦しむことがないよう、1日に1.5~2L程度の水分を摂るよう心がけましょう。

妊娠中にお勧めの風邪予防法とは?

  • 妊娠中でも正しい予防対策を徹底することで、風邪をひくリスクを大幅に軽減することができます。普段から風邪対策をしっかりしていたという人も、妊娠中はさらに慎重に対策を講じていきましょう。

  • 手洗い、手指消毒

    風邪は、感染者から排出されたウイルスや細菌などの病原体が体内に入り込むことによって感染します。病原体が入り込むルートは様々ですが、最も多いのが手や指に付着した病原体が口や鼻から入り込むことです。これらのルートをブロックするには、石けんを使った手洗いと手指消毒が大切です。外出先から帰宅したときだけでなく、出先などであってもこまめに手洗いをする習慣を身に付けましょう。

  • マスクの着用

    風邪の病原体が体内に入り込むルートとして次に多いのが、感染者の咳やくしゃみのしぶきを吸い込んでしまうことです。しぶきは半径2mの範囲に飛散するとされているので、公共交通機関を使ったり、人出の多い場所に行くときはマスクを着用しましょう。

  • むやみな外出は控える

    風邪が流行っている時期は人ごみを避け、必要ない外出を控えるのも一つの方法です。どうしても外出しなければならないときは、空いている時間帯にしたり、タクシーを利用して不特定多数の人との接触を避けたりしましょう。

  • 乾燥した季節は加湿を

    風邪が流行しやすい秋から冬は空気が乾燥しがちです。実は、この「乾燥した空気」も風邪の原因になることがあります。というのも、私たちの喉や鼻には「線毛」と呼ばれる細かい毛が密生しており、体内に入り込んできた病原体をキャッチして体外へ送り出す働きをしています。つまり、線毛は免疫力を支える役割を持つのです。しかし、線毛は適度な湿度がないと動きが悪くなる性質があるため、空気が乾燥しやすい時期は病原体をキャッチしたり体外へ排出したりする働きが鈍くなります。線毛の状態を良好に保つためにも、室内は適度に加湿し、外出時にはマスクを着用して喉や鼻をガードするようにしましょう。

  • 予防接種を受ける

    毎年冬になると大流行するインフルエンザも風邪の一種です。妊娠中にインフルエンザになると重症化しやすいことが分かっており、肺炎などを併発することも少なくありません。インフルエンザは予防接種を受けることで発症や重症化のリスクを低減させることができるので、流行期間に妊娠生活を送る人は必ず受けるようにしましょう。

妊娠中に感染すると危険な感染症!事前に予防接種を

  • 適切な予防や対策を講じることで、妊娠中に風邪をひいたとしても大半は大事に至ることはありません。しかし、特定のウイルスや細菌による感染症の中には、赤ちゃんに障害が残ったり、流産や早産のリスクが高めたりするものもあります。特に、次の4つの感染症はワクチンを摂取することで感染を予防することができます。妊娠を希望する人は妊娠前に抗体の有無を調べ、ない場合は予防接種をしておくことをお勧めします。

  • 風疹風疹ウイルスによる感染症。発疹や身体のだるさ、リンパ節の腫れ、発熱などの症状があらわれます。妊婦がかかると赤ちゃんが「先天性風疹症候群」になる危険性が。
    麻疹「はしか」としても知られている、麻疹ウイルスが引き起こす重い感染症。子どもより大人のほうが重症化しやすく、抵抗力の下がっている妊婦はとくに注意が必要です。妊婦がかかると、流産、早産、子宮内胎児死亡の原因になります。
    流行性耳下腺炎「おたふく風邪」とも呼ばれている、ムンプスウイルスによる感染症。主な症状は、耳下腺という耳の下、頬のあたりにウイルスが侵入することで起こる炎症や発熱です。妊婦がかかると、流産の原因になります。
    水ぼうそう水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症。発熱と全身の水疱(水を含んだ発疹)が主な症状。日本での発症例はさほど多くありませんが、重症化するリスクがあります。また、赤ちゃんの先天性水痘症候群の原因になります。

  • 成田亜希子

    監修者プロフィール 成田亜希子
    2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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