【専門家に聞く】卵子の数が人より少ないと、どうなる? 「AMH検査」でわかること
【専門家に聞く】卵子の数が人より少ないと、どうなる? 「AMH検査」でわかること
公開日 2018/09/04
更新日 2019/09/27

【専門家に聞く】卵子の数が人より少ないと、どうなる? 「AMH検査」でわかること

妊娠をするうえで重要なカギを握る卵子。その卵子をチェックする「AMH(卵巣機能)検査」を知っていますか?
検査方法は採血するだけですが、「いったい卵子の何を調べる検査なの?」「巷でいわれている『卵子の老化』とかがわかるもの?」など、具体的に何を調べる検査かわからない人も多いと思います。

そこで、AMH検査でわかることとわからないこと、検査を受けるベストな時期などについて、梅ヶ丘産婦人科ARTセンター長の齊藤英和先生にお話をお伺いしました。
「今すぐじゃないけれど、子どもを産みたいな」と思っている人は、ぜひチェックしてみてください。

取材・文 高橋 知寿

AMH検査とは「残りの卵子の数の目安」を調べるもの

  • 編:最近、妊活している友人から「AMH検査を病院で勧められた」という話を聞いたのですが、「AMH検査」とはどんな検査ですか?

  • 齊藤先生(以下齊):卵子の周りの細胞から出るホルモンの一種である「アンチミューラリアンホルモン(AMH)」を測ることで、「自分が貯蓄している卵の数」をある程度推測する検査です。結果から「卵巣に残っている卵子の数が、何歳相当であるか」がわかります。

    値が低い人は、早く卵がなくなってしまう…つまり妊娠できる可能性が低くなる、というリスクを知ることができます。2000年を超えてから、臨床に応用できるようになった検査で、採血だけで簡単にわかります。

  • 知っていた?卵子は減る一方で、増えることはない

  • 編:卵子の在庫のことなんて考えたこともなかったんですが、何歳ぐらいから減ってしまうのですか。

  • 齊:人間の卵子は、お母さんのお腹の中にいる胎児期(20週頃)が1番多く、700万個くらいあります。その後どんどん減り、生まれるときには200万個程度、生理が始まる思春期の頃には20〜30万個に。そして、閉経時にはゼロに近づきます。

  • 編:生まれた直後から凄まじいスピードで減っていくのですね……。増えるタイミングってあるんですか。

  • 齊:残念ながら卵子は、ママの胎内にいる時期だけしか作られないので、途中のタイミングで増やすことはできません。

    10代は体が未成熟ゆえのトラブルが多いので、女性としての体が成熟する20代に入る頃が、一番妊娠にいい時期ということになります。

    排卵される卵子は基本1つですが、1つを排卵するのに卵が1000個以上使われるんですよ。つまり、毎月生理が来るたび、大量の卵子が減っているというわけです。

    ちなみに排卵された卵子の寿命は6~12時間。その時間内に精子と出会い授精し、子宮内に着床すると妊娠が成立します。

  • 編:1回の排卵で1000個以上も!?てっきり、1個だけだと思っていました。自分の卵子の在庫が気になってきました。

「AMH値が高ければ妊娠しやすいから安泰」ではない!

  • 編:自分のAMH値ですが、血液検査をしなくても「高い、低い」の予測ってできるものなのでしょうか。

  • 齊:患者さんの中には、「今まで婦人科系のトラブルはなかったので、私の卵子は丈夫そう」と、思い込んでいる方もいるようですが、生理痛の有無や見た目だけではAMH値の高い、低いはわかりません。採血してきちんと調べてみてください。

  • 編:一般的にAMH値が高いのはどんな人ですか。

  • 齊:年齢が若いほどAMH値は高く、年齢が上がると低くなりますが、ただ、気をつけたいのが「個人差がとても大きい」ということ。25歳の人でも、49歳と同じくらいの数しか卵子を持っていない人もいます。一方、44歳でも、30歳半ば相当の卵子の数の人も。また、20代後半になると、10%くらいの人はかなり厳しい数値になっているという報告もあります。

  • 編:AMH値が高ければ、妊娠できるチャンスは多いと考えていいのでしょうか?

  • 齊:確かにAMH値が低い人よりも妊娠のチャンスが多いといえますが、妊娠するには、卵子の数だけでなく、「質」も大切なのです。

「質の良い卵子」とは妊娠する力のある卵子

  • 編:「質が良い卵子」ってどんな卵子でしょうか。

  • 齊:ここでいう「質の良い卵子」とは、妊娠する力を持っている卵子、老化の進んでいない卵子ということになります。

  • AMH検査では卵子の質まではわからない

    編:AMH検査で卵子の「質」もわかるのですか?

  • 齊:質は基本的にはどんな検査でも測れません。ちなみに質と数は関係がなく、「多いから質がいい、少ないから質が悪い」とは言えません。

  • 編:卵子の質をあげる方法はあるのですか。

  • 齊:残念ながら今のところ卵子の質を上げる方法や、老化した卵子を若返らせる治療、薬などはありません。

  • 一般的に年を重ねるほど卵子は老化し、質は落ちると言われています。

    先ほども述べたように卵子は、母親の胎内にいる間に作られ、それ以降は増えません。個人差もありますが、一般的に40歳の時の卵子より25歳の時の卵子の方が老化していない・質が良い卵子=妊娠する力が高いと推測できます。

  • 編:そうなんですね。では、できるだけ卵子を老化させないために、どうしたらいいのでしょうか。

  • 齊:「これ!」という確実な方法はないのですが、タバコはすわない、バランスのいい食事を心がける、ストレスをためないよう生活することは、大きな意味で健康を保つために大切なことなので、心がけたほうがいいでしょう。

AMH値が低かった場合は、早めの妊活も検討を

  • 編:AMH検査を受けて、値が低かった場合はどんなことを意識すればいいのでしょうか?

  • 齊:将来子どもを持ちたいという希望があるのにAMH値が低い場合は、早めに妊活のアクションを起こしたほうがいいですね。AMHが低くても、きちんと排卵していればちゃんと妊娠できます。卵子が排卵したあと、妊娠するかしないかは卵子の質が大きくかかわってくるので、AMH値が低くても高くても妊娠率は変わりません。

20歳を過ぎたら一度は検査をしよう

  • 編:AMH検査はいつ頃受けるのがベストでしょうか。

  • 齊:そうですね。できれば結婚の予定がなくても「いつか子どもを産みたい」と考えているなら、20歳を超えたら一度、検査を受けておくといいでしょう。

  • 早めに検査を受けていれば、AMH値が低かったとしても「早めに子どもを産もう」と、意識することができます。

  • また、理由はわかっていないのですが、AMH値が急速に下がったりする可能性もあります。また、「今よりも3年後は確実に数値が下がる」という臨床報告があるので、一度検査を受けたからOKではなく、3~5年に1回は受けるといいでしょう。

  • 編:普通の産婦人科でもすぐに検査をしてもらえるものですか。

  • 齊:不妊診療を行っているクリニックなら、すぐ検査してもらえるところが多いでしょう。ただ、普通の産婦人科や産科だと、すぐにできない可能性があります。前もって医療機関にAMH検査をやってもらえるか確認した方がいいでしょう。

AMH検査とともに、将来子どもを産むために今からできること

  • 「いつか子どもを産みたい」と考える人にとって、AMH検査と共に、やっておくと良いことについてお聞きしました。

  • ライフプランを考えよう

    編:さきほど先生のお話に「子どもを産むなら、体の機能的に20代が理想」という話がありましたが、今の20代の女性は仕事に夢中になっている方が多いですよね。

  • 齊:そうですよね。確かに若い時に仕事のキャリアを積むことも大切ではありますが、20代は体の機能的に妊娠、出産するのにベストな年代でもあります。

  • 今の社会的背景や会社の制度によって、ご自身の仕事の状況やキャリアの形成の方法も違いますが、仕事だけでなく「いつ産んで育てるか」を自分の人生の計画表にあらかじめいれておくことが大切です。

  • 今は、新入社員向けの健康診断の一環で、このAMH検査を行っている企業もあり、会社側の女性社員のサポート体制も変わりつつあるようです。

  • ちなみに19~26歳だと1番いいタイミングで成功すれば5割近く妊娠しますが、27~34歳だと4割、35~39歳だと3割と、妊娠率は20代後半から下がってきます。

  • たまに「体外受精すればいいから高齢妊活でも大丈夫」と勘違いしている人がいますが、体外受精をしても高齢になればなるほど妊娠しづらいです。不妊治療は想像以上に時間やお金が割かれるもの。子どもを産みたいと考えるなら、できるだけ若い時期が望ましいでしょう。

  • 婦人科系の健康状態をチェック

  • 編:今は30代で産む人が周りにも多いので、「自分も子どもを産むのは30代になってからかな」と思っていました。

  • 齊:母親が高齢になると卵子が老化し、質の良い卵子が少なくなる傾向にあります。そうなると、途中で流産したり、ダウン症の子どもが生まれる率が高くなるなど、染色体異常の受精卵が多くなる傾向にあります。

    さらに、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病など妊娠中のトラブルや難産になるケースも増える傾向にあります。

    さきほども述べたようにAMH検査では卵の質はわからないので、こういった現状を考えるとできるだけ若いうちに妊活するのが望ましいでしょう。

  • 資料の出典元:資 料:Hook EB(Obstetrics and Gynecology 58:282-285, 1981) Hook EB, Cross PK, Schreinemachers DM(Journal of the American Medical Association 249(15):2034-2038, 1983

  • また女性は、高齢になると母体のがんリスクも高まります。

  • 意外と抜け落ちがちですが、「産んでゴール!」ではありません。そこからきちんと育て上げることが大切。つまり、お母さんが健康であることがとても重要です。

    生殖年齢である25〜40歳で増えるがんは、図からわかるように、乳がんと子宮がんです。がんを抱えながら、妊娠・出産をするというのはとても大変なことです。

    そのためには、20歳を過ぎたら、定期健診はきちんと受診をしてください。「子どもを産みたい」と思った時に健康でいられるようにしておくことが重要です。

    仕事面だけでなく、妊娠出産といった計画も含めた将来設計・ライフプランを立ててみることをおすすめします。

  • 生活を調え不妊のリスクを減らす

    編:むやみに焦るのはよくないですが、正しい知識をもとに、将来を真剣に考えることは必要ですね。その他、今からできることがあったら教えてください。

  • 齊:「妊娠に向けて今、できることがあるか」を考える気持ちが大切です。

    肥満、喫煙などは不妊のリスクを上昇させるので、今から改善するよう生活を見直しておきましょう。

    ジャンクフードばかりの偏った食事も妊娠に影響するといわれています。妊娠中や出産後もずっと健康でいるためには、今から栄養バランスを考えて食事をするようにしてくださいね。

  • AMH検査とは、妊娠を成立させるのに大切な卵子の在庫が、あとどのくらい残っているか目安を知ることができる検査です。

    採血だけでわかり、もしAMH値が低い場合は、できるだけ早めに妊活するのがいいでしょう。

    ただ妊娠するには、年齢とともに低下するといわれている卵子の「質」も重要。ただAMH検査では卵子の質までは残念ながらわかりません。

    今すぐでなくても「いつか子どもを産みたい」と考えるなら、できる限り早めの妊活が理想。そのために仕事を含めたライフプランを練っておくことが大切です。

  • 医学博士 齊藤英和先生

    お話を伺ったのはこの方 医学博士 齊藤英和先生
    梅ヶ丘産婦人科ARTセンター長。元国立成育医療研究センター、周産期・母性診療センター、周産期・母性診療センター不妊治療科所属。日本産科婦人科学会認定・産婦人科専門医、日本生殖医学会認定・生殖医療専門医。専門は生殖医学、不妊治療。内閣府「選択する未来」委員会や、企業、大学などで、日本の晩婚・晩産化、不妊対策について提言していた。著書に『妊活バイブルー晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(共著・講談社)、『「産む」と「働く」の教科書』(共著・講談社)など。

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