不妊治療にかかるお金は本当に高額?公的に保障されるのは、どこまで!?
不妊治療にかかるお金は本当に高額?公的に保障されるのは、どこまで!?

2018/02/15

不妊治療にかかるお金は本当に高額?公的に保障されるのは、どこまで!?

不妊治療にはお金がかかる、というイメージがありますが、それはなぜなのでしょう。
公的助成制度や公的医療保険による保障と自己負担、その線引きはどこに?
ご自身も不妊治療の経験があるというファイナンシャルプランナー、山口京子さんに聞きました。

取材・文:江尻亜由子、監修:山口京子(ファイナンシャルプランナー)

保険適用内だと思えるステップでも、細かい部分で適用外に

  • 不妊治療という言葉から想像される治療というと、人工授精や体外受精ではないでしょうか。それらは公的医療保険の対象とはならず、高額になりがちです。

    一方で不妊治療の中には、公的医療保険が適用されるものも。それは、子宮内膜症や精管機能障害に対する精管形成術など男女それぞれの疾病への手術や、排卵誘発剤などの薬物療法。

    これらは体に起きている異状(病気)への治療とみなされるため、基本的には保険の対象に。保険証があれば、その治療費は3割の自己負担に抑えられます。

  • まずは不妊治療の段階ごとに、公的医療保険や助成金制度の適用範囲について、基本的な考え方をご紹介します。

  • STEP1 不妊検査 → 公的医療保険対象内

    男性と女性どちらに不妊の要因があるのかを検査。女性は、基礎体温や血液中のホルモン値の測定、超音波検査、子宮卵管造影など。男性は精液検査で、精子濃度や運動率、奇形率などをチェック。「基本的には公的医療保険が適用されますが、血液検査は自己負担になるなど、細かい項目ごとで適用範囲が異なります」(山口京子さん・以下同)

  • STEP2 一般不妊治療

    (A)女性疾病、男性疾病の治療 → 公的医療保険対象内

    検査の結果、女性のほうに卵管癒着や子宮内膜症などの疾病、男性に精管機能障害が見つかった場合、手術などで治療。

  • (B)タイミング法(※) → 公的医療保険対象内

    排卵日を特定し、そのタイミングに合わせて性行為を行う方法。

  • (C)排卵誘発法 →公的医療保険対象内

    内服薬や注射により、排卵を促す方法。

  • (D)人工授精(※) → 自己負担

    良好な精子を取り出し、妊娠しやすい時期に子宮内へ注入する方法。

  • 「基本的に(A)~(C)までは公的医療保険の対象内。ただ(C)については注射をしないと排卵に至らない場合のみが適用で、卵子の量を増やす目的で行う場合は適用外となるのが普通です。しかし、同じ一般不妊治療でも(D)の人工授精は公的健康保険の対象外となります」

  • STEP3 特定不妊治療(生殖補助医療)

    (E)体外受精・胚移植(※) → 自己負担/公的助成補助あり

    卵子と精子を体外で受精させ、分割した卵(胚)を子宮内に移植する方法。

  • (F)顕微授精(※) → 自己負担/公的助成補助あり

    精子を体外で直接卵子に注入して授精させ、受精卵(胚)を培養し子宮へ戻す方法。

  • (G)凍結胚・融解胚移植(※) → 自己負担/公的助成補助あり

    卵子と精子を授精させた胚を、いったん凍結して次回以降の周期に子宮へ入れる方法。

  • ※のついた不妊治療内容について詳しくは「不妊治療の基礎知識」をご参照ください。

  • 「(E)(F)と(G)のうち一部の特定不妊治療については、一旦全額自費で支払う形となりますが、下記の条件を満たしていれば国による公的助成制度の対象に。1回あたり原則15万円、40歳未満なら通算6回まで支給されます」

  • 特定不妊治療への公的助成補助を受けられる条件

    ●医師の診断があること

    ●法律上の婚姻をしている夫婦

    ●治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満

    ●夫婦合算の所得額が730万円未満であること

  • 「夫婦合算の所得は額面ではなく、控除などを差し引いた後での合算額が730万円以下なら受給できます。また、国の制度とはいえ実際の運用は各都道府県や指定都市などです。詳しくは、厚生労働省のホームページで確認を」

  • また国の制度とは別に、市区町村が独自に定めて実施している助成制度も。

  • 「これは市区町村により制度に大きく差がありますし、各自治体での問い合わせ先も様々。治療を始める前は、居住地の市区町村のホームページ、保健所などで確認するのがおすすめです」

高額な特定不妊治療の治療費保障がされる民間医療保険も登場

  • 基本的には(C)までの治療は公的医療保険が適用され、自己負担は抑えられるはず。しかし実際の治療現場では、必ずしもそう割り切れない部分があるのが現実。

  • 「クリニックの方針によって、保険適用となる検査や治療も、公的医療保険を使わないことがあります。それは、保険でカバーできる範囲が少なく、自費診療であれば一度の検査や治療で期待できる効果が高いケースがあるからです。不妊治療は時間との戦いという側面もあるため、時間がかかりがちな保険対象となるステップを踏むのではなく、最初から自費診療の体外受精を勧めるクリニックもあります」

  • では、高額になるケースではどのくらいの金額になるのでしょう。

  • 「体外受精は1回で50~100万円ですし、遠方のクリニックなら交通費や宿泊費もかかります。100万円の治療を10回行えば1000万円以上に。それでも結局授からなかった方を知っていますが、長く続けるほど、やめ時がわからなくなるんです」

  • 不妊治療は周りの理解が得られづらく、孤独な戦いになりがち。「ここまでがんばったんだから、次は授かるかもしれない」と自分を追い込んでしまうのだそう。

  • 「ただ『NPO法人Fine~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会』が2013年に発表した調査結果によると、500万円以上治療費がかかった方は5%弱。約4割の方は、100万円以内です。私が知る中でも、一度の人工授精で妊娠・出産できたケースも。子どもは結局“授かりもの”。治療の期間も結果も、始めてみないとわからないんです」

  • そのため、高額化した場合に備えて民間の医療保険についても検討したいところ。不妊治療については(A)に対しては一部保障されますが、(B)以降については長らく治療費保障がされるものはありませんでした。しかし2016年秋に、(E)(F)の不妊治療を保障する民間保険が登場。

    現状では1社だけですが、今後はさらに選択肢が広がることが期待されます。

  • 「(A)についてどこまで保険金が出るかは、保険商品によって異なります。契約している民間医療保険があるなら、手術や入院、通院が保険金支払いの対象になるか、事前にコールセンターなどで確認してみましょう」

  • 実際に妊娠・出産を考えていないと実感がわかない場合もありますが、女性の出産年齢には限度があるのが現状。治療には時間がかかるため、まずは情報を集めるところから、早めの準備を考えましょう。

  • ファイナンシャルプランナー 山口京子さん

    お話を伺ったのはこの方 ファイナンシャルプランナー 山口京子さん
    フリーアナウンサーを経て、2000年にファイナンシャルプランナーの資格を取得。お金のプロとしての活動をスタートする。保険に精通しており、生命保険・損害保険・小額短期保険募集人資格も所持。セミナーやテレビ・ラジオ出演、執筆、個別相談など幅広く活躍。『お金に泣かされないための100の法則』(主婦と生活社)をはじめ、著書多数。

campaign注目のキャンペーン

related article関連記事