扶養の範囲で働く?「150万円の壁」って?知っておきたい配偶者控除
扶養の範囲で働く?「150万円の壁」って?知っておきたい配偶者控除
公開日 2019/05/30
更新日 2019/08/23

扶養の範囲で働く?「150万円の壁」って?知っておきたい配偶者控除

パート収入のある人、これから働こうと考えている専業主婦の人、そしてその配偶者(夫)はぜひ知っておきたい「150万円の壁」。これは、扶養する家族がいる人の税負担を軽減するための「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を受ける条件となるパート収入の金額を指しています。2018年にこの金額が引き上げられたことで、改めて注目される「150万円の壁」についてわかりやすく解説します。

執筆: 國場 弥生(ファイナンシャル・プランナー)

「150万円の壁」っていったいナニ?

  • パート収入のある人、これから働こうと考えている専業主婦の人、そしてその配偶者(夫)はぜひ知っておきたい「150万円の壁」とは、扶養する家族がいる人の税金の負担を軽くするための「配偶者控除」や「配偶者特別控除」(*1)を受ける条件となるパート収入の金額のこと。端的に言えば、妻のパート収入が150万円以下であれば、夫は配偶者特別控除を目一杯受けることができ、その分税負担が軽くなるという優遇制度です。

  • この制度では、収入が高い場合は税制優遇を受ける必要性が低いと判断されるので、夫と妻もそれぞれに収入の基準が設けられています。控除を受けて支払う税金が少なくすることができるのは収入の柱となる人(夫)で、給与収入「~1,120万円」、「1,120万円超~1,170万円」、「1,170万円超~1,220万円」の3段階に区分され、収入区分が低いほど控除額が大きく「38万円」、「26万円」、「13万円」(*2)となります(つまり、支払う税金が少なくなります)。

    妻側ではパート収入が150万円を超えると階段式に夫の控除額が減っていき、支払う税金は徐々に多くなります。

  • 家事や育児、介護などをこなしながら家計の助けとなるようパートで働く妻の立場からすると、働きすぎて税制優遇を受けられなくなるとしたら大問題。一定額以下に収まるよう働き方を調整するのか、越えていくのか、その選択の狭間にあるのが150万円の“壁”なのです。

  • (*1)ここでは夫が主に働き、妻がパートで働くことを想定していますが、配偶者控除や配偶者特別控除は夫だけでなく妻が受けることも可能です(例えば妻が主に働き、夫が専業主夫の場合)。また、控除を受けるには夫婦が生計を一にしているなどの条件を満たしている必要があります

    (*2)老人控除対象配偶者(70歳以上)は、48万円、32万円、16万円

  • <配偶者控除、配偶者特別控除を受ける人(夫)の給与収入帯*をクリック>

    【~1,120万円】の場合はAへ

    【1,120万円超~1,170万円】の場合はBへ

    【1,170万円超~1,220万円】の場合はCへ

    【1,220万円超~】の場合はDへ

    (*給与以外の収入はないものとします)

  • A【~1,120万円】配偶者控除、配偶者特別控除の上限38万円

    上の図にあるように、夫は、妻のパート収入が103万円までは「配偶者控除(38万円)」、150万円までは「配偶者特別控除(38万円)」を受けることができ、150万円を超えると段階的に控除額が減ります(つまり支払う税金が高くなります)。

  • B【1,120万円超~1,170万円】配偶者控除、配偶者特別控除の上限26万円

    上の図にあるように、夫は、妻のパート収入が103万円までは「配偶者控除(26万円)」、150万円までは「配偶者特別控除(26万円)」を受けることができ、150万円を超えると段階的に控除額が減ります(つまり支払う税金が高くなります)。

  • C【1,170万円超~1,220万円】配偶者控除、配偶者特別控除の上限13万円

    上の図にあるように、夫は、妻のパート収入が103万円までは「配偶者控除(13万円)」、150万円までは「配偶者特別控除(13万円)」を受けることができ、150万円を超えると段階的に控除額が減ります(つまり支払う税金が高くなります)。

  • D【1,220万円超~】配偶者控除、配偶者特別控除は受けることができません。

    ちなみに「配偶者控除」と「配偶者特別控除」は名前も役割も似ていますが、妻のパート収入103万円までに適用されるのが「配偶者控除」、103万円超~201万6,000円未満に適用されるのが「配偶者特別控除」となります。現行制度では、これら2つの控除を同時に受けることはできません(以降、まとめて「配偶者(特別)控除」と記載)。

  • 配偶者(特別)控除額

パート収入が150万円を超えても損ではない

  • 「150万円の壁」で損をしたくないと心配する声が聞かれますが、結論から言えばパート収入が150万円を超えても損をするわけではありません。上の図表にある通り、150万円を超えたとたんに税制優遇がなくなるわけではなく、緩やかな階段が設けられているので201万6,000円まで優遇が続きます。

  • 2018年の制度改正により、配偶者(特別)控除を受ける条件となるパート収入の金額が150万円までに引き上げられましたが、これは女性の労働力アップが社会的に大きく期待されている中で、一定以上働くことを躊躇させる(いわゆる就業調整)ような制度ではいけない、意欲的にたくさん働いてもらいたい、という国の方針の表れでもあります。配偶者控除や配偶者特別控除といった制度があること自体、女性が働こうとする気持ちを阻害するのではないかという議論もあり、今後は縮小・廃止の方向へ進む可能性もあります。

妻が正社員やフリーランスの場合は?

  • 妻が正社員として働いている場合も考え方としてはパートで働く場合と同じです。と言うのは、正社員もパートも勤務先から支払われるお給料を受け取っており、税金上どちらも同じ「給与収入」に分類されるからです。ただし、一般的にパートで働くよりも正社員で働く方が労働時間は長く、お給料も高くなると考えられるため、配偶者(特別)控除を受けられる可能性は低くなるでしょう(妻の収入が201万6,000円以上になると、夫は配偶者(特別)控除は受けられません)。

  • 妻がフリーランスなどの場合でも、夫は配偶者(特別)控除を受けることができます*が、この場合は金額の考え方が異なります。売り上げから経費を差し引いた「所得」が合計でいくらになるかを自身で計算し、その金額が38万円までは「配偶者控除」、85万円までは「配偶者特別控除」を受けることができます。85万円を超えると段階的に夫の控除額が減り、支払う税金が高くなります。つまりパート収入の「150万円の壁」はフリーランスの場合は「85万円の壁」となるわけです。

  • *配偶者控除や配偶者特別控除を受けるには、夫婦が生計を一にしているなどの条件を満たしている必要があります。

  • 妻がフリーランスの場合の配偶者控除、配偶者特別控除額

他にもあるさまざまな収入の壁

  • ここまでは配偶者(特別)控除を受けるための条件となる150万円の壁についてみてきましたが、同じようにパートで働く際に気になる“壁”はいくつも存在します。

    妻の収入が高くなることで夫が受けられなくなるものとしては、勤務先の企業が従業員のために実施している配偶者手当などがあります。企業ごとの規定にはなりますが、対象となる配偶者(妻)の年収上限100万円までなどと設けているケースがあります。

  • そして実質的に損をすることにはならない150万円の壁よりも影響が大きいのが、働く妻自身が社会保険料を支払う必要が生じる「130万円(106万円)の壁」でしょう。また、所得税や住民税を支払う必要が生じる「103万円(100万円)の壁」もあります。

  • パート収入が130万円を超えるようになると(従業員501名以上の企業のパートの場合は106万円)、それまでは夫に扶養されているため支払う必要のなかった公的年金や健康保険などの社会保険料を、勤務先と折半ではありますが、支払うことになります。例えばパート収入が年間135万円だとすると、社会保険料は年間19万円ほど*になるので、パート収入135万円よりも129万円の方が、手取額が多くなるといった逆転現象が起こってしまいます。ですが悪いことばかりではなく、社会保険料を支払うと老後に受け取る年金(老齢厚生年金)が増えたり、ケガや病気で働けなくなったときのための傷病手当金や産前産後の働けない時期のための出産手当金を受け取ることもできるようになり、メリットもきちんとあるのです。

     

    *プラチナ・コンシェルジュ試算。40歳未満、協会けんぽ(東京都)とする。

  • 所得税はパート収入が103万円(住民税は約100万円)を超えるとかかるようになりますが、超えた部分に対して計算されるものなので「103万円(100万円)の壁」の影響はそれほど大きくはないでしょう。

長い目で見ると壁の内側にとどまる方が損!?

  • 「150万円の壁」の他にも、「103万円(100万円)の壁」や「130万円(106万円)の壁」などがあり、パートで働くならどんな選択が最良なのかは複雑な問題です。家庭ごとに抱えるさまざまな事情とのバランスで、もっとも内側にある「103万円(100万円)の壁」を超えないように働くという選択肢ももちろんありえます。ですが、もしこの先も長く働いていこうと考えているなら、1年単位ではなく10年単位で考えてみてはいかがでしょう。今後こうした壁が変更されたり、廃止されたりしていく可能性がある中で、そのたびに働き方を小さくして、キャリアアップや収入アップの機会を逃してしまうのは、税金や社会保険料を払うことよりもずっと損なことではないでしょうか。

  • ※ 本ページに記載されている情報は2019年7月時点のものです。

  • 國場 弥生(ファイナンシャル・プランナー)

    伺ったのはこの方 國場 弥生(ファイナンシャル・プランナー)
    (株)プラチナ・コンシェルジュ取締役。証券会社勤務後にFPとして独立し、個人相談や雑誌・Web執筆を行っている。All Aboutマネーガイドも務めており、著書に「誰も教えてくれない一生お金に困らないための本 」(エクスナレッジムック)などがある。

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