

年収700万円世帯の手取りと税金。家賃や貯金など生活の実態も
「年収700万円」というと余裕がありそうな一方で、税金がたくさん引かれて手取り額は少ないのではというイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。
そこで、年収700万円稼ぐと税金をどれだけ負担することになるか、計算の仕方を説明します。
合わせて、税金などを引いた後の手取り額からどれだけ貯金をしているか、生活スタイルなど、年収700万円世帯の理想的なお金の使い方について解説していきます。
年収700万円の場合の手取り額は?
額面年収が同じでも、家族の扶養状況をはじめさまざまな要因で手取り額は異なりますが、年収700万円の人の手取り額は、おおよそ540万円~560万円程度です。
額面給与からは税金および社会保険料や雇用保険料が引かれます。社会保険料は加入する健康保険や年齢によって異なりますが、おおよそ年収の15%です。雇用保険料率は賃金の3/1000と決まっています。
配偶者と子ども(16歳)1人を扶養している会社員を例に、手取り年収をざっくり計算すると次表のようになります。
額面年収 手取り年収 700万円 541万円 710万円 548万円 720万円 553万円 730万円 562万円 740万円 569万円 750万円 576万円 760万円 583万円 770万円 590万円 780万円 597万円 790万円 604万円 筆者作表
年収700万円の場合の手取り月収額は、仮にボーナスなしなら約45万円、ボーナスが年2回(月給の2カ月分ずつ)なら約34万円、1回当たりのボーナス額は約68万円になる計算です。
年収700万円の税金の負担額は?
ここで、所得税や住民税の負担額について詳しく見ていきましょう。
所得税の税率と控除額
所得税を計算する際には1年間の収入から対象となる様々な所得控除を差し引きます。
ここで算出された金額を「課税所得」といい、課税所得に税率をかけて計算された金額が所得税の金額です(※1)。
(※1)実際には、税額控除といって、算出された所得税の金額からさらに差引くケースもあります。
所得控除は全部で15種類ありますが、代表例として次のようなものがあります。
・基礎控除
・配偶者控除
・扶養控除
・生命保険料控除
・住宅ローン控除
など
所得税率は「課税所得」の金額によって変わります。課税所得が上がれば税率も上がっていく仕組みで、これを「累進課税制度」といいます。
所得税の速算表
課税所得金額 税率 控除額 1,000円~1,949,000円 5% 0円 1,950,000円~3,299,000円 10% 97,500円 3,300,000円~6,949,000円 20% 427,500円 6,950,000円~8,999,000円 23% 636,000円 9,000,000円~17,999,000円 33% 1,536,000円 18,000,000円~39,999,000円 40% 2,796,000円 40,000,000円 以上 45% 4,796,000円 出典:国税庁「No.2260所得税の税率」を元に筆者作表
先に紹介した手取り年収計算に用いた配偶者と子ども(16歳)1人を扶養している年収700万円の会社員のケースで実際に計算してみましょう。計算するための諸条件は下記の通りとします。
〈ケース例:扶養家族あり会社員〉
・家族:専業主婦の妻と子ども1人(16歳)/他の所得控除なし
・年収700万円(給与以外の他の収入なし)
・給与所得控除:180万円
・所得控除:社会保険料控除105万円(※2)、基礎控除48万円、配偶者控除38万円、扶養控除38万円
(※2)社会保険料は年収の15%としています。
まず、給与所得の金額を計算します。
700万円-180万円=520万円
次にここから、各所得控除を差引き、課税所得額を計算します。
520万円-105万円-48万円-38万円-38万円=291万円
この291万円(課税所得)を上の所得税の速算表にあてはめ、所得税額を計算します。
291万円×10%-9万7,500円=19万3,500円
つまり、このケースでは、年間の所得税額は19万3,500円になります。
住民税(所得割)も同様に計算します。ただし、所得控除の額が所得税の場合と違っていたり、税率は所得に関係なく一律10%であったりと、所得税と住民税では違う部分もあります。
ここでは詳しい計算例は省略しますが、例のケースでは、住民税の所得割分の額は30万6,000円(※3)となります。
(※3)住民税は本来、前年の収入にもとづき計算する仕組みですが、ここでは前年の年収および所得控除は今年と変わらないものとします。
実はこれに加えて一定額が徴収される均等割というのもあります。
均等割は自治体ごとに金額が異なりますが、たとえば東京都の場合、個人都民税の均等割は1,500 円、個人区市町村民税の均等割は3,500 円(2020年現在)となっています。
つまり、例のケースでは、年間の住民税額は所得割と均等割を合わせた31万1,000円になります。
年収700万円の単身と世帯の割合は?
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2019年)によると、2018年の1年間を通じて勤務した人のうち、年収700万円台の人は約221万人、全体の4.4%となっています。
このうち、年末調整で配偶者控除および扶養控除を申告した人は約180万人です。
結婚していても共働きで配偶者控除を申告しないケースや子どもがいないDINKSのケースもありますが、年収700万円の人のうち8割以上は家族を扶養しているようです。
【家賃・生活費例】年収700万円世帯の場合
年収700万円世帯の生活レベルについて見てみましょう。総務省の家計調査をもとに年収700万円~750万円の世帯の1カ月の消費支出をまとめたのが下表です。
家計費目 金額 食費(外食含む) 80,160円 水道・光熱費 23,091円 通信費 15,100円 家具・家事用品 12,707円 被服・履物代 12,544円 保健医療費 13,206円 理美容費 8,261円 交通・自動車関連費 26,797円 教育費 13,842円 教養娯楽費 33,378円 交際費 10,823円 その他消費支出 29,133円 合計 279,042円 出典:総務省「家計調査・家計収支編/2人以上世帯/2019年」をもとに筆者編集・作表
実は上の生活費は住居費や仕送り金などを除いた金額です。というのも、持ち家、社宅、単身赴任などの事情によって住居費はまちまち。平均的な住居費を確認するのは難しくなります。
そこで、国土交通省「住宅・土地統計調査(2018年)」の年収別家賃データを参考にすると、年収500万円~700万円の世帯の1カ月当たり平均家賃額は6万8,283円。消費支出と合わせると34万7,325円となりました。
年収700万円の平均貯蓄額
先に見た消費支出の1年間合計額を手取り年収額から差し引くと、年収700万円の場合は年間約124万円余る計算になります。しかし、すべての人が124万円を貯蓄に回しているわけではないようです。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2019年)」を参考に、年収500万円~750万円の人の貯蓄状況をまとめたのが次表です。
2人以上世帯 単身世帯 貯蓄額 平均値 1,083万円 1,570万円 中央値 500万円 600万円 手取り年収からの貯蓄割合 9% 17% 出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2019年)」[単身世帯調査]および[二人以上世帯調査]をもとに筆者作表
これによると、年収700万円の人が1年間に貯蓄している金額は、2人以上世帯が34万6,500円、単身世帯が65万4,500円となる計算です。
参考にしたデータは「年収500万円~750万円」という大きな括りの平均ではありますが、貯蓄に回す額が案外少ないと感じる人もいるかもしれません。
知っておきたい節約・節税&貯蓄術
できるだけ節約につとめ、貯蓄を増やせるよう心がけましょう。たとえば次のような方法を検討してみてはいかがでしょうか。
・老後資金準備に個人年金保険を利用し、個人年金保険料控除を受ける
・教育費準備に学資保険を利用し、生命保険料控除を受ける
・iDeCoに加入し、小規模企業共済等掛金控除を受ける
・給与天引きできる財形貯蓄で先取り貯蓄をする
・つみたてNISAで定期的に積み立て投資をする
さまざまな視点で年収700万円の人のお金事情を見てきました。
年収700万円というと家計に余裕があるイメージを持つ人も多そうですが、その余裕が生活費に出てこない旅行やレジャー費などに反映しているのかもしれません。
優遇税制などを賢く利用しながら、引き締められる部分はしっかり引き締め、「使う」と「節約」、「貯める」のメリハリをつけられるといいですね。
※本ページに記載されている情報は2020年11月9日時点のものです
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執筆者プロフィール 續 恵美子(女性のためのお金の総合クリニック認定ライター。ファイナンシャルプランナー〈CFP(R)〉)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
エフピーウーマン(https://www.fpwoman.co.jp/)