【FP解説】パートやアルバイトが社会保険の加入条件や注意点
【FP解説】パートやアルバイトが社会保険の加入条件や注意点
公開日 2020/04/17
更新日 2020/08/26

【FP解説】パートやアルバイトが社会保険の加入条件や注意点

2016年から、徐々に社会保険に加入できるパート社員の範囲が広がっています。すでにパートで働いている人のなかには、社会保険に加入することにした人もいるかもしれませんし、配偶者の扶養に入ったままでいたいと考える人もいるようです。実は、社会保険に加入することにはそれなりのメリットもあります。
今回は、パート社員に社会保険加入をおすすめする理由を説明します。

執筆:續 恵美子(ファイナンシャルプランナー)

パートやアルバイトが社会保険に加入できる条件

  • パートやアルバイトなどで働く人のなかには、敢えて収入制限をし配偶者の扶養に入る人もいますが、社会保険への加入対象となるかどうかの要件は実は法律で決まっています。この要件は2016年10月、2017年4月と段階的に変わってきており、今後も対象が拡大されることが見込まれています。あらためてきちんと確認しておきましょう。

  • 現在、パートやアルバイトなどで働く人のうち、社会保険への加入対象となる人は、

    (1)「正社員の4分の3の労働時間(約30時間) 以上働く人」

    もしくは

    (2)「次のaからeまでの5つの要件すべてに当てはまる人」です。

  • a)1週間あたりの所定労働時間が20時間以上である人。

    20時間のなかに残業時間は含まれません。

  • b)1ヵ月あたりの決まった賃金が8万8,000円以上ある人。

    8万8,000円のなかに残業代や通勤手当、ボーナスなどは含まれません。

  • c)雇用期間の見込みが1年以上である人。

    当初の契約は1年未満でも、雇用契約書などのなかに契約更新される場合があることなどが明示されていれば1年以上働く見込みがあるとみなされます。

  • d)学生でない人。

    夜間、通信、定時制の学生は加入対象となります。

  • e)次のいずれかの事業所で働いている人。

    i)従業員数が501人以上の会社。

    ii)従業員数が500人以下で、かつ社会保険に加入することを労使間で合意がされている会社。

  • つまり、週当たりの労働時間が30時間以上である人は全員、20~30時間の間で働く人は給料の額や会社の規模によって加入可否が変わることになります。

  • 冒頭でも述べましたが、実は今後も加入対象者の範囲は広がる見込みです。政府は2020年3月3日に年金改革関連法案を閣議決定。国会で法案成立することが前提ですが、上記した要件のうち5番目の雇用する従業員数が変わります。

    予定では2022年10月に101人以上、2024年10月には51人以上の会社というように、人数要件が段階的に小さくなっていきます。現在でも労使間の合意がなされていれば、小規模企業で働くパート労働者も社会保険に加入できますが、今後は他の4つの要件を満たしていれば、中小企業で働くパート労働者も社会保険への加入が必須となりそうです。

配偶者の被扶養者として加入する健康保険と厚生年金

  • ひとくちに社会保険といっても大きく分けて「健康保険」と「厚生年金」があります。どちらの場合も要件を満たしていれば配偶者の被扶養者として加入することができ、自分自身で保険料を払っていなくても保障は得られます。

    しかし、自分が社会保険に加入するのと、被扶養者として加入するのではいくつかの違いもあります。それぞれの場合で見ていきましょう。

  • ・「健康保険」と「厚生年金」に共通

    自分で加入することになると、健康保険料と厚生年金保険料が給料から天引きされるようになります。健康保険は加入する健康保険(地域など)によって料率が異なりますが、健康保険と厚生年金を合わせて収入の約14%が保険料として引かれます。40歳以上の人はこれに介護保険料が加わり、約15%程度に上がります。

  • これまで扶養していた配偶者の給料から天引きされる保険料は、扶養から外れても変わりませんから、世帯全体でみると社会保険料負担が増えることになります。

  • ・健康保険

    扶養に入っている場合も、自分で加入する場合でも、医療機関で診療を受けたときに支払う自己負担額は変わりません。しかし、自分で加入することによって、要件に該当すれば「出産手当金」と「傷病手当金」を受給できるようになります。

  • 出産手当金は、産前・産後休業中に給料が支払われない場合に賃金の3分の2程度が支給されるものです。子どもが小さくパートで働いている人が2人目、3人目の妊娠で産休を取るようなケースは充分に考えられますから、収入が保証されることになれば安心です。

  • 傷病手当金は、会社員が業務以外の事由による病気やケガで働けず、会社を休んだときに給料が支払われない場合に賃金の3分の2程度が支給されるものです。3日以上休んだ場合の支給になりますが、病気やケガで会社を休むケースは誰にでもあるものです。この場合にも収入が保証されて安心です。

  • ・厚生年金

    扶養に入っている人は国民年金第3号被保険者ですが、自分で加入することによって厚生年金被保険者に変わります。公的年金は「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類の年金がありますが、自分自身が厚生年金被保険者になることで、3つの年金給付が充実します。

  • 具体的には、将来受け取る「老齢基礎年金」に加えて「老齢厚生年金」が支給されるため、トータルでもらえる年金の額が増えます。万が一、障害がある状態になり、日常生活を送ることが困難になった場合には「障害厚生年金」が支給されるようになります。

    また、万一自分が死亡した場合には配偶者に遺族年金が支給されるようになります。それぞれ支給要件はありますが、総体的に国民年金に比べて厚生年金のほうが、支給内容が充実しています。また、給付をうけるための要件も緩めとなっているのが特徴です。

社会保険に加入したい派?加入したくない派?

  • 自分が社会保険に加入することで、先に見たような経済的なメリットを得られる一方で、社会保険料が引かれることになります。たとえば月額給与が8万8,000円として、仮に健康保険と厚生年金を合わせた保険料率が14%とした場合、1万2,320円の社会保険料が天引きされることになってしまいます。決して小さな負担ではありませんから、遠い将来や万一のことよりも、今の手取り給料を重視したいという人もいるでしょう。

  • そのような人は加入要件を満たしていても、社会保険に加入したくないと考えるかもしれませんが、結論から言うと、そのようなことはできません。常時、従業員を雇用する国、地方公共団体または法人の事業所は、原則として従業員を社会保険に加入させなければならないことが法律で決められています。

    これは、パートなどの短時間労働者であっても同じで、先に見た要件を満たしている従業員には社会保険に加入させなければいけないことになっています。もしも加入させるべき従業員を加入させていない場合、その雇用者は罰せられてしまうのです。

  • もしも本当に加入したくないのであれば雇用者と相談の上、次のような方法が要されます。

  • (1) 労働時間を週20時間未満に減らす

    (2) 時給の安い仕事に変わって月額給与を8万8,000円未満にする

    (3) (現時点では)従業員数500人以下あるいは労使合意のない職場で働く

  • そもそも手取り給料を減らしたくないための対策ですが、これらの方法を取ってもやはり給料は少なくなりそうです。とくに(2)の方法のように月額給与を8万8,000円未満にするのであれば、社会保険の保障を充実させる方、つまり社会保険に加入して手取り8万8,000円未満にするほうが良いのではないでしょうか。

社会保険に加入することが今と将来の自分のため

  • 2020年4月からは、パートで働く人のなかには収入調整が難しくなる人もいるかもしれません。2020年4月から導入される「同一労働・同一賃金」はご存じでしょうか。

  • 日本政府は一億総活躍社会の実現に向けて、働き方改革をはじめさまざまな取り組みをしています。パートなどの短時間労働者が、働きやすくなる社会づくりもその取り組みのひとつで、「同一労働・同一賃金」はその一環です。

  • 同一労働・同一賃金とは、ざっくり言うと、法律のなかで雇用形態の違いによる不合理な待遇差を禁止するもの。たとえば、多くの会社では、給与水準は「能力または経験」、「業績または成果」、「勤続年数」などに基づくことを給与規定のなかで決めています。一方、パート労働者などの場合は「一律で時給○○円」とする会社も多く、そのような決め方をあらためなければならないというものです。

  • そのためにはパートで働く人も職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験など、就労状況が正社員と同じであることが求められますが、今現在の働き方のままで給料が上がることになる人もいるかもしれませんね。

  • 働く目的は人それぞれですが、働くなら意欲的に、自分の仕事に責任をもって働きたいと考えている人も多いはず。仮に労働時間が短くても、しっかり働いて、それに見合った給料をもらい、自分で社会保険に加入することが今と将来の自分のためになると思います。

  • パートとして働く人も、これからは社会保険に加入する人が増えてくるのは社会の流れかもしれません。加入することのメリットをしっかり理解するとともに、保険料負担にも応じられるようにしっかり働き、収入アップを目指していきましょう。

  • ※ 本ページに記載されている情報は2020年4月6日時点のものです

  • 續 恵美子(女性のためのお金の総合クリニック認定ライター。ファイナンシャルプランナー〈CFP(R)〉)

    執筆者プロフィール 續 恵美子(女性のためのお金の総合クリニック認定ライター。ファイナンシャルプランナー〈CFP(R)〉)
    生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
    エフピーウーマン(https://www.fpwoman.co.jp/

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