

【FP解説】リバースモーゲージとは?わかりやすく仕組みや金利と注意点を解説
リバースモーゲージ、って聞いたことがあるでしょうか。
これは「自宅を担保にして得るお金を、自宅に住みながら老後の生活資金などに活用できる方法」のことです。
例えば両親が自宅を持っている場合で、介護費用や生活資金が不足した時にこの方法が活用できる場合があります。
ただし、相続人全員の同意を得る必要があるなど、いくつかのハードルや注意点もあります。
そんなリバースモーゲージのしくみを見ていきましょう。
リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージを言葉の意味で見ると「リバース=逆の」「モーゲージ=住宅ローン」となります。通常の住宅ローンは最初に一括で借り入れて、その後分割返済をしますが、リバースモーゲージはその逆のしくみのことで、現在住んでいる住宅を担保に設定して、金融機関などから老後資金を借り入れる方法のことです。
リバースモーゲージの特徴は、契約者が死亡後に、担保にした住宅を売却することで一括返済できるため、元金を毎月返済する必要がない点です。毎月の支出は金利の支払いのみとなるため、毎月の支出を最小限にして、老後資金を活用できる制度といえます。また、金利も元金に含めてまとめて返済できるという金融機関などもあります。
若い世代も知っておくべき理由
老後の生活資金を目的とした制度ですので、若い世代には馴染みがないかもしれませんが、将来の自分たちの生活費の確保のための方法ということだけではなく、特に両親の生活資金や介護費用を考える上で、知っておくと役立つこともあります。
また、例えば子どもたちは全員独立して別の地域にマイホームなどを持っている場合、将来的に親の家の処分に苦慮する、ということも起こり得ます。こうした事態を解消する意味でもリバースモーゲージは活用できます。
リバースモーゲージの種類
リバースモーゲージは、国(=地方自治体)などが運営する公的な制度と、民間の制度の両方があります。民間でも金融機関によって、その種類や内容は異なります。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
国の支援制度としてのリバースモーゲージ
公的なリバースモーゲージ(不動産担保生活資金)は、国が認めた低所得者が使用できる支援制度となっています。
「不動産担保型生活資金……低所得の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金」
厚生労働省 生活福祉資金貸付条件一覧より
持ち家や土地があっても現金収入が少ない高齢者などが、居住している自宅を担保にして生活資金を借り入れる、という仕組みであり、主に、住み慣れた自宅に住み続けたい・かつ生活支援に資金が必要な高齢者に向けた制度といえます。
主な条件は、一戸建ての住宅で現在居住していることと、本人・夫婦・夫婦の親の世帯であること、そして、低所得者世帯であることなどです。公的制度であるため、こうした条件があります。また、貸付は月額(3か月毎)で月額30万円までとなっており、死亡時または融資期間終了時に、自宅を処分して返済することになります。
自分たちや、自分の両親などが老後の生活に困窮する事態となった時も、一戸建てを持っていると、この方法が使えることを知っておきましょう。
公的リバースモーゲージ(不動産担保生活資金)の概要 対象世帯 ・借入申込者が単独で所有している不動産に居住している世帯(同居の配偶者が連帯借受人となる場合は 配偶者と共有している不動産も対象となります。)
・世帯の構成員が原則として65歳以上
・世帯の構成が次のいずれかであること
(1)単身(2)夫婦のみ(3):(1)または(2)と借入申込者もしくは配偶者の親が同居
・世帯員の収入が市区町村民税非課税または均等割課税程度の低所得世帯(生活保護世帯および公的資金を借受中の世帯は、原則として貸付対象外)対象不動産(土地・建物) ・賃借権等の利用権及び抵当権等の担保権が設定されていない
・土地の評価額が概ね 1,500万円以上の一戸建て住宅(集合住宅は不可)
(貸付月額によっては1,000万円程度でも貸付対象となる場合があります)
(不動産の状況によっては担保にできない場合があります)貸付内容 ・貸付月額/30万円以内
・貸金交付/原則として3か月ごとに交付
・貸付限度額/担保となる士地評価額の70%
・貸付期間/貸付元利金が貸付限度額に達するまでの期間
・貸付金の利率/年3%または当該年度における4月1日 時点の長期プライムレートのいずれか低い方借り入れに必要な担保措置 ・不動産(土地建物私道)を担保にします
担保となる不動産に、根抵当権の設定(極度額は土地評価額の80% )と代物弁済予約のため所有権移転請求権保全の仮登記をします。
・連帯保証人が必要です
推定相続人※の中から連帯保証人が1名必要です。連帯保証人は借受人 と連帯して債務を保証します。
・推定相続人の同意が必要です
貸付契約を締結することに関し、推定相続人の同意を得るよう努めなければなりません。※東京都社会福祉協議会資料より筆者抜粋
使用目的は自由な金融機関が提供するリバースモーゲージ
金融機関のリバースモーゲージは老後のゆとり資金や、不足する老後生活資金などに活用でき、利用方法は比較的自由度が高くなっています。ただし、年金収入など「安定収入がある人」が対象となります。
現在では、多くの金融機関が取り扱いをしており、詳しい内容や条件は各金融機関によって異なりますが、契約対象者は55歳以上、または65歳以上などの高齢者となっています。
公的制度は生活困窮者のための制度ですが、金融機関等の提供するものはそれとは異なり、使用目的が自由である点も特徴です。
【使用目的の例】
・老後の生活資金や医療・介護費用
・.老人ホームの入居一時金
・自宅のリフォーム費用
・住宅ローンの残債の支払い
・.趣味やレジャーへの活用
・子どもへの生前贈与
なお、定年退職後でも住宅ローンが残っている場合などに、住宅ローンからリバースモーゲージに借り換えすることで、日々の返済金額を減額させることが可能という点も知っておくといいでしょう。
リバースモーゲージのメリットと注意点
最後に、リバースモーゲージには次のようなメリットと注意点がありますので、参考にしてください。
【メリット】
・毎月の支払いは利息のみです。
・元金の返済は、借入人が死亡した際に自宅の売却または現金での一括払いのどちらかを選べます(繰上返済も可能)。
・自宅に住み続けながら老後資金の借り入れができます。
・借入人が死亡した場合は、配偶者が契約を引き継げる金融機関が多くなっています。
・退職金や預貯金などの資金の減少を抑えながら、居住環境を確保できます。
【注意点】
・長生きすることで、最初に設定された融資限度額まで資金を使いきってしまう可能性があります。
・生存中に土地・建物の価値が下落すれば、融資限度額の見直しがされる場合があります。
・.変動金利となっていますので、金利変動によりリスクがあります。
・推定相続人の承諾が必要です。
・対象地域や担保住宅によって活用できないケースがあります。
いかがでしたでしょうか?ご自分の両親が家を持っている、という場合や、将来のご自分の老後についての参考としても、ぜひ知識のひとつとして知っておいてください。
※本ページに記載されている情報は2020年4月21日時点のものです
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執筆者プロフィール 森田 直子(保険ジャーナリスト)
保険・金融分野専門の執筆家で、庶民感覚のわかりやすい文体に定評がある。保険WEBサイト、保険会社ご契約のしおり、業界紙連載、書籍など執筆実績多数。大学講師や業界内外での講演など幅広く活動。保険業界メールマガジン『inswatch』発行人。書籍『保険営業で成長するための~無知の知のススメ』、『就業不能リスクとGLTD』、『あなたの保険は大丈夫?』など。