2020年に労働者派遣法が改正!同一労働同一賃金など基本をわかりやすく解説
2020年に労働者派遣法が改正!同一労働同一賃金など基本をわかりやすく解説
公開日 2020/02/28
更新日 2020/07/29

2020年に労働者派遣法が改正!同一労働同一賃金など基本をわかりやすく解説

2020年4月から、従来の3年ルールに加え、派遣社員と正社員の賃金格差を縮めようと、「同一労働同一賃金」の「改正労働者派遣法」が施行されます。これは派遣社員の方々にとってどんな変化をもたらし、どんなメリット・デメリットにつながるのでしょうか。

執筆:野原 亮(ファイナンシャルプランナー)

労働者派遣法とは

  • 労働者派遣法は、労働者派遣事業の適切な運営を確保するとともに、派遣労働者(以下、派遣)の保護を図ることで、派遣の雇用の安定や福祉の増進に資することを目的として定められた法律です。正式名称は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といいます。

  • 従来、派遣事業は、派遣元企業と派遣先企業が異なることから、労働者には、雇用主責任が不明確になりがちであり、「派遣」という労働形態は、正社員と比べて賃金水準が低い場合や、正社員の職に就けず不本意ながら派遣労働者として働き続けている人の割合が高いことも課題となっています。

  • そこで、2015年9月、労働者派遣法が改正されました。この法律は、派遣の保護や雇用の安定を目的として定められているため、受け入れる派遣先企業に対しても、派遣社員の待遇改善や正社員転換のための積極的な取り組みが求められています。派遣という働き方やその利用は臨時的・一時的なものであることを原則としつつ、派遣労働者のより一層の雇用の安定やキャリアアップを図ること、とされました。

  • ・労働者派遣法の概要

  • 派遣法では、派遣元・派遣先の企業それぞれについて、様々な責務を定めていますし、様々な禁止事項があります。

  • <派遣元の禁止事項>

    ・派遣禁止業務への派遣

    ・派遣先の不当な契約の解除

    ・派遣先による事前面接(紹介予定派遣のぞく)

    ・自社スタッフの離職後1年以内の派遣受入(60歳以上の定年退職者のぞく)

    ・派遣の期間制限(派遣先事業所単位・派遣個人単位ともに3年)

    ・期間制限の例外

    ※ただし、対象外のケース有

  • <派遣先に求められる事項>

    ・社会保険や労働保険の加入状況の確認

    ・派遣の受入体制の構築

    ・労働時間の適正な管理(時間外労働、36協定)

    ・派遣労働者と派遣先社員の均衡待遇の推進(賃金水準の情報提供・教育訓練の公平性・福利厚生施設の利用機会)

    ・派遣労働者のキャリアアップ支援(雇入れの努力義務・正社員の募集情報の提供義務・労働者の募集情報の提供義務)

  • ・2018年問題

  • 派遣法および労働契約法の改正の最初の影響が、2018年に出始めるという社会問題です。

    ・2012年に改正された労働契約法では有期労働契約の無期転換

    ・2015年に改正された派遣法では労働者派遣の期間制限を定めた3年ルール

    これらが適用された契約が2018年から満期をむかえ始めることから、かつての派遣を長期雇用したくない企業による、大量の雇い止めが懸念されています。

  • ・3年ルール

    2015年に行われた労働者派遣法改正では、派遣が勤続できる期限が3年間と定められました。この改正法は2015年10月1日に施行されたので、2018年10月1日以降、実際にその期限を迎えていきました。3年ルールにおける3年間の数え方には、「派遣先事業所単位」と「派遣労働者個人単位」の2種類があり、そのどちらも考慮しなければなりません。

  • 派遣で働く皆さまへ(厚生労働省):

    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000204879.pdf

  • ・労働契約の無期転換

    2012年に改正された労働契約法では、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者が申し込めば雇用者である企業は無期労働契約に転換しなければならないというルールができました。このルールは2013年4月1日以降に開始した有期労働契約から適用され、5年が経過して最初に労働契約の無期転換申込権が発生するのが2018年4月1日であるため、上記の派遣法の3年ルールと併せて2018年問題とされています。

  • ・無期転換の手続き

    無期転換の申し込みは労働者本人が行います。この申し込みがなされた場合、企業はこれを拒否することはできず、残存する有期労働契約が満了した日の翌日から無期労働契約になります。無期転換ルールは、あくまで契約期間を有期から無期に転換することを義務付けるルールであるため、転換したからと言って労働者が正社員になるとは限らず、企業側は必ず給与や待遇を正社員同様に引き上げなければならないというわけでもありません。

派遣法改正の目的「同一労働同一賃金」

  • 同一労働同一賃金とは、非正規・正規にかかわらず、同じ労働に従事する者は同じ賃金を受け取るという原則です。派遣は、会社を退職せず同じ派遣元に所属したまま、異なる派遣先に派遣されることがあります。派遣先の正規労働者に給与を合わせるのであれば、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わる可能性もあり、結果的に派遣給与が不安定になってしまう可能性があります。また会社規模によっては、仕事の難易度やポジションが上がったのに給与が下がってしまう、という事態が発生してしまうことは十分にありえます。派遣労働者個人のキャリア形成を考え、同一労働同一賃金のデメリットを考慮し、派遣元の事業主と被雇用者で、下記2つの方式のいずれかでの同意が必要になります。

  • ・均等・均衡方式

  • 均等・均衡方式は、労使協定を結んでいない場合や、雇用主が労使協定で定めた事項を遵守していない時に提供される方式。各派遣先から、「派遣社員と同じような仕事をする正社員の待遇情報」を書面で受け取り、それをもとに派遣社員の待遇を決めます。

  • ・労使協定方式

  • 労使協定方式は、労働者の過半数が所属する労働組合と派遣元企業の間で待遇に関する労使協定を結ぶ方式。「同じ地域で働く同職種の正規雇用者の平均以上の賃金」に設定します。

  • 派遣元の事業主が十分にこれらを周知・理解してないこともあるかもしれませんが、派遣社員の方もなるべくこの事実を把握しておく必要があります。

派遣法改正によるメリットと注意点

  • このように、派遣社員の方、が自分で把握しておくには一見難易度の高そうな事項が多くなっていますが、派遣法改正によって生じるメリット・デメリットを知っておくと、トラブルを未然に防げるだけでなく、生活や収入の安定にもつながるでしょう。特にお金の面では、派遣先企業に義務付けられた項目が5つあります。これらにより、明らかに派遣の賃金、退職金、交通費において、改善・改良がはかられるというメリットがあります。

  • ・教育訓練

    ・福利厚生

    ・福利厚生施設の利用

    ・派遣料金に関する配慮

    ・派遣会社への情報提供

  • いずれにせよ、同一労働同一賃金の原則により、派遣社員であっても正社員と同じ仕事であれば、両者は公正な待遇を受けることになります。特に通常支給されてこなかったかもしれない通勤手当や福利厚生関連、定期昇給の影響を受けられるようになるという待遇改善は、非常に大きなメリットだといえるでしょう。

  • さらに大きな待遇改善は退職金です。同一労働同一賃金の原則に則り、派遣社員の方も2020年4月からは退職金を受け取ることが可能になります。経験が考慮されるため、長くビジネス経験を重ねれば退職金の金額も増えていきます。退職金の受け取り方法に関しては、以下の3つの方法のいずれかを話し合いの上、決定することとなります。

  • ・勤続年数などで算出する一般的な退職金制度として支給

    ・時給に上乗せする「退職金前払い」

    ・中小企業退職金共済制度への加入

  • 待遇改善だけではなく自己防衛も

  • 派遣法の改正は、手放しで喜べることばかりではありません。今までなかった費用が増え、経営が厳しくなることも予想されます。業務の自動化の進展などもあいまって、人手不足であったはずが、派遣ニーズが減少する可能性も視野にいれておく必要があります。

  • それに備え、派遣社員であっても、同じ業務内容や同じ期間の経験を重ねれば正社員と同一の待遇を受けることができるという「同一労働同一賃金」の原則を最大限活用しましょう。退職金等の制度を持たない企業に所属する派遣でも、原則として退職金を受け取ることが可能になります。早め早めに将来の資金準備の対策を忘れずにやっておくことも大切でしょう。

  • 若年層を中心に働き方は多様化し、転職はもちろんのこと、副業という形態で個人が複数の仕事を持つというケースも出てきました。企業や組織に属さずに働く、フリーランスという働き方も定着しています。

    ただ、一つの企業に留まらずに働くということは、様々な職場で技術が身につき長く働き続けることができる可能性を高めると同時に、退職金があったとしても低い水準になってしまう可能性があります。老後の収入の柱にもなり得る退職金の給付ついては、転職を繰り返すと不利な面もあるということです。自分らの退職金の見込みや動向については、早い段階からよく確認しておきましょう。またこれを機に、普段は馴染みがないかもしれない就業規則についていったん目を通しておくことも良い経験になりそうです。

  • ※ 本ページに記載されている情報は2020年2月20日時点のものです

  • 確定拠出年金創造機構 代表 :野原亮(のはらりょう)

    執筆者プロフィール 確定拠出年金創造機構 代表 :野原亮(のはらりょう)
    ファイナンシャル・プランナー/公的保険アドバイザー/証券外務員1種
    明治大学政治経済学部経済学科卒業。現東証1部上場の証券営業、株式ディーラー・営業コンサル会社を経てFP(ファイナンシャル・プランナー)として独立。確定拠出年金やつみたてNISAなど老後の資産形成を通じて、お金に関する知識を生きる知恵として活用していく場をデザインしている。元手ゼロ円から始める「0円投資」に精通し、投資初心者を中心に学校では教えられないお金の授業を展開中。

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