

【FP監修】再就職手当の受給条件や計算方法は?パートや派遣でももらえるの?
仕事はずっとしたくても、一旦退職してしまうことってありますね。事情はさまざまありますが、結婚や出産など、家族の都合によっても働き方が変わることのある女性は、特にそうかもしれません。しかし、退職してから再就職するまでに気になるのがやっぱりお金のこと。失業したら雇用保険からの失業給付があることは知っていても、再就職したときにもらえる可能性がある手当のことは知らない人も多いかもしれません。
そこで、今回は雇用保険の再就職手当について、もらえる条件や金額の計算方法などについて見ていきましょう。
再就職手当が支給されるまでの流れ
「雇用保険=失業保険=失業したときにお金をもらえるもの」と思っている人は多いかもしれません。たしかに失業したときの失業給付はよく知られていますが、条件が合えば他にも支給されるものがあります。まずは失業から再就職までの流れに沿って整理してみましょう。
失業したら…
失業するまでの会社員時代に雇用保険に加入していた期間条件を満たす必要がありますが、失業した場合には「基本手当」が支給されます。ただし、基本手当が支給開始となる時期、支給される期間、および支給される金額は年齢、雇用保険の被保険者であった期間そして退職理由などによって異なります。たとえば支給される期間だけを見てみても、90日~360日と幅広い差があります。
再就職先を探す
前述の基本手当をもらうためには雇用保険の加入期間以外にもいくつか条件があります。そのひとつがハローワークで求職の申込みを行っていることです。基本手当は、就職する意思や能力があるにもかかわらず、「失業の状態」にある人に対して次の就職先を見つける間の「つなぎ資金」(生活費)的な意味合いで支給されるものです。失業してもすでに転職先が決まっている、専業主婦(夫)になるような場合、基本手当は支給されません。
再就職先が見つかり、再就職!
求職活動の結果、無事に次の就職先が見つかり再就職するとしましょう。基本手当を受給開始してから再就職するまでの期間によってはまだ基本手当をもらっていない場合や、もらえるべき日数分のすべてをもらっていない場合もあるでしょう。
再就職をすることによって、それまでもらっていた(あるいはもらえるのを待っていた)基本手当はもらえなくなりますが、いくつかの決められた要件に該当すれば「再就職手当」として一時金が支給されます。
再就職手当の受給条件
先に見た、失業から再就職までのステップの中でも説明しましたが、再就職手当の対象となるかどうかは、そもそも、基本手当の受給資格決定を受けていることが前提です。
そのうえで、再就職手当をもらうためには、次の条件をすべて満たさなければいけません。
1.失業保険受給の手続き後、7日間の待機期間を満了している
失業の理由に関係なく、基本手当の支給には受給手続きをしてから7日間の待機期間があります。この間に就職または自営業を開始した場合には再就職手当はもらえません。
2.基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある
基本手当の支給日数は失業の理由や年齢によって決められています。再就職時にその日数の1/3分以上が残っていることが必要です。たとえば、所定給付日数が90日分の人の場合はまだもらっていない期間として30日分以上残っていなければなりません。
3.退職した会社に再び就職していないこと
再就職手当は以前働いていた会社への出戻りでは支給されません。また、実際には働いていた会社とは違っても、子会社のように、その会社と資本金・資金・人事・取引面で密接な関わりがある会社への就職でも対象となりません。
4. ハローワークや人材紹介会社の紹介によって就職していること
自己都合退職や懲戒解雇で失業した場合、7日間の待機期間が終わってもすぐに基本手当が支給されません。これを給付制限といいます。給付制限期間がある人は、受給資格決定日から待機期間満了後の1カ月間内の再就職はハローワークや人材紹介会社の紹介で見つけた仕事でなければ再就職手当はもらえません。1カ月経過後は知人の紹介などによる再就職でも構いません。少しややこしいですが、次の図を参考にしてください。
出典:ハローワーク「再就職手当のご案内」
ちなみに、再就職手当は会社に就職する場合だけでなく、自営・起業などでも受給可能です。ただしその場合でも、1カ月間はハローワークや人材紹介会社で再就職先を探していることが必要です。
5. 1年を超えて勤務することが確実であること
再就職手当をもらうためには次の就職先での雇用契約が1年以上となっていることが条件です。たとえば派遣などで1年に満たない期間が定められており、その後の更新が見込まれない場合には対象となりません。逆に、契約期間が1年未満の契約社員や派遣社員でも、更新する見込みがあれば支給対象となります。
6. 原則、雇用保険の被保険者となっていること
自営業を開始する場合をのぞき、次の就職先で雇用保険に加入することが必要です。
7.その他
過去3年以内に再就職手当、または常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと。また、実は受給資格決定(求職の申込み)前から次の就職先への採用が内定していたという場合には支給されません。
契約社員・派遣社員やパートの人が再就職手当をもらえる支給条件
ところで小さな子どものいる方など、派遣やパートなどで働く人も多いと思います。働き方によって、基本手当や再就職手当の対象となるのかどうかが気になりますね。しかし、そもそも、雇用保険への加入は正社員に限られません。
契約社員や派遣社員、パートやアルバイトの人でも、条件を満たせば雇用保険に加入することになっています。失業前・再就職後ともに雇用保険に加入しており、これまで見たような失業から再就職までのステップを通し、すべての条件を満たしていれば受給することができます。
そこで、契約社員や派遣社員、パートなどの有期契約で雇用保険加入となる条件を知っておきましょう。原則として次の2つの条件どちらも満たす場合です。
・31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
・週20時間以上働くこと
自分が雇用保険に加入しているかどうかわからない場合は、まずは給与明細を確認してみましょう。給与や賞与から雇用保険料として保険料が引かれていれば雇用保険に加入しています。また、次の就職先で雇用保険に加入するかどうかわからない場合には会社の人事担当者などに確認してみるとよいでしょう。
再就職手当の計算方法と手続き
再就職手当は一時金で支給されますから、ケースによってはまとまった金額になることも考えられます。再就職手当をもらえる見込みがあるとなれば、やっぱり金額が気になりますね。
再就職手当の計算
再就職手当は基本手当の支給残日数が、本来もらえるべき日数(所定給付日数)の1/3分以上が残っていることが条件のひとつでしたが、どれだけが残っているかによって手当額計算に用いる率が変わります。
・所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:支給残日数の60%
・所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:支給残日数の70%
自分がどちらに該当するかを確認し、次の計算式に当てはめて計算してみましょう。
再就職手当の額=支給残日数×基本手当日額×給付率
たとえば、上の図の例で言うと、所定給付日数は90日分あるけれども、給付制限があって基本手当を受給できるまでに3カ月待たないといけません。この給付制限期間中に再就職をすると、基本手当はもらえなくなり、給付残日数は90日になります。
このような場合で、仮に基本手当の日額が4,000円だとすると、再就職手当は25万2,000円(90日×4,000円×70%)となります。
再就職手当の手続き
再就職が決まったら、ハローワークに就職の旨を報告しますが、だからといって再就職手当が自動的に支給されるわけではありません。再就職手当の支給申請は就職した日の翌日から原則1カ月以内に支給申請書を提出することが必要です。申請書の提出は本人または代理人がハローワークに出向くか、郵送でも構いません。就職すれば忙しくなるので、できれば就職が決まってすぐに手続きを終わらせておきたいですね。
もらった再就職手当はどう使う?
ケースにもよりますが、受給できる再就職手当はまとまった金額になる可能性もありますから有効に使いたいですね。
給付制限中だった人はそれまでの生活費として貯金を取り崩した人もいるかもしれません。その場合には、もらった再就職手当はそのまま貯金してもいいでしょう。
もしくは再就職をスムーズにスタートするために使うのもいいですね。これまで働いていた時の衣服がそのまま使える場合はいいですが、新しい就職先によってはビジネススーツなど身だしなみ用品を揃える必要もあるでしょう。新しい職場でキャリアアップしていくための勉強に使うのもおすすめです。
一旦退職したら再就職が億劫になる場合もありますが、再就職が早いほどもらえる手当も大きくなります。手当の内容をきちんと知って、再び活き活きと働いていけるよう、賢いキャリア形成のためのお金としてください。
※ 本ページに記載されている情報は2020年2月14日時点のものです
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執筆者プロフィール 續 恵美子(女性のためのお金の総合クリニック認定ライター。ファイナンシャルプランナー〈CFP(R)〉)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。
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