

【FP解説】年収に対して適正な家賃の割合って?家賃をおさえる方法も教えます
部屋を借りようと思ったら、エリア、広さ、間取り、など希望に合ったところに住みたいものです。でもその前に決めておかなければいけないのが家賃の予算です。一度賃貸の契約をしたら、住んでいる間ずっと家賃を払い続けなければいけません。安易に高い家賃の物件を契約してしまうと家計を圧迫しかねません。今回は、年収に対して適正な家賃の割合はどれくらいか? という質問に、手取りや家計全般からみた視点でお答えします。
執筆:橋本 絵美(ファイナンシャルプランナー)年収に対して適正な家賃の割合はどれくらい?
実は以前は、適正な家賃の割合は年収の1/3といわれていました。でも残念ながらそれは昔の話。給与が右肩上がりで、終身雇用が保証され、家賃補助や夏冬のボーナスも充実していた時代には、家族が増え、支出が増えたとしても家計が成り立っていたかもしれませんが、今はその考え方を当てはめるのは少々難しくなっています。現代では勤続年数とともに給与が増えるという保証がないケースも多く、かつ厚生年金保険料や健康保険料が上がったことで、年収は変わらなかったとしても手取りは減っています。
適正な家賃を年収で判断するのは避けよう
雇用形態や業績によって、ボーナスが出たり出なかったりする場合があるので、年収で考えるのではなく、月収で考えた方が無難です。また、月収からは、厚生年金保険料、健康保険料、所得税の源泉徴収税、住民税、雇用保険料などが引かれます。年収や月収ではなく“月々の手取り額”からどれくらいを家賃にまわせるか、という考え方をした方がよいでしょう。
住居費は「家賃+共益費等」で考える
最初は安く抑えるつもりでも、色々な部屋を見ているとだんだん気持ちが大きくなってきて、予算オーバーだけど、何とかなるかな!? と感覚が麻痺してくることも大いにあります。月々の手取りの1/3の予算で探し始めるのではなく、家賃と諸々の経費(共益費や駐輪場代等)を含めた住宅費の上限として、1/3よりも少し低めの金額から物件探しを始めましょう。
物件を決める前に考えて!必要な貯蓄と生活費
家賃は家計の固定費の中でも大きな割合を占めるものです。一度契約してしまったら、やっぱり家計が苦しい! と思っても初期費用や時間的な問題、手間などを考えるとすぐに安いところに引っ越すということも難しいでしょう。
物件によっては管理費や共益費、駐車場代、駐輪場代が必要な場合や、数年毎に更新料や保証金、火災保険料が必要な場合もあります。そのための貯蓄も必要になってきます。
将来のためにどれくらい貯蓄が必要か、理想の暮らしをするには生活費としていくら確保するべきか、ということを先に考えた上で物件探しを始めましょう。
まず行ってほしいのは、生活費としてどれくらい必要かをリストアップすること。何にお金をかけたいか、かけなければいけないか、は人によって異なります。自分の場合ここは外せないというところから金額を考えてみてください。
家族構成別に見る適正な家賃、貯蓄、生活費
家族構成によって、経済的な余裕やどうしてもかかってしまうお金には大きな差があります。家族構成別に家賃や貯蓄、生活費の予算を考える際のポイントを見ていきましょう。
ひとり暮らしの場合
日用品費や水道光熱費はあまりかかりませんが、自炊をしない場合には食費や外食費がかさんだり、趣味や娯楽費が多くなる傾向があります。お金の使い方のメリハリを意識するよう心がけましょう。家賃を少しでも下げることができれば、その分使えるお金は増えます。
ひとり暮らしのうちは、収入を全て自分のために使うことができますが、自由にできるうちに将来のための貯蓄をしっかりとしておくことが大切です。これから様々なライフステージが待っています。結婚や出産でお金が必要になったり、収入が減ってしまうこともあり得ます。仕事のスキルUPのために学校に通う、転職のために給与が下がる、といったこともあるかもしれません。そうした時にあのとき貯めておけばよかった……ということにならないよう、収入が少ないときでも先取り貯蓄をする習慣を身につけておきましょう。
共働き夫婦2人世帯の場合
共働き夫婦の場合は専業主婦のいる世帯や子育て世帯に比べて、経済的には余裕があることでしょう。しかし、夫婦別財布でお互いの収入は把握しておらず、双方が自由にお金を使っているという家庭も少なくありません。
部屋探しの際には、夫婦で住まい以外の将来について話し合っておくことが大切です。今後の家族計画や住宅購入についてどのように考えているのか、転勤や転職、独立などお互いのキャリアについてもしっかり話しておくのです。そうすれば、将来何のためにどれくらいお金を貯めておく必要があるのか、理想の暮らしにはどれくらいお金が必要なのかが明確になり、家賃に充てられる予算というものが見えてきます。
また共働きは、経済的な余裕から全体的に支出が増えがちです。日々の生活を楽しみつつも、将来のための貯蓄はお互いが把握できる形で先取り貯蓄を行い、その上で家賃について考えましょう。
小学生2人とパート妻のファミリー世帯の場合
世帯人数が増えると、食費や日用品費、水道光熱費などの基本生活費は必然的に高くなります。子どもがいると教育費もかかってくるため、どうしても必要な支出が多くなってしまいます。
物件選びの際には、子ども部屋を確保したい、広い家がいいといった希望もあるかもしれませんが、家計の全体的なバランスを考えて家賃の予算を設定しましょう。特に子どもが小学生の頃は教育費の貯め時です。塾代、受験代、学費と増えていったときに家賃が家計を圧迫しないよう先々を見据えておく必要があります。家族が多いと臨時出費も少なくありません。家賃という固定費を節約し、養育費や将来のための貯蓄を確保する方が先決です。
適正家賃に抑えたい方へ 家賃を抑える方法を教えます!
大きな固定費である家賃を低く抑えると、その分を貯金や他の費用に充てることができ、暮らしにゆとりが生まれます。では、家賃を節約するには、どのような方法があるのでしょうか。
優先順位をつけて妥協点を見つけよう
住まいに関する希望を全て叶えたいと思うと、どうしても家賃は高くなってしまいます。家賃を抑えるには「住まいについての優先順位」を決めて、妥協点を見つけなくてはいけません。
一般的に駅からの距離が離れている場合、築年数が経っている物件は安くなります。エリアを変えるだけで家賃が数千円違うということもあります。
エリア
広さ
築年数
階数
駅からの距離
スーパーやコンビニからの距離
などのうち、外せない点以外の部分で検索範囲を広げてみましょう。
家賃交渉をしてみよう
実は家賃は値下げ交渉をすることができます。応じてくれるかどうかは大家さん次第ですが、新規契約時や更新時には交渉してみてもよいかもしれません。
同エリアで築年数が同じくらいの似た条件の物件を探して相場を調べてみてください。相場より高い、空室期間が長い、引っ越しシーズン以外の時期といった場合は交渉しやすくなります。交渉の際には、希望の金額を明確に提示するようにしましょう。
公団住宅を探してみよう
通常の賃貸物件だけでなく、公団住宅も視野に入れてみましょう。
公団住宅は礼金、仲介手数料がなく、初期費用を抑えることができます。また更新料や火災保険への加入義務もありません。保証人を立てたり、保証会社を利用したりする必要がないので、手間も費用もかかりません。敷金は必要になりますが、別の公団住宅へ引っ越した場合、敷金を引き継ぐことができます。
公団というと古いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、タワーマンションやリノベーションマンションなどからも選ぶことができます。周辺に幼稚園や小学校、公園がある物件が多いので、子育て中にはぴったりかもしれません。
また、子育て割引や35歳以下の割引など、割引プランも充実しています。抽選となる物件も一部ありますが、ほとんどの物件が先着順です。「百聞は一見に如かず」ですから、一度ホームページをチェックしたり、物件を見に行ってみるとよいでしょう。
いかがでしたか? 部屋探しを始める前に抑えておくべきポイントについてお話ししました。家賃は最大の固定費です。適正な家賃に抑えるポイントは部屋探しを始める前に“理想の暮らしを実現するための生活費”と、“今後必要となる貯蓄について”を先に考えることです。
家賃は月収の1/3という上限を守るようにしましょう。家賃を抑える方法もぜひ試してみてください。収入と理想の暮らしに合った家賃でゆとりのある生活を送ってくださいね。
-
執筆者プロフィール 橋本 絵美
家計の窓口(ファイナンシャルプランナー)
ハピママlabo代表
福岡県出身。慶應義塾大学商学部卒。2男4女を育てるママFP。子ども=お金がかかるという考え方ではなく、子どもは宝であり、ママたちが安心してもう一人子どもを産めるようにサポートしたいという思いからFPとなる。お金とモノとの付き合い方を考え、お片づけプランナーとしても活動中。ご相談を受ける中で蓄えてきた知恵と自身の経験を生かし、“貯まる家計の仕組みづくり”と“子どもがいてもすっきり片付く部屋づくり”のアドバイスを行っている。