夫が突然、脳出血で倒れたとき、家族に降りかかったこととは【体験談】
夫が突然、脳出血で倒れたとき、家族に降りかかったこととは【体験談】

2018/01/18

夫が突然、脳出血で倒れたとき、家族に降りかかったこととは【体験談】

予期せぬ病に見舞われたとき、病状だけでなく仕事やお金などさまざまな難問が降りかかってきます。
一体、どんなことが起こるのか。2年前に夫が脳出血を患い、現在は在宅介護をしている妻の宮田涼子さん(仮名・50歳)に、当時の出来事についてうかがってみました。
治療方法や仕事、自身のメンタル部分、夫への具体的なサポート、そしてお金のことなど、予想外に大変だったこととは。

取材・文:中屋麻依子
  • 毎年、健康診断は問題ナシの夫が突然、脳出血で倒れる

  • 宮田さん夫婦(当時ともに48歳)が長年住んだ東京から新潟県に引っ越してきたのは2015年。夫の泰雄さん(仮名)は広告会社の営業をしており、所長代理として栄転したのがきっかけです。泰雄さんは仕事にかかりきりになり、深夜に帰ってくる毎日。

  • 「東京の頃より忙しそうにしていましたが、新天地での業務にやりがいを感じていたようで“疲れた”など愚痴を言うことはなく、むしろ楽しそうに働いていました」

  • そんな充実した日々を過ごしていた夫に異変があったのは新潟に来て3ヵ月経った頃。

  • 「この日は休日で夫は自宅にいました。私が午前中にパートに出かけて、夕方帰ってくると、座椅子から落ちて横になっていたんです。“寝ているのかな”と思い、声をかけると夫は何かを話しているのだけど、何を話しているのかまったくわからない状態。これは脳の病気かもしれないと思い、すぐに救急車を呼びました」

  • 宮田さん夫婦は新潟に来てから一度も病院に行ったことがなく、救急車に連れられるまま市民病院に入院。そのまま緊急手術となりました。10時間に及ぶ手術の後、右視床出血と判明し、医師からは「左半身に麻痺が残り、寝たきりになる」と宣告。この絶望的な状態を涼子さんはどう思ったのでしょうか。

  • 「信じられない気持ちが先立って、涙も出ませんでした。最初にしたことは、夫の携帯電話から会社関係者の番号を探し、現状を説明。当分、会社を休ませてもらうことを伝えました。手術直後は、体は動きませんが意識はあるようで何かを話したいけれど、何を言っているか分からない状態。不安ではありましたが、意識があることに少しホッとしました」

  • 悲しみにひたる間もなく手術翌日からリハビリがスタート。あまりの早さに涼子さんが驚いていると、「若いから早くリハビリをスタートさせることが重要」と作業療法士から言われたといいます。

  • 「最初はベッドの上で手や足を伸ばすなど簡単なものです。舌が麻痺して話しづらいのにリハビリ中も夫は“会社に行かないと”と言い続けていました。まだ、自分が大きな病気にかかったことは理解しておらず、ずっと仕事の心配ばかりしていましたね。入院中は遠方に住む娘や息子、そして会社の方、取引先の方など多くの方がお見舞いに来てくれて、夫も安心したようです」

会社と相談し有給休暇を2ヵ月使い、その後は休職扱いに

  • 涼子さんは泰雄さんの会社と話し合い、当面は2ヵ月の有給休暇を使い会社を休むことに。手術をした市民病院に3週間入院、その後、リハビリ治療をおこなう病院へ転院し5ヵ月の間、言語、作業療法、理学療法の3種類のリハビリに専念しました。

  • 「有給休暇期間が過ぎ、再び会社と話し合って休職扱いにしてもらえることになりました。リハビリがどれだけかかるのか、そもそも夫は動けるようになるのか…。そんな状態でも、解雇ではなく休職扱いにしてくれた会社には感謝しています。夫が加入する健康保険組合に傷病手当金の申請をして毎月の収入を確保。でも、月の医療費と同額ぐらいのため、生活費は私のパート代と貯金を切り崩しながらやりくりしていました」

  • 傷病手当金とは業務外の病気やケガで働けなくなった場合、その間の生活保障をしてくれる制度。1日につき標準報酬日額×3分の2を受け取ることができ、期間は支給日から1年6ヵ月となります。涼子さんのパートは市民病院に入院した3週間は休み、リハビリ病院に転院してからは午前中から夕方までパートを再開。夕方からは病院に行く毎日だったそう。ただ、収入は全体的に3~4割に減ったそうです。

医療保険の一時金が金銭面でも精神面でも助けてくれた

  • 共働き夫婦の収入減を助けてくれたのは民間の医療保険だった涼子さんはいいます。

  • 「大病を患って知ったのは“病気はお金がかかる”ということです。幸いにも、夫が倒れる数ヵ月前に民間の医療保険に入っていたため一時金が100万円降りて、とても助かりました。市民病院での手術・入院費が約14万円、リハビリ病院が1ヶ月分で約10万円。この費用も一時金で乗り越えました。これから一体、医療費がいくらかかるのかまったく分からず不安な中、まとまったお金が入るのは金銭面だけでなく、気持ちも楽になります」

  • ただ、予想外に家計を苦しめたのは交通費だったそう。

  • 「自宅から病院まで距離があったため、通院の際はタクシーを利用することが多かったのですが、片道2000円ほどかかります。また土地柄、冬は雪が降り積もるため夫を歩かせることが難しく、月に2万円の交通費が家計を圧迫していきました。暖かくなり夫が多少、歩けるようになってからは、帰宅はバスを利用するなど節約するようにしました」

ひとりで抱え込まず、病院の相談員のアドバイスに助けられた

  • 涼子さんを助けてくれたのはお金以外に、病院の相談員だったといいます。これまで無縁だった数々の申請、右も左も分からない涼子さんを支えてくれたそう。

  • 「受けられる保険や申請方法などを丁寧に教えてくれました。市に高額医療費の申請をしたり、通院だけでなく訪問リハビリやデイサービスも利用するには、障害者福祉サービスよりも介護保険のほうがメリットが大きいなどのアドバイスをいただけて本当に助かりました。我が家の状況も把握してくれてのアドバイスなので、話を聞いてもらえるだけで精神的に安心できたのもあります」

  • 退院後、在宅介護となった孝則さん。食事やお風呂の介助など、さまざまな苦労が涼子さんにのしかかります。メンタル面で押しつぶされそうになったことはないのでしょうか。

  • 「在宅介護になって決めていたことは腹が立ったらはっきり言ってため込まないことと、過度な病人扱いはしないこと。そんな私の様子を見て、たまに帰ってくる娘と息子から“お母さん、お父さんに冷たすぎる”と言われましたが、そうじゃないと介護なんてできません(笑)。介護も日常の延長なんです」

  • そんな涼子さんのガス抜きをしてくれたのはパートの仲間だったそう。

  • 「家庭の状況はパート仲間に伝えていたので、少しふさぎ込んでいると“美味しいものを食べに行こう!”と誘ってくれ、おごってくれることもしばしば。この頃は金銭的余裕がないこともありましたが、自分の余暇にお金を使う気になれなかったので、友人からの誘いは本当にありがたかったですし、気晴らしにもなりました」

復職が難しく解雇となり傷病手当金が終了。障害者年金と貯金でやりくり

  • 闘病生活が2年に近づき会社からは復職が難しいと判断され、事実上解雇となります。そして、傷病手当金も給付終了。現在は障害者年金と貯金、息子と娘からの金銭援助で賄っている状態です。

  • 「障害者年金は以前の手取り額の約半分。ほとんど医療費やリハビリ代で消えてしまいます。現在、夫は障害者雇用で面接を受けていますが、なかなか採用されないのが現状。もともと営業一筋で働いてきたので、本当は同じ仕事がしたいようですが体のことを考えると難しく、事務業務で探していますが未経験なこともあり、書類で落とされることが続いています。貯金もとうとう底が見え始めてきたので、子どもたちの金銭援助がとても助かっている反面、申し訳ない気持ちでいっぱいです。娘は20代半ばですが、最近、転職して収入があがったからと言って毎月の仕送りの額面を増やしてくれました」

  • そんな厳しい状況の中、涼子さんが救われているのは孝則さんの前向きな性格だそう。

  • 「もとからポジティブな性格だったので、病気後も愚痴や弱音はほとんど聞いたことがありません。ただ、一度だけ“死んだほうがよかったのかな”とつぶやいたことがありましたが、その数ヵ月後に息子の結婚式が控えていたこともあり、結婚式でスピーチをすることがモチベーションになったようです」

  • その後、結婚式ではスピーチを成功させたという孝則さん。現在は杖をつきながら自分で歩けるまでに回復。意欲的に仕事を探しているといいます。涼子さんに今回の出来事を経て「やっておいてよかったこと」「やっておけばよかったこと」を聞いてみました。

  • 「“やっておいてよかったこと”は民間の医療保険に入っていたことです。実は、夫婦ともに元気だったので数年前に一度、医療保険を解約していたんです。でも、夫が倒れる数ヵ月前に知人からすすめられて、夫だけ加入しており、これが本当に助かりました。“やっておけばよかったこと”は保険に加入する際、保障内容をあまり確認せずに掛け金の安いものに入ってしまったため、もっと調べればよかったと思います。今、思えば生活費の保証があるものや再発した際の保障があるものに加入しておきたかったですね。私自身も夫のことをきっかけに積立型の保険に加入しました」

  • 宮田さんのケースは誰しも起こりうること。もしかしたら明日、自分やパートナーが病に倒れるかもしれません。そのときのために、今、何ができるのかを考え、備えておきたいものです。

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